「消える職業」「なくなる仕事」10年後どうなった|未来予測の結果
未来予測の方法は確立されていない。
未来を予測できたら、どんなに素晴らしいか。
できる人がいるとしたら、わざわざ公表せずに富を独占するだろう。
一般常識で考えれば、あり得ないことだと気づきそうなのに
もはや確実な情報のように報じられている。
明日の天気予報ですら降雨予測の適中率が、平均83%なのに ※1
10年以上先の社会状況を予測して当たるわけない。
未来予測が信用できるなら、競争の激しい生成AIの開発など
全部やめて未来予測に資金をつぎ込んだ方がいい。
企業は、様々なリスクから解放されて、大儲けできる。
有名な未来予測は、もはや定説として扱われているように見受けられる。
その一つが「消える職業」「なくなる仕事」説で、元ネタとなったのは
オックスフォード大学のフレイ&オズボーンによる
「雇用の未来」という論文だ。 ※2
この論文の以下の指摘がインパクトがあった。
発表されると、世界中で話題を呼び活発に報じられた。
職業に関する未来予測の話題が盛り上がるのは、ネガティブ情報だから。
大昔から繰り返される「技術的失業」というステレオタイプである。
・ITが普及し、AIやロボットの技術革新が注目されていて、
技術に対して信頼を置く一方、脅威を感じていた。
そこへ権威が大胆なネガティブ予測を発表したから、
メディアにとって、とても売りやすいネタになった。
この様な経緯で世界中に拡散したと想像する。
大雑把な背景の解釈だが、当たらずとも遠からずだと思う。
すでに発表から10年が経過しているが、予測は外れまくっている。
ネットの一部では、批判的な記事も確認できるが、打ち消しには至らない。
例えば、機械に代替されなくても、最も消えそうな職業は
フィルム写真の現像技術者だと思うが、フィルムの生産が中止されても
根強い需要があり、現像サービスは継続している。
統計データから予測を導く
日常的な感覚として、何らかの予測方法を考案しても、未来については
情報が不足しているので、予測は当たらないと、皆が知っている。※3
しかし、新しい予測方法と根拠データを持って、予測が示されると
興味津々で思わず疑いもなく、誰かに教えたくなるところが面白い。
長期的な予測など占いと変わらないだろうと疑った方がいい。
「雇用の未来」で予測に用いられている方法は、ロジスティック回帰モデルである。複雑なアルゴリズムとか、大規模なシステムを構築して予測したのかと思ったら、ロジスティック回帰って、EXCELで使えるやつでしょ。
世界中に影響を与えるような未来予測が、ノートPCレベルの計算スケールで出力された結果だったら、落差が激しすぎる。
予測方法の詳細を確認しようかとも思ったが、面倒なので検索したら、
専門家の方が、ちゃんと検証されていた。
メディアが散々煽りまくって、予測が外れるならまだしも ※4
「計算ミス」って...一体、何だったんだ。
間違いの原因は下記の引用元の資料が分かりやすい。
最も重要な根拠が、ただの偏見だった。
「低賃金と低学歴の仕事がコンピュータ化される可能性がある」という偏見を持った人たちが、リスクの判断基準を設定し、その偏見がアルゴリズムを通って再現されただけだ。
この話題の根本に関わる重要な点が、元の論文に記述されている。
雇用とテクノロジーの関係を散々語った後で、でも
本当は、テクノロジーのことしか分からないですけどね。
と言い出すのは、クレイジーすぎる。さらに
恐ろしいのが、行政の資料で引用されていること
厚生労働省:技術革新が労働に与える影響について (先行研究)
総務省:2040年頃までのICTの発展イメージ
文部科学省:2030年に向けた日本の教育政策について
重要な政策の方向性に影響を与えているとすれば、日本は
誤った方向に向かっているのではないか。
「そっちに行っても何もありませんよ」と心配になる。
でも、
数学大好きな官僚とかメディアが、この話題のデタラメさに
気づかない方がよほど不自然だと思う。
みんな初めからマユツバだと分かってた
誰だって単純で退屈な仕事は嫌だ。でも、
単純で退屈だから、誰かに金を払ってやってもらう。
労働力売買の市場で、価値がある。
クリエイティブと言われる職業だって業務のほとんどが
単純だったり、ルーティン化されていたりで、創造的な瞬間は一瞬だ。
「消える職業」と名指しされて、
労働力としての価値が下がる職業があったとすれば、
得をするのは誰なのか。
「消える職業」と職業別賃金統計を比較すれば、何かわかるかもしれないが、これも直接的な影響を断定できる方法ではないので、やめておく。
以前の記事で、「AIで代替される職業」を扱ったので、追加で調べてみら、
やっぱり、マユツバだったことが分かった。
※1
※2
※3
統計学も少し複雑な問題を設定すると、うまく機能してくれないし、
データや計算結果の解釈も慎重に取り扱わなければならない。
ロジスティック回帰分析の分かりやすい解説
※4 当時の記事
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