見出し画像

令和版小倉百人一首試作3/5

 令和の子でも読める現代語訳百人一首の試作、3回目。


41 恋してるうわさがすでに立っているひそかにあなたを思っていたのに

恋すてふちょう我が名はまだき立ちにけり人知れずこそ思めしか   壬生忠見

「まだき」は、「早くも」。秘密の恋はすぐばれる。
 

42 約束をたがいに交わしたはずなのに誓いの言葉は山に消えたか

ちぎりきなかたみにそでをしぼりつつすえの松山波越さじとは   清原元輔

すえの松山を波が越えないように、二人の約束も破られないはずだったのに……。
 

43 あいみてののちの心に比べれば昔の思いはおさなき思い

逢ひあい見てののちの心に比ぶれば昔は物を思ざりけり   権中納言敦忠

「逢う」は男女が会ってえっちすること。んっ、男女とは限らないかな。
 

44 恋をしてあなたに出会えていなければこんな苦しい思いもなかった

逢ふあうことの絶えてしなくなかなかに人をも身をもうらみざらまし   中納言朝忠

会わなければ恨むこともなく、会わなければ恋もなし。
 

45 あわれだとなぐさめてくれる人もなく恋に破れて我が身も消える

れともいべき人は思えで身のいたづらになりぬべきかな   謙徳公

恋に苦しみ、空しく死んでしまいそうだ。
 

46 由良の門ゆらのとを渡るボートのかじ流れどこへ流れる私の恋も

由良の門ゆらのとを渡る舟人ふなびとかぢをえゆくも知らぬ恋の道かな   曾禰好忠

「~かぢを絶え」までが「ゆくへも知らぬ」を出す序詞じょことば
 

47 幾重いくえにも草のしげった我がいえにただ秋風が吹いてくるだけ

八重葎やえむぐら茂れる宿のさびしきに人こそ見えね秋は来にけり   恵慶法師

八重葎やえむぐら」は、茂っている雑草。
 

48 風強く岩にさざ波当たるよう私の心もくだけて割れる

風をいたみ岩打つ波のおのれのみくだけて物を思ころかな   源重之

「~岩打つ波の」までが序詞じょことば。片思いの恋に心が「くだけ」る。
 

49 衛兵えいへいが夜に燃やす火赤々あかあかと私の思いも夜には燃える

みかき守衛士えじのたく火の夜は燃え昼は消えつつ物をこそ思   大中臣能宣朝臣

「~たく火の」までが序詞じょことば。夜に恋の炎が燃え上がる。
 

50 君のため命もいらぬと誓ったが今はあなたを永久とわに守らん

君がためしからざりし命さ長くもがなと思けるかな   藤原義孝

会えないときは会えるだけでいいと思っていたのに、会えた今の幸せを続けたい。
 

51 こんなにもあなた思って燃える恋けれどあなたはわかってくれない

かくとだにえやはいぶきのさしも草さしも知らじな燃ゆる思ひを   藤原実方朝臣

「~さしも草」までは「さしも=これほどまでも」を出すための序詞じょことば
 

52 が明けてまたよるが来ると思うけど朝の別れはつらいものかな

明けぬれば暮るるものとは知りながらなほうらめしき朝ぼらけかな   藤原道信朝臣

明け方に女の家を出る妻問婚つまどいこん。いや、まだ結婚前の恋人同士か。
 

53 なげきつつ一人寝るの寂しさがあなたにわかるの長い長い

なげきつつひとのあくるはいかに久しきものとかは知る   右大将道綱母

妻問婚つまどいこんでは女は自宅で男を待つことになる。
 

54 「忘れない」あなたの言葉思いつつ今の幸せとどめておきたい

忘れじの行くすえまではかたければ今日を限りの命ともがな   儀同三司母

幸せな今、全ての時間が止まってほしい。
 

55 滝の音はえて久しくなったけどその名声は今に伝わる

滝の音は絶えて久しくなりぬれど名こそ流れてな聞こえけれ   大納言公任

昔、滝が流れていたという場所では、昔の音が聞こえるようだ。
 

56 死んでいく生きてたこの世の思い出に今一度ひとたびのあなたの胸を

あらざらむこの世のほかの思ひ出に今一度ひとたび逢ふあうこともがな   和泉式部

病床で、今一度あなたに会いたいという思い。
 

57 めぐり会いやっと会えたと思っても雲に隠れる夜半よわの月かな

めぐり逢ひあいて見しやそれともわかぬに雲隠れにし夜半よわの月かな   紫式部

月が雲に隠れるように、あなたもどこかへ行っちゃった。
 

58 有馬山猪名いな笹原ささはらささささとそうよあなたを忘れはしない

有馬山猪名いな笹原ささはら風吹けばいでそよ人を忘れやはする   大弐三位

「そよ=そうよ」の序詞じょことばとして「そよそよ」と風になびく笹原を描く。
 

59 やすらかに寝ているはずが夜もけて月沈むまであなたを思う

やすらはで寝なましものをさ夜さよけてかたぶくまでの月を見しかな   赤染衛門

「今夜行くよ」という男の言葉を信じて待つ女。
 

60 大江山越え行く道は遠いのでまだ手紙見ず天の橋立あまのはしだて

大江山いく野の道の遠ければまだふみも見ず天の橋立あまのはしだて   小式部内侍

「生野」へ「行く」道が遠いので、まだ手紙も届いていませんよ。
 

 うーん。なかなか原文を生かすことができない。でも百人一首も半分を越えた。リズムを持った現代語百人一首の試作、残り40首。
 よし、今回はここまで。
 


高等学校が運営しているnoteがある。前回の記事にそんな高校からスキをいただいた。先生が見てくれたのか生徒が見たのか。コメントが入れられなかったのでここに書くけど、各先生方の「おすすめのnote」をマガジンにしたらいいのに。公式のおすすめもあるけど、子どもたちのよく知っている先生のおすすめとなれば、興味も増すだろう。そんな国語の先生のおすすめにこの記事が入ればめちゃくちゃうれしいなあ。夢だけど。


この記事が参加している募集

#私の作品紹介

96,828件

#国語がすき

3,823件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?