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デジタル×リアルが生み出す新感覚がウケた理由

1.はじめに

みなさんは、『ぷにるんず』をご存じだろうか。
『ぷにるんず』とは、昨今、『たまごっち』に続く勢いで女の子からの人気を獲得している、液晶型お世話トイだ。本体の穴に自分の指を入れることで、キャラクターを触っているかのような体験が出来る。
そんな『ぷにるんず』が、なぜこれほどまで人気となったのか、分析する。

2.『ぷにるんず』とは

2021年にタカラトミーから発売された商品で、本体の穴に自分の指を入れると、液晶画面の中のキャラクターと直接触れ合っているかのように遊べる「デジタル」と「リアル」の融合を実現させた新感覚お世話トイ。
「ごはん」「お風呂」「おでかけ」といったお世話機能や6種類のミニゲームで遊ぶことができ、お世話をすることでキャラクターが大人になることから、キャラクターに対する愛着が沸く。成長するとその時の“おとなぷに”は去り、新しい“ぷに”がまたスタート当初の状態でやってくることから、飽きずに何度でも楽しむことが出来る。また、レアキャラを設けることでゲームのガチャ感覚も味わえる。
加えて、早朝や深夜は“ぷに”が寝るため、遊べる時間が限られることから、遊び過ぎを防ぐ、親子で安心して遊ぶことの出来るおもちゃである。
タカラトミーの設定するメインターゲットは6歳~9歳だが、子供1人でも操作出来る内容であるため、メインターゲットより小さな子供でも、逆に10歳以上の子供でも楽しむことが出来る。

3.4P分析


4P分析とは、1960年にマーケティング学者のエドモンド・ジェローム・マッカーシーが提唱した、マーケティング施策を考える際に使用するフレームワークの1つ。
・Product(自社の製品・サービス):どのような価値を市場に提供するのか
・Price(価格):いくらで提供するのか
・Place(販売場所・提供方法):どのような形で提供するのか
・Promotion(販促活動):どのような販促を行うのか
これら4つの視点から自社製品・サービスを分析し、販売戦略に繋げる役割を持つ。

今回、この4P分析を用いて『ぷにるんず』を分析するにあたり、年間売上数がほぼ同数と推測される、パイロット社販売の『メルちゃん』を比較対象として取り上げる。

(※『メルちゃん』:1.5歳からの女の子を対象としたメルヘン顔の人形。着せ替え遊びやお店屋さんごっこ等が出来、バストイにもなる。身だしなみを整えてあげるブラシ等、お世話用品が豊富に展開されているだけでなく、妹の『ネネちゃん』やお友達の『れなちゃん』『ゆかちゃん』、動物といったキャラクターも同時展開されており、お世話や知育を楽しめる。発売29年目を迎えた2021年には、累計販売数850万体に達し売上、現在も売上は好調で、業績を伸ばしている。)

[PRODUCT]

『ぷにるんず』と『メルちゃん』の明確な違いの一つとして、「リアル」での遊びに、「デジタル」が融合されているかどうかという点が挙げられるのでないだろうか。

実際の人形を使って遊ぶの『メルちゃん』に対し、『ぷにるんず』はデジタルの世界で遊ぶことが出来だけでなく、液晶画面があるからこそ、実際の人形では表現しきれない「可愛さ」やキャラクターの「細かい動き」を表現することを可能とした。

加えて、持ち運びしやすい大きさであること、そして、キャラクターの成長や入れ替わりがあるために、年齢を重ねても、長く飽きずに楽しめることも『ぷにるんず』の他にない特徴と言えるだろう。

[PRICE]

本体価格のみで比較した場合、デジタル機能が搭載されている『ぷにるんず』は安価とは言えない。しかし、デジタル機能があるからこそ、着せ替えパーツや遊ぶためのセットを購入しなくても、キャラクターに変化が見えるため、本体購入のみで充分に楽しむことが出来る。結果、+αの付属品購入を抑えることが可能であるため、追加出費が比較的少ない『ぷにるんず』は、消費購買層である子供の親の目にも留まったのではないだろうか。

[PROMOTION]

『ぷにるんず』は、TVアニメの放送や、そのYouTube配信に加え、子供に高い人気を誇る2組をCMに起用することで、商品認知の機会を格段に増やしていると言える。

一方で、他のおもちゃのプロモーションとしてよく見られる、リアルイベントやコラボ企画の実施がない。商品の発売がコロナ禍であったことも理由として考えられるが、商品認知の拡大やファンマーケティングの意味でも、リアルイベントやコラボ企画を展開していくことも今後求められていくのではないだろうか。

[PLACE]

『ぷにるんず』、『メルちゃん』を含む、子供向けのおもちゃは一般的に、大型家電量販店での販売が主であると言えるだろう。その中でも、『ぷにるんず』は、百貨店やスーパー、ドン・キホーテ、西松屋などの子供服店と、多種多様な店舗に商品を卸していることが他にない特徴である。

一方で、『メルちゃん』は、海外にも商品を卸していることから、今後『ぷにるんず』は現在の商品の在庫切れ続出による高額転売の横行を止めるとともに、販路拡大や海外展開を視野に行くことが、更なる売上向上に繋がると考える。

上記で述べたように、『ぷにるんず』は『メルちゃん』にない特徴を持っているため、競争の激しいおもちゃ業界において、現在の売上を獲得出来たと考える。特に、[PRODUCT]の部分で述べた、リアルとデジタルを融合した商品であるということが最大の違いである。

