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私が好きな伊豆大島の幸と料理➀魚編(釣り方ちょこっと)

伊豆諸島の伊豆大島で生まれ育った私。クサヤ・アシタバ・トコブシ・サザエ・アワビ・イセエビ・キンメ・メジナ・タカベ・カメノテ・メッカリ・ベッコウ寿司・・・思い出すだけでよだれが出ます。私の「独断」と「偏見」で大島の幸と実家(釣宿)で学んだ料理方法などを紹介します(釣り方も少々)。今回は魚編です。

「クサヤ」間違いなく王者

ムロアジのクサヤ

王者「クサヤ」です。誰がなんと言おうと。
島民のソウルフードですね(個人の意見)。
匂いがきつく苦手、と言う方が多数いるのは存じていますが、私は大島に戻ったらまず食べます。東京にいても薬が切れるかのように無性に食べたくなるものです。

匂いの原因は魚をつけるクサヤ汁にありますが、このクサヤ汁、昔々、もともと塩水に魚をつけていたものの、塩が貴重だったことから何度も同じものを使っているうちに発酵。さらに何度も使い続けて今に至る、と言う説があります。なぜ「クサヤ」かには「臭(クサ)」+「魚(ヨ)」という話もありますが、諸説あります(チコちゃんみたいですみません。便利な言葉です)

⇓詳しく知りたい人も、そんなに知りたくない人も以下を参考下さい

昔、都内の友人に、住宅街の公園で遊んでいてカレーの匂いがしてきて夕飯だと気づいて自宅に戻るって話を聞いたことがありますが、私の子どもの頃は、そこら辺(島ではそこら中遊び場なので公園という概念は薄い)で遊んでいたら、どこからかクサヤのにおいが、ぷーんとしてきて「夕飯時だ、お家に帰ろう」となったものです。

匂いはどれぐらいなのか、と聞かれるならば・・・島を離れ一人暮らしの学生のころ、アパートで香ばしく焼いていたら…近所の人に警察を呼ばれてちょっとした異臭騒ぎになったことがあります。それぐらいの匂いです。その時の警察官がズカズカ家に入ってきて「何してるんだ君は!」と言われ、「クサヤ焼いていたんです」と答えたら、無線で「異臭はクサヤを焼いていた模様 えー繰り返す、クサヤを焼いていた模様」と言っていたのはいい思い出です。

トビウオのクサヤ

実はこのクサヤ、様々な種類があります。写真は「トビウオ」のクサヤ。最初の画像の「ムロアジ」のクサヤより匂いはマイルドで、淡泊な感じです。初心者にはこちらの方がいいかも・・・と思いますが、好みは人それぞれですね。

さらにクサヤには「サメ」のクサヤというリーサルウェポンのようなものもあります。これはさすがに私でもくさい。サメって尿素を体内にため込むとされていて、死んでしばらくするとアンモニア臭がきつくなります。そこにクサヤ汁の追い打ちをかけるわけですから、そりゃくさい。焼いて食べると意識がもうろうとしたボクサーでも「はっ」と目が覚めるようなアンモニア臭で、口に入れるとじゅわっとするような感覚です。ただ酒が進み、二重三重に癖になる味わいです。

なかなか一般には出回りませんが、もし口に入れる機会があれば、一生に一度の経験と思ってぜひ食べてみて下さい。勇気を出して。

「メジナ」釣りよし味よし


メジナ(クチブト)

どや顔ですみませんが、私とメジナです(1キロちょっと)。メジナはグレとも呼ばれますね。釣りでもエネルギッシュに良く引く魚で、大島ではポピュラーな磯釣りの対象魚にもなっています。うちの宿にもメジナを目的に釣りに来る客が多くいました。オキアミをえさにフカセ釣り(タナを深くした浮き釣り)が基本的。

種類も、クチブト、尾長(クロ)、オキナメジナと3つあり、釣りでよく引くのは➀尾長②クチブト③オキナメジナで、味は➀尾長②クチブト③オキナメジナですね(個人の意見)。味は季節的に秋冬春がうまいですね。

メジナの刺身

料理ですが、まずは刺身ですね。真っ黒い体からは想像できないほどの美しいほんのりピンク色の身をしています。

ただ、魚の刺身全般に言えますが、釣りたてはあまりうまくないです。プリプリ弾力があるだけでうまみがいまいちです。死んでしばらくしないと、うまみ成分が出てこないと言われています。よく、テレビで釣りたての魚を食べて「新鮮で弾力があってすごくおいしーい」とか言っていますが、釣り宿の息子としては「素人だな・・・」といつも思っています。まあ、リポーターも仕事だから仕方ないですね。活き造りもそうですが、雰囲気でうまく感じるのも確かですね・・・。

