英語教科書の暗記を求めていないフィンランドの英語教育について学ぶ
「よい先生、よい教科書、よい環境」
が特徴のフィンランドの英語教育について。
特徴は3つです。
1.少人数のクラス
2.英語教員の英語力の高さ
3.教科書の充実
おとといの記事「1.少人数のクラス」では、フィンランドでは10人前後で英語の授業を受けるということでした。
昨日の記事「2.英語教員の英語力の高さ」では、教育学部ではなく、英語学、英米文学に関する専門科目で修士号を取得した先生が、英語を教えているということでした。
今日は「3.教科書の充実」を見ていきます。
3.教科書の充実
まず、日本とフィンランドの英語教育に対する考え方の違いから。
こちらの本は、日本での小学校英語教科化前に出版された物なので、情報は古いですが、考え方の違いを知るのに良い勉強になりました。
<日本>
・小学校での英語指導においては中学校での英語指導を先取りしてはいけない
・子どもたちの間に英語嫌いを生み出す結果になるから
・文字の指導は、あくまで口頭での学習の補助的なものとして扱うべき
<フィンランド>
・小学校の英語学習開始当初から発音・語彙・文法の指導が展開
・子どもたちが英語に興味を持っている間に英語の文法を教え込むという姿勢
・日本の中学校のような文法中心の教科としての英語教育を受けても英語嫌いがさほど生まれてきていない
日本は「英語嫌いな子どもを生み出さないように」とすごく怖がっている印象ですね。
「英語嫌いな子どもを多く輩出してしまった」という罪悪感でもあるのでしょうか。
でも、日本の小学生たちは、漢字の練習を嫌がらずに取り組む勤勉さがありますし、漢字嫌いな子どもはあまりいないと思います。
フィンランドと同じように小学校3年生くらいから文法を教えても英語が嫌いにはならないと思いますけどね。
高校入試で点を取るための文法でなくて、あくまでもコミュニケーションとしての文法という前提ですが。
「高校入試」ありきで教育を考えるから、全てが上手く回ってない気がします。
しかも、下の写真をご覧ください。
左側が日本の小学校、中学校、高校で使う教科書の量で、右側がフィンランドの小学校、中学校、高校で使う教科書の量。
差は歴然。
日本で中学校、高校で6年も英語を勉強したのに英語が話せるようにならなかった理由は、圧倒的な量が足りなかったからなんです!!
驚愕です。
さらにこちら。
フィンランドの生徒が習う、語彙数と文の多さよ!
日本の中学と高校の語彙と文の量を合わせても、フィンランドの中学校だけの語彙と文の量に敵わないんです。
日本の2020年度の新学習指導要領で、小学校卒業までに300~600語程度の語彙力を身につけさせるという目標があるらしいですが、フィンランドでは小学校卒業までに3600語ですよ。
もう一度言います。
3600語!!
フィンランドの子どもたちは、この語彙数をどうやって覚えているのだろうと不思議ですよね。
フィンランドでは英語教科書の暗記を求めていません。
そもそもフィンランドの教科書の膨大な英文量では、暗記は不可能。児童・生徒が学習した語彙や文法構造を使えるよう言語学習スキルの習得に力を入れている。その中に暗記も含まれるかもしれないが、暗記が目的化されているわけではない。
フィンランドの小学校教科書の特徴は学習語彙数の多さにある。その語彙数は日本の小学校と中学校で学習する語彙数を上回っている。ただし、これらの語彙を丸暗記させることはない。プラクティスを通じて、使わせることによって語彙の定着を図っている。
フィンランドでは、英語学習の初期段階から、しっかりと文法が教えられており、言語形式を重視したプラクティスの定着が企図されている。文法に関するプラクティス、語彙に関するプラクティスの数が日本の中学校よりフィンランドのほうが圧倒的に多い。
基本的な文型や表現を身につけるためのパターン・プラクティスもあれば、生徒同士がコミュニケーションを行うことを目的としたプラクティスもある。ある程度自由のきくプラクティスが多く、個々の学習者の好みや考え、個性を生かし、定着を図っている。
フィンランドの中学校では、翻訳が重視されており、翻訳のプラクティスが多い。そしてとにかく書かせるものが多く、ライティングの量は相当。ライティングを発展させつつ、本文に関連させた発表(プレゼンテーション)や調べ学習のプラクティスにも繋げていて、その数も多い。
フィンランドの中学校では、最終的に、英語で自らの意見を述べるプラクティスへと続いていく。
義務教育を終えた生徒たちの英語の差は歴然ですね。
これこそが教育だよな~と感動すら覚えました。
フィンランドでは、小学校段階から始まる学習の中でほぼ文法の学習が済んでいるから、高校では内容重視の英語授業が一般的なのだそうです。
フィンランドの高校の教科書は、分厚く、大学レベルの英語内容、そして量である。小学校から正式な文法学習が始まっているため、高校になると、より内容を重視した授業になる。非常に高いレベルのプレゼンテーション能力とスピーキング力が身についている。
うわ~!これは敵わない!
このように非常に優秀な生徒が育ち、その生徒が大学に行って、英語教員になるわけですから、環境が違いすぎますね。
フィンランド政府が人材育成にかなり力を入れていることが伝わってきます。
でも、日本政府が、もしフィンランドの英語教育を参考に語彙や文の量を増やしてしまうと、「詰め込み教育」になりそうなので、それはやめていただきたいですね。
こちらの書籍では、具体的な教科書の中身はほとんど掲載されていなかったので、英語の教科書を見にフィンランドを訪問したいなと思いました。
いや、実際、英語の授業も見てみたいなぁ。
実現するかしら。
「よい先生、よい教科書、よい環境」
日本もこれを目指して改革して欲しいと思います。
時間はかかるかもしれないけど、日本の子どもの未来のために。
ありがとうございました。
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