では、なぜこのような売れるものを作れたのか。次の章では、プロダクト三層モデルを用いて、更に深堀りして考える。

4.プロダクト3層モデル

プロダクト3層モデルとは、「中核」「実体」「付随機能」の三層に分けて製品を分析するマーケティングフレームワークである。

①「中核」:製品の価値の本質・コンセプトにあたる要素

   (消費者の求めるベネフィット、価値、サービスなど)

②「実体」 :製品を特徴づけ、顧客に価値を提供する要素

      (製品のパッケージ、デザイン、品質、性能など)

③「付随機能」:顧客にとって価値を高める要素

      (配達、設置、保証、アフターサービスなど)

以上の3つの層に分けて、整理する。

今回は、先程の4P分析をもとに、プロダクト3層モデルを用いて、『ぷにるんず』についてより詳細に分析していく。

①「中核」

・お世話トイ

・新触感を楽しむ

②「実体」

・リアルとデジタルが融合してお世話ができる

・3色のパステルカラーで子供に親しみやすい

・指を穴に入れるとぷにぷにキャラクターを直接触っているかのように遊べる

・操作しやすいボタンと穴

・ぷにぷにキャラクターのお世話やミニゲームを楽しめる

・持ち歩ける小さいモデル

③「付随機能」

・初期不良、購入後6か月以内の破損や不具合は有償の修理(アフターサービス)

・自宅まで配達

現代は、価格やデザイン、付加価値での差別化が難しくなってきている。

これは、「売れる商品が売れる」という、売る手段や商品を良いように見せる技術が大切であった時代から、「良い商品が売れる」という時代に変化しているとも言えるだろう。

そのため、先程述べた「実体」や「付随機能」を中心に、差別化していくことが重要となる。

そんな現代において、『ぷにるんず』は、特に「実体」に注力し、現代の背景を把握した商品を作っていると言える。なぜなら、本体の穴に入れ、画面に映る指の動きと連動させるという、リアルとデジタルを融合した新たな技術を実現しているからだ。この、他のおもちゃにない強みの存在は、『ぷにるんず』の爆発的な売上の大きな要因の一つであると推測出来る。

一方で、「付随機能」においては、アフターサービスに関して、若干の手薄さを感じざるを得ない。このことから、『ぷにるんず』の更なる売上向上と顧客満足度の向上をはかるためには、現状の弱点であると言える、この「付随機能」の面において、アフターサービスを手厚くすることや保証期間の見直しをはじめとした、カスタマーサービスの拡充とレベル向上が求められると考える。

プロダクト三層モデルによって、強みや弱みを発見することができ子供に大人気で売上が伸びている理由を分析することができた。

このように『ぷにるんず』は、リアルとデジタルが融合したおもちゃで、他のおもちゃにはない新機能が搭載されている。加えて、子供に比較的人気なカラー3色で展開されており、持ち運びが出来ることや、ボタン数を少なくし、操作を単純化することで小学生未満の子供でも遊びやすいことが、特徴だ。

5.おわりに

今回『ぷにるんず』について調べてみたが、ご飯をあげて育てたりゲームの中で遊んだりと、実際の人形では体験できないような遊びが出来ることに加え、類似商品である『たまごっち』等には無かった「遊ぶ人自身の指をおもちゃの中に入れて遊ぶ」という新感覚を取り入れたことが、ヒットへと繋がった大きな要因と分かった。またTVアニメを制作し、YouTubeに投稿することで、様々な人に『ぷにるんず』の認知を高めることを目指しドン・キホーテやトイザらス等の身近な場所で販売しているということから、多くの新規消費者を獲得することができたと考えた。

つまり『ぷにるんず』は子供層のおもちゃにはなかった「リアルなお世話ゲーム」ができる要素を加えたことによって人気を獲得し、品切れが続出するようなヒット商品となった。

<参考文献>

・ぷにるんず タカラトミー 閲覧日 2022年12月9日ぷにるんず|タカラトミー (takaratomy.co.jp)

・進化する「液晶お世話トイ」 閲覧日 2022年12月9日https://www.oricon.co.jp/special/56983/

・タカラトミー 広報部 閲覧日 2022年12月9日https://www.takaratomy.co.jp/product_release/pdf/p210528.pdf

・新触感 液晶お世話トイ「ぷにるんず」7月上旬発売 閲覧日 2022年12月9日新“触感”液晶お世話トイ『ぷにるんず』7月上旬発売 | タカラトミーのプレスリリース | 共同通信PRワイヤー (kyodonewsprwire.jp)

・4Pとは? 閲覧日 2022年12月9日4Pとは? マーケティングミックスの意味と考え方を簡単に解説! (ds-b.jp)

・製品戦略(プロダクト戦略)とは?具体的なフレームワークも紹介 閲覧日 2022年12月16日https://library.musubu.in/articles/10332

・プロダクト三層モデル 閲覧日 2022年12月23日https://cyber-synapse.com/dictionary/ja-ha/three-levels-of-product-models.html

・メルちゃんFACTBOOK 閲覧日 2022年12月23日表紙 (mellchan.com)

・メルちゃんとぽぽちゃんはどっちが人気? 閲覧日 2022年12月23日https://tomomama.jp/6052

・a世代の親に刺さるひと工夫 閲覧日 2022年12月23日https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00722/00003/

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