女子大生、アマゾンへ行く②
飛行機から意気揚々と下りると、アマゾンの熱気が私をぶわっと包んだ。ついに来た。来てしまった。そんな風に感動したのも束の間、私は空港ロビーで立ち往生していた。
空港から出るのが怖い。何しろ、出入り口の向こうには大量のおじさんが待機していて、空港から出る人々に声をかけまくっているのだ。なんだあれは。ゆいのが迎えに来てくれるはずとたかをくくっていたが、交通の関係で遅れると連絡が来ていた。30分もすればもう空港ロビーに残っているのは私だけになった。
私はじっと外を見る。不思議そうに私を見つめ返す外のおじさんズ。自分の体よりおっきな荷物を背負ったアジア人の女の子が、何をするでもなく空港でうろうろしているのだ。彼らの顔には見事に「お前何してんの」と書いてあった。そして私はスペイン語が一ミリも分からない。あそこに出ていく勇気は、ない。私は何をするでもなくトイレに行ってみたり、ケータイをいじってみたり。「何かしてる風」に振舞って、頼むから声をかけないでくれのオーラを醸し出そうと試みた。
そんな風に私はおじさんズ(と空港職員)と冷戦を繰り広げ、さらに15分たったころにゆいのから到着したと連絡があった。
もうこっちのものである。私は空港職員の不思議そうなまなざしに背中を押されるような気分で外に一歩踏み出した。途端におじさんたちが話しかけてくる。むろん一言も分からない。肯定なのか否定なのかよく分からない情けない声を出しつつ、私は周りを見渡した。
「カナちゃん…?」
どんなたくましい子と出会うんだろうなんて思っていた。南米を一人で旅しているなんて言うから。ジャングルで暮らしたなんていうから。私の名前を呼んだその人影は、私よりも小さかった。
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