しっかりシメて血抜きして(達人はぜひ神経ジメを)氷水で冷やして持ち帰り、1日2日冷蔵して食べると身もしっとりなめらか、うまみたっぷりです。

ほかにも煮物(水、醤油、酒、みりん、砂糖)、唐揚げ、ぶつ切りにして「鍋物」にしてもおいしいです(グレ鍋)。実家では小型のメジナを開きにして塩水に数時間つけて「塩干し」にしても結構食べます。

「ブダイ」磯の愛嬌者 冬は別格

ブダイ

赤や緑のカラフルな体・・・おいしくなさそう、と思う方もいるかもしれません。でもおいしいです。私は大好きです。夏場は確かにくさくてうまくないかもしれませんが、冬場はこれを専門に狙う人がいるほど、おいしい魚です。

写真は私が釣った1キロほどのブダイですが、冬場で波が穏やかならば帰省した時には必ず釣りにいきます。私は浮き釣りが基本ですが、ウキなしで海底近くに沈めるぶっ込み釣りも。ただ、えさが大変なので誰でもという感じではありません。磯にあるイソモク、ハバノリ、ヒジキ(漁期があるので注意)などを手に入れる必要があるからです。イソガニでも釣れますが、海藻のほうがよく釣れます。引きですが、もっさりです。少し天然ボケ?な魚なので、最初かかっても引かないことがあります。ウキが沈んであわせて何か重い感じがするなーという感じでリールを巻いてると、突然思い出したかのようにぐーっと引き、またもっさり。あとは水面近くで釣り上げられそうになるといよいよヤバイと身の危険を感じたのかもう一度頑張って引く、という感じです。

個人的にはそんなマイペースな感じのブダイが大好きです。顔つきもメトロン星人のよう。冬場はつれるときは1日10匹以上釣れます。大島では1m近い木製の「島ウキ」を使う伝統の釣り方がありますが、遠投するのと操作が難しいので最近はそれをやる人も少なくなりました。

大漁のブダイ 1匹は後述の小型ササヨ

料理としては、冬は薄切りにして「刺身」もおいしいですし、後述する「ベッコウ寿司」にしても、ぶつ切りにして「鍋」にしてもおいしいです。そして何よりもうまいのが、開きにして塩水につけ、冬の西風の中で1日ひかげ干しにして食べる「塩開き」です。

ブダイの塩開き

表面は塩味がきいてもっちり、身はほくほくでめちゃくちゃうまい。大島のお年寄りはこれが大好きで、昔は魚屋の前に開きが大量に干されているのが見られましたが、最近はあまり見ないですね。ので、私は個人で釣って開いて楽しんでいます。あまり見かけないのは、ブダイを食べる高齢者や、そもそもブダイを専門に釣る人が減ってきたこともあるかもしれません。もったいないです。おいしいのに。

「ムラソイ」少年の日の思い出

ムラソイ

沿岸部の外洋に面した岩場の浅瀬にいます。子どもの頃はカサゴと呼んでいましたが、クロっぽいこの魚の本名は「ムラソイ」です。本当のカサゴはもっと水深のあるところにいる赤っぽい魚です。

拾ってきた竹の棒に糸と釣り針をつけて、フナムシをえさに岩と岩の間の隙間を狙う・・・私が幼いころ、いちばん最初に父に教えられた釣りの魚です。浅い岩場にの隙間にいるので、子どもに釣りを覚えさせるのにはぴったり。自分で釣って自分で食べる・・・まさに生きる基本で思い出にもなります。

つれるとグググー、グググーと結構引きますし、小型のものから大型のヌシのようなサイズ(30センチオーバー)まで様々です。いまは小型の竿にオキアミで釣ります。よく釣れるのは春ですかね・・・。穏やかな日に(海岸に近いので波に注意)沿岸に岩が転がるゴロタ場を歩きながら隙間を狙えば結構数が釣れます。ただし、根掛かりが多いので代えのハリを沢山用意する必要があります。

ムラソイの煮物

料理ですが、水、酒、醤油、みりん、砂糖を入れて煮立たせて、そこにはらわたを取って切り込みを入れたムラソイを入れて弱火で20分ぐらい煮込む「煮付け」がうまいです。このほか、唐揚げにしてポン酢をかけてもよく食べます。

