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医師のための読書不案内

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なにしろ不案内なもので
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記事一覧

#124 聞く技術 聞いてもらう技術|東畑 開人

最近は読書が捗らず昔の読書メモを見ながら復習がてら書いている。 売れている書き手で著作も多いがちゃんと読んだのはまだこれだけ。 コミュニケーションの本だと思ったら、ケアの本だった。 専門知と世間知の話が興味深い。 専門知が世間知の限界を補い、世間知が専門知の暴走を制御する 両者のせめぎあいで複雑な事情を複雑なまま理解しようとするのが心のケア ケアの主役は民間セクターである(アーサー・クラインマンのヘルス・ケア・システム) 家庭医療の実践で民間セクターに歩み寄っていくこ

#120 死亡直前と看取りのエビデンス 第2版|森田 達也・白土 明美

施設職員向けに勉強会をすることになり再読中。 わかっていることとわかっていないことを噛み砕いて伝えたい。 多職種連携はお互いの立場を知るところからと自戒を込めて。

#117 心理的安全性のつくりかた|石井 遼介

来年度は心理的安全性の高い職場づくりを目指したいと考えている。 ということで何年か前に読んだ本書の読書メモを読み返してみた。 心理的安全性とは、対人関係におけるリスクをとっても大丈夫だと思える度合いのこと。 べき論や「正しさ」が強調されすぎると、脱線が許容されない雰囲気となり、心理的安全性の低下を招くのではないかと感じている。 「絶対的な正しさは存在せず、自分のフィルターを通してしか現実は見られないからこその協働なのではないか?」とメモってあった。 チームで診療する強

#116 正解を目指さない!? 意思決定⇔支援|阿部 泰之

ACPの勉強会を担当することになってある先生から借りた本。 著者は哲学とかも勉強されているようで内容が深い。 現場でのもやもやが丁寧に言語化されている感じ。 表題の「正解」というのがなかなか難しい。 そもそも「正解」があるのかという問いには、確固とした正解があるのではなく自分の頭で正解だと確信する行為が正解を選び取るということと答える。 正解ははじめからその人の中にあるのではなく話あいの過程で創られる。 これがACPの本質だと。 意思決定においては、「納得感」を指標にしよ

#113 実践SDH診療|近藤 尚己・西村 真紀

以前西岡先生の講演を聞いて感銘を受けて講演料をとおもって購入した。 執筆者が多いので印税なんてたかが知れているというかないかもしれないが。 積読になっていたが、院内学習会の司会を頼まれて慌てて読んだ。 スティグマとは、ある属性を持つ人にネガティブなレッテルが貼られている状態。 スティグマを負った人は自己評価を攻撃し自尊心低下や受診中断につながる。 医療者は「中断するような患者」というレッテルで差別を強化していく。 (無意識的な)偏見や言動が同じような困難を抱えた人をさらに

#108 MBA問題解決100の基本|グロービス 嶋田 毅

コミュニケーションの難しさに直面しているときに、 本書の「コミュニケーションの齟齬」というコラムが目に止まった。 言ったは聞こえたでない 聞こえたは聴かれたでない 聴かれたは理解されたでない 理解されたは同意されたでない 同意されたは納得されたではない 納得されたは行動がとられたでない 激しくうなずく。 重要なのは相手の納得がえられるか否かだけど、 そこまでの道のりは案外長い。 これを呪文のように毎朝みんなで唱えれば、 もう少し穏やかな職場になるんじゃないかし

#106 「辞める人・ぶら下がる人・潰れる人」さて、どうする?|上村 紀夫

著者は産業医でコンサルティングファーム代表の方。 離職のメカニズムとその対策について書かれている。 マイナス感情の類型は、心身コンディション、働きやすさ、働きがい。 この順番に下からピラミッド構造をつくっている。 働きがい低下などで不満はあるけど転職しない人・できない人のことを「ぶら下がる人」と呼ぶらしい。 ぶら下がる人が増えることは離職者が増えることよりも組織の活力低下を招くため問題となりやすい。 働きやすさを改善する施策はむしろぶら下がる人の増加を招く。 いろいろ心

