かなべ

癒やしの読書生活

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マガジン

  • 医師のための読書不案内

    • 70本

    なにしろ不案内なもので

  • 医学生のための読書案内

    • 17本

    副作用もあります

  • 本の処方箋

    • 11本

    どうぞお大事に

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本を処方する

誰かに紹介された本に、助けられた経験はあるでしょうか。 今回は「本を処方する」をテーマに5冊を紹介します。 1. 心と体がラクになる読書セラピー(寺田真理子)著者自身の壮絶な経験をもとに、本を「読む薬」としてすすめ、「読書療法」を紹介しています。読書には多くの効能があり、問題解決の援助、行動変容、読解力・語彙力・発信力・集中力の向上、苦痛やストレスの軽減、なんと死亡率低下にもつながるそうです。イギリスではプライマリ・ケア医と司書が連携して、本を処方するサービスもあるのだと

    • 【誤嚥性肺炎の主治医力】吉松由貴

      ジェネラリスト必読のスゴ本感動して泣いた医学書はこれが2冊目である(ちなみに1冊目は、佐藤健太先生の『慢性臓器障害の診かた・考えかた』)。「はじめに」と「目次」だけで圧倒された。卒後10年目という若手で、呼吸器内科専門医の先生が、こんなに熱くジェネラルに誤嚥性肺炎の診療をしているなんて・・。弟子入りしたい。 主治医がいかに多職種と協働できるか、患者さんや家族の物語に目を向けられるかで、その後の人生が大きく変わってくる(患者さんの人生という意味もあるし、医師人生という意味もあ

      • 【目の見えない人は世界をどう見ているのか】伊藤亜紗

        見えていないのは私のほうだった見えない人の世界を「面白がる」というユニークで価値の高い本。視野が広く、柔軟で、ユーモアあふれる生活を送る人たちが紹介されている。老いていく私たちも、いずれは何らかの障害を抱えることになる。障害を欠如として捉えるのではなく、他の感覚を研ぎ澄ませ、身体や言葉の使い方を変えることでバランスをとると考えたほうが生きやすいように思う。 お互いの違いを面白がり、相手に「変身」してみることが、理解しあうことへの一歩なのかもしれない。

        • 【大切な人を亡くしたあなたに知っておいてほしい5つのこと】井手敏郎

          哀しみを一人で抱え込んでいる人に対話形式で進んでいき、グリーフサロンに参加しているような気持ちで読むことができます。病院に行くほどではないけれど、日常生活のなかで身の置き所がない感覚をもっている方には、自分の心や身体と丁寧に向き合えるような居場所や仲間が必要です。 割れた陶磁器を修復する『金継ぎ』のように、傷を愛でてその人の一部にしていくサポートが、グリーフケアなのだと学びました。

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        記事

          【ないようである、かもしれない 発酵ラブな精神科医の妄言】星野概念

          ゆっくりと心がほぐされるような、著者は精神科医で、執筆や音楽活動も行い、お酒や発酵が大好き。対話も、作詞も、酒造りも、醸成されるまでじっと「待つ」「耐える」ことができたら、静かで豊かな充実感が待っているのだそう。精神医療における患者さんとの関わり方、訪問診療で考えていることなども参考になりました。 著者のオリジナル曲である『平熱大陸』はとんでもなく癒やされるのでぜひ聴いてほしい。 あと、BRUTUSで連載している「本の診察室」を書籍化してほしいと願っているのは私だけでしょ

          【ないようである、かもしれない 発酵ラブな精神科医の妄言】星野概念

          【医療者が語る答えなき世界】磯野真穂

          エピローグだけでも読んでほしい著者は医療現場を研究フィールドとしている文化人類学者。医療現場の「不確かさ」に光を当て、医療者の肩越しの視点から見た世界をリアルに描いている。立ち止まることが許されない医療者たちがスルーしている問題に切り込めるのは、文化人類学者だからこそできる仕事である。

          【医療者が語る答えなき世界】磯野真穂

          【心の出家 変わらぬ日常をもっとラクに生きたいあなたへ】草薙龍瞬

          行き詰まったときの処方箋いつも何かが足りない。イラッとする。思いどおりにならない。人のことが羨ましい・・・これはすべて「心の荷物」であり、その正体に気づいて、降ろすだけで生きるのがラクになる。わざわざ悩んで苦しんでいるだけで、すべて妄想なのかもしれない。自分の心と向き合い、じわじわと人生観をひっくり返されるような一冊です。

          【心の出家 変わらぬ日常をもっとラクに生きたいあなたへ】草薙龍瞬

          【仮病の見抜きかた】國松淳和

          医学書ですが、なんと小説。医師や患者の「気持ち」が生々しく書いてあり、診療の場で起きるすれ違いが見事に描かれています。優れた臨床医でありながら、こんな小説が書けるとは・・・ヤンデル先生は驚きすぎて首が離脱したようですが、私も同じくやられました。 患者さんとの向き合い方というのは、なかなか指導してもらえるものではありません。しかし、この本を通して、國松先生が患者さんのどこに注目しているのか、どんな言葉をかけているのか、あるいは、どんなことにもやもやしているのか垣間見ることがで

          【仮病の見抜きかた】國松淳和

          【鹿の王】深い森の奥へと冒険しながら、命について考えさせられる大人向けファンタジー

          上橋菜穂子著 『鹿の王(上)生き残った者』『鹿の王(下)還って行く者』 発行:角川書店 2015年の本屋大賞になった話題作ですが、尊敬する先輩に薦められ、初めて読みました。まずは「出会えてよかった!」という感想です。ファンタジー小説を読むのは、ハリーポッターシリーズ以来でしたが、大人になってこんなにもワクワクする体験ができるとは思いませんでした。この作品は、獣に襲われて病に罹る元戦士ヴァンと、優秀な若き医術師ホッサルという2人の男が主人公で、ある感染症をめぐって奮闘する姿が

          【鹿の王】深い森の奥へと冒険しながら、命について考えさせられる大人向けファンタジー