「キンメダイ」深海のルビー

キンメダイ

見た目も美しい、食べても上品でおいしい、高級魚ですね。船で釣ることが出来ますが、磯釣りが好きな私はめったに釣らず、よく知人からいただきます。

キンメダイの煮付け

これも料理は基本「煮付け」が多いです。新鮮なものは刺身でも絶品。皮付きのまま薄切りにして、しゃぶしゃぶにしてもおいしいです。皮の間に旨味の脂がのっているので、しゃぶしゃぶにしたあとの出汁で雑炊などをつくってもおいしいです。

「タカベ」”バターフィッシュ”の旨味

タカベの塩焼き(少し食べてから撮影)

食べかけているときに、写真撮らなきゃ、と思って撮影したので一部身がかけていてすみません・・・。夏場は大島の海岸付近を数百の群れで回遊しています。

市場に出るものは主に網でとられますが、夏場、潮の本流が近い磯ではサビキで釣れます。おとなしそうな姿に似合わず結構引きます。ぎゅんぎゅんと右へ左へと。釣るのは面白いです。ただ、釣れる磯は限られています・・・。

英語名イエローストライプ バターフィッシュと言われるように、夏場でもバターのような甘みのある脂がのっていて、塩焼きがうまいです。漁では沢山とれるので、それをいただいた時には塩水につけて丸干しにしても食べます。煮付けでもいけます。体中の脂がうまいので、うちの父は昔よく頭をかじってチューチュー吸っていたのを覚えています。

ただし、骨がとても丈夫で小骨でも非常に固いので、誤って飲み込まないよう要注意です。

「イサキ・カンパチ」夏場の高級魚

黒っぽいのがイサキ・光っているのがカンパチ(ショッパチ)30cm前後

イサキは皆さんご存じスーパーでもよく見るイサキ。カンパチは小ぶりのいわゆる「ショッパチ」です。いずれも夏場の磯で釣ったものです。

イサキは磯で釣る場合は夕方以降、かご釣りやフカセで釣ります。かご釣りというのはコマセアミという小さなアミエビを小さなアミかごに入れてぶん投げてマキエにして釣ります。ハリにつけるえさはオキアミです。コマセアミは新鮮なもの(半分凍っているくらい)がよくて、なんと夜光ります。イサキがこれに寄せられるという仕組みです。釣りをする磯のポイントによってはフカセでもウキ周辺にコマセアミを蒔けばイサキを寄せられます。日中でも潮の本流釣りで釣ることも可能です(メジナの本流釣りでかかってくることも多い)。

ショッパチは日中、ジグなどのルアーで磯や防波堤で釣れます。これも磯のポイントによりけりで、潮の本流近くになれば型は大きくなっていきます。水面近くまでルアーを追いかけてくるのをみると興奮しますね。写真でこの2種類の魚が同居しているのは、勘の鋭い方はわかると思いますが、夕方までカンパチ狙ってその後イサキを狙った、ということになります。

料理ですが、イサキは刺身、塩焼きですね・・・・。軽く小麦粉を振ってバターと塩(or醤油)でムニエルにしてもおいしいです。

さてショッパチ、小ぶりでおいしくないんじゃないかと思う方もいるかもしれませんが、私は大きくて脂のりのりの奴よりもむしろこっちの方の刺身が好きです。夏場は特に。さっぱりしていて、唐辛子(小ぶりの島唐辛子、タカノツメなど)をいれた醤油で食べるといくらでもいけちゃいます。大島の磯からは小さめのブリ(ワカシ)やシマアジ(秋には大型のオオカミも)も釣れますが、同様に食べるなら小さめの方がさっぱりして好きです(個人の意見)。ほとんど流通しない、小さめのカンパチ、ブリ、シマアジが堪能できるのはある意味、贅沢、夏の高級魚とも感じます。

「ササヨ」玄人好み引きはイシダイ級

ササヨ(ノトイスズミ)3キロほど

イスズミといえばくさい魚の代名詞。こんな魚食べるの・・・・と思う方もいるかもしれませんが、冬場はちゃんと調理すればうまいです。内臓もコリコリして珍味です。じつはイスズミにも多種類あって、イスズミ(キンシチ)、ノトイスズミ(ササヨ)と違うのです。イスズミ(キンシチ)の方は冬でも磯臭さが強くてまずいです。内臓もドロドロです。一方、ノトイスズミ(ササヨ)の方はしっかり血抜きをすると身も内臓もいけます。

