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夢を描いて、志す。

朝、目が覚めて、白い天井が視界に映った時。
一瞬自分がどこに横たわっているのか分からない感覚に陥りました。

一秒にも満たない、ほんの一瞬。

瞬きを三度ほど繰り返して、ようやく寝ぼけた意識が明瞭になり、ここが東京で、自宅のベッドに寝ていることを認識しました。


起きてからも、心には僅かに残る不思議な余韻。
これは何だろうと考えてみると、それは "夢の余韻" であることに気が付きます。

起きる直前まで、私は誰かの肩にもたれて目を閉じていたのです。とても大きく頑丈な肩。
現実では出会ったことはなく当てはまる人物は思いつきませんが、その感触をはっきりと感じた記憶はたしかにあって。

起きた瞬間に混乱が起きる程、それはそれは鮮明な夢でした。

「夢」という言葉について。

夢ってとても不思議ですよね。
今朝久々にリアルな夢を見て、改めてそう感じました。


私は以前から少しこの「夢」という言葉について不思議に思っていたのですが、
何故「寝ている時に見るもの」と「将来実現させたい願望」という異なる二つの意味があるのでしょうか。

今日は妙に「夢」が気になる日なので、少し調べてみることにしました。
少し長めの文章ですが、よろしければお付き合いください。

ゆめ 【夢】 《「いめ」の音変化》
①睡眠中に、あたかも現実の経験であるかのように感じる一連の観念や心像。
②将来実現させたいと思っている事柄。
③現実からはなれた空想や楽しい考え。
④心の迷い。
⑤はかないこと。たよりにならないこと。
『デジタル大辞泉』より一部抜粋

「ゆめ」という言葉は、「寝目(いめ)」が語源で、平安時代頃に転じて「ゆめ(夢)」という言葉ができたそうです。

漢字からも分かる通り、この時代までは「寝ている時に見るもの」の意味合いが強いようですね。これを比喩などで用いて「現実から離れた空想」「心の迷い」「儚いこと」などの意味合いが生まれたのではないでしょうか。
(夢は "覚めるもの" ですもんね。)

また、「夢」という漢字の成り立ちには『暗闇でよく見えない』というニュアンスがあり、この漢字の部首が『草冠』ではなく『夕』であることからも、それが窺えます。


では、いつから「将来実現させたい願望」の意味が出現したのでしょうか。


調べてみると日本ではどうやら近代以降のことだそうで、
恐らく理由は英語の「dream」に『(実現させたい)理想』の意味が含まれていたからではないかと言われています。

古英語では「楽しみ、音楽、夢」という意味があったようで、
なるほど、東洋ではどちらかというと "陰なイメージ" の「夢」でしたが、西洋では明るい "陽" の雰囲気があり、それが現代にも通じているのかもしれません。


また古来より『夢』は吉凶を占うものとして大変重要視され、それは東洋でも西洋でも共通していました。
”現実に影響しうるもの” としての印象が、今ある「将来実現させたい願望」という意味にもつながるのかなと、やっと「夢」という言葉に対する疑問が少し解決したような気がします。


夢と志。

では、近代より前は「将来実現させたい願望」を何と表していたのか。

いくつか候補がありますが、私が一番腑に落ちた言葉は『志』という言葉でした。

こころざし【志】
①ある方向を目ざす気持ち。心に思い決めた目的や目標。心の持ち方。信念。志操。
②相手のためを思う気持ち。厚意。
③謝意や好意などを表すために贈る金品。
④心を集中すること。注意。
⑤相手を慕う気持ち。愛情。
⑥死者の追善供養。
『デジタル大辞泉』より一部抜粋

「志」は『心指し』、つまり心が向かう方を目指すという意味です。

漢字の成り立ちを見ても、「士(之)」と「心」の組み合わせ「心が行く」という、そのままの意味が現代でも使われており、かなり動的な印象のある言葉。

また「志」には『他者への想い、感謝』の意味が含まれます。
これは私の予想ですが、「心」にはもともと「他者を思いやる動き」が含まれていることを示しているような気がして、
ああ、とても良い言葉だ・・・と、大切にしたい気持ちが沸き起こりました。


夢と志。


この二つは一緒に使うことで、無限の可能性を私たちに提示してくれます。

制限のない空間に、自由に思い描くことができる、夢。
それは儚い幻のような存在ですが、
心の指針を頼りに夢へと歩いて行けば、やがてそれは道となり、
実態として現実世界にも立ち現れるのでしょう。


夢と志。未来を創る想いのこもった言葉。
どちらも大切にしていきたいものですね。




では、今日は長くなってしまったのでこの辺で。
思いつきで書き始めてしまいましたが、壮大な着地点となり、自分的に少し驚きの結果となった記事でした。

最後までお読みいただいた方がいらっしゃったら、大変嬉しい気持ちです。お付き合いいただき、誠にありがとうございます!


おまけ
日本語にある「ゆめ」には、『ゆめ【努・勤】』という副詞もありますよね。

①〔下に禁止・命令表現を伴って〕決して。必ず。
②〔下に打消の語を伴って〕まったく。少しも。

古い言葉ですが、「ゆめゆめ(努々)」などは現代でも残っています。優しい音の響きですが、かなり強い禁止のニュアンス。本文に差し込めなかったのでここに残しておきます。では。
『weblio古語辞典』より一部抜粋。


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