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We Love LANVIN

去年、アルベールエルバスが逝去した、というニュースを聞いて、驚きとともに本当に残念な想いがしました。

あれは確か2010年、
3年連続のN.Y.旅行の最後の年、エルバスランバンとH&Mがコラボした商品の発売初日にマンハッタンで、朝から行列に加わっていました。
一種のイベントとして行列を作る人々に混じって開店を待っていたら、テレビの取材クルーと共に、なんとエルバス本人が出現。並んでいるファンたちに向けて笑顔で話しかけてきたのです。

まさか旅行でこんなにラッキーなシーンに遭遇するなんて!
そして写真で見る本人そのものの、迫力ボディと陽気な人柄にテンションはMAXに。。

そんなシーンを思い出しつつ、エルバスデザインの素晴らしさを振り返りたくなって、⑤Vintageで紹介したいアイテムを探し始めました。

エルバスはディテールの発明者だと思います。
なんといっても有名なのは、パールをチュールで包む、という芸当。
どうしたらこんなに素敵なアイデアを思いつくのか・・・。
パールの柔らかで上品な美しさが、黒いチュールで包むことで、儚く、少し隠微で、妖艶に表情を変える。まるで昼顔のカトリーヌドヌーブのよう。センスという言葉しか浮かばないわけです。
他にも、起源となるオートクチュールを彷彿とさせる、チェーンや切りっぱなしの裾、グログランのリボン、あえて縫い込まないファスナーのエッジ。その全てがエルバスであるとともに、きちんとランバンなのですから、老舗メゾンの継承が成功した、偉業のひとつではないでしょうか。

ランバンディテールpsd

”きちんとランバンを継承している。”
では、元々ランバンとはどういう世界を持つブランドなのか?

その興味とともに、エルバス以前のランバンを探り始めました。
自分自身の記憶の中のランバンは、幼い頃、母が着ていたランバンブルーが美しいシルクジャージーのワンピース。胸元に、例の親子マークのシンボルが白く刺繍されていた、そのなんとも言えないブルー。水色だけど少しグレーがかった、私の中にあるランバンブルーです。
その色が素敵すぎて、このワンピースだけはサイズが合わないけど手放せません。。

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このワンビースのタグはこんな感じ。1980年代のロゴです。
いろいろ調べてみると、90年代に家族経営から大手グループに買収されたようなので、やはり80年代以前のランバンにオリジンを感じます。

80年代のハイブランドは、エルメスを代表する大柄なプリントや、プッチ、レオナールなど、好景気な時代背景も影響しているのか、とにかく装飾が華やか。その中でこのランバンのワンピースは驚くほどシンプルです。

もう少し遡って調べていくと、創業者ジャンヌランバンがデザインしたドレスの写真を見ることができました。1940年代あたりの作品で、卓越したクチュリエとして当時から彼女の刺繍の素晴らしさは際立っていたよう。もちろん時代的にも、オートクチュール全盛でハンドクラフトの技術が今より高かったのかもしれないけど、スパンコールやビーズをふんだんに使った繊細な刺繍モチーフが持つテイストは、エルバスランバンにも継承されています。それにしても、ジャンヌランバン作のどのドレスも、繊細で華やかな装飾を使いつつも、全体としては華美になりすぎず、構築的で、どこか退廃的な脱力感を感じさせるのです。

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なんとなく、このエレガントとシンプルさとわずかな退廃、このあたりがランバンデザインが持つ美しさのエッセンスなのかな?と、思ったら、やはりアールデコの時代に華開いたブランドということがわかり、この時代のこのバランス感覚が大好きな私なので、納得できました。

OLD LANVINを探すコツとしては、ライセンス物を見極めていただきたい!
私自身は、ライセンス物を全否定しません。また別の機会に特集したいですが、サンローランやセリーヌなど、日本企業のライセンスは縫製が丁寧で、馬鹿にできないラインも多いのです。ただ、ランバンについては、エルバスデザインのエッセンスを活用したライセンスライン(ランバンオンブルー)や、ランバンコレクションのタグが付いているものは、個人的にグッと来ないので⑤Vintageでは取り上げないでおこうと思います。

⑤Vintageで今回取り上げるランバンは、80年代前後のバッグやアクセサリー、エルバスデザインの洋服やバッグたち。ジャンヌランバンからエルバスまで、はるかな時代を超えてつながっている、ブランドのDNAに想いを馳せながら、少しトラッドな雰囲気でセレクト・コーディネートしました。

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そしてランバンに興味を持てたら、ぜひヴィンテージ ショップやオークション、フリーマーケットで探してみてほしいのです。特にエルバスランバンは、高いクオリティに相反して、安価で取引されているものも多いので、一期一会のお宝に出会うこともあると思います。眠っている美しきディテールを、誰かが身に纏うことで再び呼び覚まし、現代の日々の輝きにマッシュアップして欲しいと心から願ってやみません。

下記のマガジンでは、ランバンをテーマにコーディネートしたコレクションをご覧いただけます。

株式会社アンティー・デザイン
⑤Vintage Laboratory 水野可奈子https://www.instagram.com/kanachanseijin/
インスタの個人アカウントでは、私の普段のヴィンテージコーデもご紹介しています。

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