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言葉の蛇口〜たとえ話〜力や能力は誰のために?

 昔、ある国に2人の息子をもつ王がいた。
 兄と弟のどちらに王位を継がせるのか、王は悩んでいた。
 王は、それぞれの息子に尋ねた。
「農地を広げるために、水路を造ろうと思う。
   何より、人員の確保が必要だ。恐らく、工期は1年を超えるだろう。
 家臣の中で賛同する者は少ない。工事は苛烈を極めるからだ。
   ただでさえ、凶作続きで誰もが苦しい思いをしている。
 働き手を工事のために奪われるのは嫌がるだろう。
 水路さえできれば、生活は一変するはずなのに、
 その工事が国民の生活を苦しめることになってしまう。
 わしには、この工事をどう進めれば良いのかが分からんのだ。
 お前たちの考えを聞かせてもらいたい。」
 王は、まず、兄を執務室に招いた。
「父上、あなたはこの国の王なのです。あなたの命令にはすべての者が従います。
 わたしが皆を従わせてみせましょう。今すぐにおふれを出してください。
 そして、命令に従わない者を投獄する権威を与えてください。」
 次に、王は弟を執務室に招き入れた。
 「父上、あなたはこの国の王なのです。あなたには国民の生活を守る力がありま
 す。あなたは国民が何を必要としているのかをご存知です。
 そうです。彼らは凶作によって困窮しています。
 税金を収めることすらできません。
 今度の工事は、強制労働ではなく、仕事として彼らに報酬を与えてください。
 それも通常よりも多くの報酬を約束してやってください。」
 王は、弟に尋ねた。
 「そんなことをすれば、この国は破綻してしまうではないか。」
 弟は言った。
 「水路が完成すれば、国民の生活も国の経済も潤うはずです。
  多少の無理をして報酬を支払ったとしても、数年以内に回収できるはずではあ
  りませんか。
  法外な報酬を約束してやってください。その上で、水路にかける王の夢を聞か
  せてやってください。そうすれば、国民はこの工事に期待と関心を抱きます。
  法外な報酬は、この工事にかける王の覚悟と計画の確かさを理解させることで
  しょう。王が国民の生活に心を留めていてくださることが伝われば、国民は喜
  んで働くに違いありません。どれほど過酷な労働であっても、それが自分の子
  供たちの幸福に繋がるのですから。」
  王は、弟の言葉に感服し、彼に王位を継がせることを決めた。

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