1887年製ローズウッドのニューヨークスタインウェイによるピアニスト渡邊智道さんのリサイタル
「まだ夢の中にいるよう」
わたしの愛すべきピアニスト渡邊智道さんのリサイタルに行ってきました。
が、夢と現実のはざまから降りられません。
智道さんの奏でる音により幻想の世界に入り込むのだけれど、曲が終わってからの智道さん独特の間合い、ふっと現実に戻してくれる、あの瞬間がとてつもなく好きなのです。
他の方の演奏会で、曲が終わって現実に戻る前に拍手をする熱狂的なファンの方がいますが、それがわたしは好きではないですね。
例え、アンコールの演奏であっても。
余韻に浸りたい派です。
さて、このホール。
響きの良い大変素晴らしいホールでしたが、響きやすい反面、物音を立てないように細心の注意を払わなくてはいけないホールでした。
プログラムの紙を床に落とすだけでも響きます。
今回は、幻想に入り込めないような出来事が幾度とあったのが残念でした。
曲が終わってホールに入ってきて曲が始まったのに移動をやめない方、曲の終わりの方で物を落とされる方、曲と曲の間に鳴ったスマホの着信音(演奏中じゃなくて良かったけど)等。
やめて~~~!
でも、そんな出来事も吹き飛ばしてしまうような、濃い~~~~~演奏会でした。
この鏡面仕上げしていないピアノ素敵ですね。
椅子もかわいい。
プログラムはこんな感じ。
なんでしょうね。
言葉にするのが難しいのですが。
演奏中、ピアノと天井の間の空間が気になりまして、ずっと見ていました。
天空に舞い上がった音なのか
天空から舞い降りてきた音なのか
音の天使たちがそのあたりにいる感じ。
1887年から生きているこのピアノに、もし魂があるのだとしたら、喜んでるね。
そんな、ピアノと智道さんの喜びが重なって、現実とは思えない音楽でした。
いや~、すごいな。
そして、ラフマニノフのチェロソナタ。
毛利伯郎氏のことを存じ上げませんでしたが、彼もまた、魂を持っていそうな歴史のありそうなチェロをお持ちでした。
重厚かつ甘美な音が素晴らしくて、「匠」の芸術。
それを目の当たりにできて、大変幸せを感じました。
今まで何度か、智道さんのピアノの演奏を引っ張り上げるタイプのチェロとの演奏を聴いてきました。
智道さんの魅力的なピアノを引き出してくれる存在なので素晴らしいのですが、チェロとピアノの対等性は感じてなかったかもしれません。
ところが、今回の演奏は、ピアノもチェロもどちらもうまく溶け合い、お互いがお互いを想い合い、音の相性が素晴らしく良く、今までで1番好きな演奏でした。
仲の良い夫婦の二人三脚のような、時にはエロチシズムも感じる、絡み合いが素晴らしいデュエットでした。
いいなぁ。
いつまでも聞いていたかった。
そんな夢の中をさまよいながら帰宅しました。
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