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人材育成の標準と亜流【連載11】さて44歳リクルートを辞めて

「お前は何がしたいんだ?」と問う伝統が影を潜めて数年が経ちました。

もともとのリクルートの人材育成は、WILL、CAN、MUSTという考え方が土台にあり、それは、その人が何を今の仕事と将来に成し遂げたいのかというウィル、何が得意で何が不得意かのキャンとキャノット、最後に会社からのやって欲しいことであるマストが重なる部分での仕事にモチベーションとパフォーマンスが最大化するというもの。

ウィルキャンマストシートという、人材育成と仕事のオーダーシートを半年に一回、マネージャーとメンバーで作成し、3ヶ月後に中間面談、半年の終わりに振り返り面談をする仕組みがあります。

それを作る上で立脚するツールは、強み弱みを特定して、ウィルとマストを繋げる為の「64シート」と呼ばれるリクルート社員が身につけるべしとされる6つのスキルと4つのスタンスがグレード毎(ポジション階級毎)に書かれているエクセルシートです。

〈6つのスキル〉
構造で捉え俯瞰して見る力
分析的に捉え問題を特定する力
筋の良い仮説を立てる力
プロセスを作り込む力
ビジョンを打ち出す力
人を理解し統率する力

〈4つのスタンス〉
圧倒的当事者意識
考え抜く姿勢
学び続ける姿勢
誠実さ・正直さ(チーム協働に置いて)

一つ一つの説明は元リクの下記に詳しいので省略。

「6つのスキル・4つのスタンス」について元リクルート社員が徹底解説!
https://jobotaku.com/four-stances-that-recruit-employees-have/

ここまでがリクルートの人材育成のスタンダードです。冒頭の影を潜めたウィルの明確な言語化の衰退には、時代の変化が影響していて、なかなか将来のことや自分自身の意志を聞いても出てこない人が増え、そこにマネージャーがパワーを割いても逆にモチベーションを下げてしまうという背景があったようです。個人的には、ウィルの明確化無しに、中長期的なモチベーションキープは難しいのではないかと考えていますが。

さて、ここからが亜流。この亜流が大いに認められて推奨されているのが、リクルートのマネジメントラインへのマネジメントの良い点だと思います。分社化からの再統合で少しマネージャーのマネジメント方針運用締め付けに繋がる不穏な動きもありますが。

ともあれ、僕は自身のポリシーに従い、出来るだけ営業マネージャーが最前線に居ない方法、グループ内に助け合いの風土を醸成し、信じて待つことで、メンバーとグループの自律自走的な成長を促すということをしていました。

やっていたことは大きくは下記の3点です。
①人材の強み弱み理解のフレーム運用
②相互理解研修の定期的な実施
③トップ営業の型を新人育成の土台とする

①人材の強み弱み理解のフレーム運用
これは、ストレングスファインダー、16パーソナリティーズ、FSSという巷の人材理解テスト結果をベースに、モチベーショングラフヒアリング、怒りの3原色、赤玉青玉緑玉、嫌いな人のタイプ、ウィルヒアリングの三角形といった独自フレームで面談をして、その人を一言で表す強みのキャッチフレーズをつけるというもの。
これまでご評価の高かったキャッチフレーズは、下記です。
・小さな宗教集団の二番手
・「ノーベル賞取りたいなぁ」という博士 
・ウサギも怖れる小さなゾウガメ
・本当は怖い平和主義者
・モジモジ降臨太陽神
・自由の杭に繋がれた忠犬
・毎秒アップデートされるカーナビ
あたりでしょうか。
その方の強みと可能性が一文に表現されることをめざします。

②相互理解研修の定期的な実施
上記のストレングスからの人的理解のチャートをベースに、人生最大の成功体験と挫折、理想の姿を共有したり、モチベーショングラフを再度お話してもらったりする長めの場を設けて、グループメンバー相互に質疑応答を交えて相互理解する研修を相互理解研修として定期的に行なって来ました。

じわじわとですが、この強みをベースとした相互理解は助け合いの風土の醸成と強化につながって行きます。副次的な効果として、次期リーダー格の特定やメンバー毎のコンディション悪化の察知につながる場でもありました。

③トップ営業の型を新人育成の土台とする
まず、出来る営業=トップパフォーマーの思考や動き方を徹底的に言語化し汎用化する。その型を元に育成プログラムを組むことでことで、相互育成が切磋琢磨の中で行われます。新人が入ると、その少し前に入った人たちが、型を持って育成して行く、その過程では実は「教えるものが一番学んでいる」とよく言われる状況が生まれやすくなります。

上記のように、つまりは、僕はマネージャーとして人材育成をとても大切にして来たけれども、僕自身が常に手をかけ目をかけていく方法ではなくて「人を介して人を育てる」という仕組みをずっと考え続けて来たように思います。

そして、それはリクルート創業者の江副浩正さんが言葉を紡ぎ、その言葉によって風土を創って来たことに通じているように思い、勝手に江副浩正さんの一番弟子だと自認しているわけです。一番弟子が推定500人は居るでしょうけれど。

次に、そろそろ江副浩正さんの残したリクルートの言葉と風土について僕の理解を書いておきたいと思います。

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