#105 これからの「お看取り」を考える本|名郷 直樹

昨日は第2回の読書会があった。 課題本はこちら。 読了が一年半前で手元に原本もないので読書メモを元に話した。 外来で「カツアゲ」してたことにハッとしましたとか。 関連本とかの紹介もあっていい感じだった。 一人では得られない体験になる。 で本書は課題本に推薦したけど落とされた方。 N氏が辿り着いた境地を、 一般向けに語ったのが課題本で、 ヘルスケアプロバイダー向けに語ったのが本書だ。 ヘルスケアプロバイダーは2冊セットで読もう。 次回は弱さとか正しさとかマイノリティと、

#103 レジデントのための神経診療|杉田 陽一郎

直近で一番勉強になっている医書。 オーソドックスな教科書的な章立てでありながら、 陥りがちなピットフォールが強調されていて読ませる文章。 かゆいところに手が届く神経領域の書籍がやっと出版されたという感じ。 著者プロフィールをみたら2015年卒でぶったまげた。 相当に優秀な先生なんだろう。 精読します。

#102 エビデンスをめぐる往復書簡|青島 周ー・名郷 直樹

前回の読書会で、往復書簡形式の本は初めて読んだ、という声があって、確かにと思いつつ、自分の読書ノートで検索かけたらヒットした。 2022/7/22の記録だ。 『急に具合が悪くなる』にインスパイアされて書かれた本だった気がする。 「非日常、必然、因果、依存から、日常、偶然、現象、出会いへ」がテーマになっていたようだ。 本書は『急に具合が悪くなる』の副読本だ。 ケアとかナラティブとか言葉とかをテーマに選書を続けねば。

#100 患者の意思決定にどう関わるか?|尾藤 誠司

版元ドットコムの書影が使えなくなってしまった。 重宝していたのに残念。 ヘッダー画像は適当にあてがうしかない。 ということで100回目。 先日の読書会で勧められた本。 事前にリクエストしていてタイミングよく到着。 B氏のYoutube動画の語りとは違いかなりまじめなテイスト。 さすが医学書院。 Authenticな教科書というかんじ。 意思決定アジェンダは「決める」ものではなく、「決まる」もの。 だから意思決定に関するやり取りをする者が行っている行為は「支援」ではなく「

#98 急に具合が悪くなる|宮野 真生子・磯野 真穂

仲間内で読書会をすることになり課題本に指定されたため再読した。 この二人にしか交わせれえなかった往復書簡。 命がけの言葉のキャッチボール。 本書が出版された偶然に感謝したい。 自分が考えた論点を箇条書きしてみる。 確率にからめとられる生 弱い運命論と代替医療 意思決定と中動態 医療化と患者になることへの抵抗 3セクターの分断と対立 合理性と偶然性 不運の意味づけ 他者と生きることー約束・信頼・出会いー 当日(今日)が楽しみだ。

#95 まるっと!ACP アドバンス・ケア・プランニング|宇井 睦人

HEPTを受講した。 グループワークではACPと臨床倫理についてディスカッション。 暗い話になりがちだからこそ、生きがいや希望などポジティブな側面を話題にするように意識している、と循環器医が言っていて感服し、反省した。 自分の発言を機に本書のノートを復習。 「医療者による医療者のためのACPになっていないか?」 ほんとうにこれ。 様々な立場の方が分筆されていて読みやすい。全医療スタッフにおすすめ。

#85 腹痛の「なぜ?」がわかる本|腹痛を「考える」会

まず、著者名をみて、「なぜ?」となります。 つぎに、版元をみて、間違いないとなります。 そして、読んでみて、これまでの診療を反省します。 痛みを内臓痛、体性痛、関連痛に分けてとらえ、 病態を考えてアプローチしようというのが本書のコンセプトです。 やっぱり解剖生理がだいじですね。 さいごに、胆石発作の9割は持続痛です。よろしくお願いします。