実はこの魚の種類の違い、30年ほど前までははっきりわかっていなかったのですが、亡き父(島の釣り名人と言われてました)が謎を解明しようと魚体の違いを詳しく調べたら、エラの内側の鰓耙(さいは)と言われるヒダの数が違うことがわかり、島で食べているササヨは、単なるイスズミではなくノトイスズミであることがわかったのでした。

さて釣りですが、冬場は磯の波打ち際に生える海藻、ハバノリをえさにします。大島では古くからこのハバノリを海底に投げ込んで待つ、ぶっ込み釣りが主流でしたが、根掛かりも多く釣れる数も少なかった。そこで父はフカセで浮き釣りする方法を編み出し、やってみたらバンバン釣れるようになった・・・という経緯があります。冬場は島のお年寄りに人気の魚で、昔は父と私で釣って魚屋さんにキロ1000円とか1500円とかで売っていたものです。私もいい小遣い稼ぎになりました。今は食べるお年寄りが減って売れなくなりましたが・・・。

この魚の引きときたら、物凄いです。子どもの頃は海に持って行かれそうになりました。パワーは石鯛並み、小回りは石鯛以上とも言われたほどで頑丈な竿でまさに勝負、という感じです。目もいいのでワイヤーなどは使えません(見破られる)からカーボンのハリスを使います。でも、根(海底の岩の裏)に入られるとカーボンハリスがブチンと切れてしまいます。小さい頃は何度も切れてその衝撃でわたしも後ろに吹っ飛びました(ので、父にヘルメットと腰に命綱を着用させられていました)。ですから、根に入られないようロッドワーク(右へ左へ上へ下へと動かす)、フットワーク(根を交わすように動く)を巧みにしながら、なおかつハリスが切れないように無理はしすぎず(引いてるときは糸を出すことも)と、力も知恵も技術も必要な釣りです。いまでも数キロサイズが釣れると1匹あげたときには疲労困憊で数十分動けなくなります。写真のササヨ3キロクラスでもしばらく貧血になりました(ここは私の運動不足です)。

料理ですが、身は皮を剥いで刺身で、なおかつ表面を湯通しです。これも島唐辛の醤油で食べるのが基本。特にうまいのが「イシズリ」と言われている部分。お腹のあたりの肉です(マグロで言うトロのあたり)。そして最大の珍味ははらわた(腸)です。なかには糞がはいっているので、よくシゴいて水で綺麗にします。それを生で刺身で食べてもいいですが、グロテスクなので苦手な方は醤油と油で炒めるとコリコリジューシーでご飯が進みます(酒も)。

イメージと噂に翻弄されて「食わず嫌い」にならずに、機会があったら食べてみて下さい。うまさにびっくりします。クサヤよりよっぽど抵抗感は無いと思います。何事もイメージと噂だけを信じて避けたり批判するのではなく、自分で本質を試すことですよね。

「ベッコウ寿司」白身は唐辛子のタレで

ベッコウ寿司

さて、うまそうなベッコウ寿司。ベッコウのような色だからそう言われます。ネタは地魚の白身が使われます。今回紹介したものだと、メジナ、ブダイ、ササヨが該当しますね。大島ではメダイなんかもよく使われます。

ベッコウ寿司はお店や家庭によって味が若干違ってきますが、実家では醤油、みりん、島唐辛子を混ぜたつけだれに、一口大に切った白身魚を数時間~半日ほど漬け込みます(身が固く、ネタが厚いほど時間かかる)。そうすると味がしみこみてりが出てきます。それを酢飯の上にのせてめしあがれです。東京にいても「たべたいな~」と思って、白身魚でやることがありますが、やっぱり島の地魚にはかなわないです。

ぜひ島に行って味わってみて

以上、私の好きな大島の幸、魚編として長々紹介しましたが、大島ではお店それぞれ、家庭それぞれで食べ方も味付けも若干異なります。もちろん伊豆諸島でもそれぞれ違います。イチオシも地域によって変わるでしょう。ですからこれはあくまで私の独断と偏見です。

ぜひとも、伊豆大島はもちろん、伊豆諸島の島々に行って、お店や宿で島ごとの魚と料理を味わってみて下さい。風景とともに堪能すれば、島を内から外から全身で感じられることでしょう。

あっ、ただ、サメのクサヤは簡単に見つからないかもしれませんね・・・

次回は「貝」「イセエビ」「野菜」を紹介

次回、また時間が出来たら、魚以外の幸と料理を紹介できればと思っています。トコブシ、サザエ、アワビ、メッカり、カメノテ、イセエビ、アシタバ、キヌサヤなどなど。

長々とみていただきありがとうございました。

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