雇用の未来(The Future of Employment)全訳

オックスフォード大のフレイとオズボーンの「The Future of Employment」(2013)の全訳を以前していたので、このタイミングで掲載させていただきます。

雇用の未来
仕事はコンピュータ化の影響をどれくらい受けるのか?
Carl Benedikt Frey and Michael A.Osborne
2013年9月17日

要旨
 仕事がコンピュータ化によってどのくらいの影響を受けるのかについて調査する。まず始めに、ガウス過程分類を使用し、702の職業別にコンピュータ化の可能性を推定するために、新しい方法論に取り組む。その推定に基づいて、我々は、米国の労働市場成果における、未来のコンピュータ化が及ぼす影響を調査する。第一の目的は、コンピュータ化のリスクにある職業の数と、コンピュータ化される可能性がある職業と賃金と学歴の相関を分析することである。本調査の結果、米国雇用全体の約47%がコンピュータ化のリスクに晒されていることがわかった。また、賃金と学歴がコンピュータ化される可能性がある職業と強い負の相関があった。

キーワード:職業選択、テクノロジー変化、賃金格差、雇用、スキル需要
JELクラス分類:E24,J24,J31,J62,O33

Ⅰ.序論
本稿では、「仕事はどの程度、コンピュータ化 の影響を受けやすいのか」という問題を扱い、それに対して2通りの既存の論文に基づいて構築する。最初に、機械学習と移動ロボット工学分野での最近の進歩を利用して、コンピュータ化されるリスクにある職業を分類するための新しい方法論を開発する。次に、我々は、702職種別にコンピュータ化される可能性を推定するためにこの方法論を実施し、米国の労働市場の成果における、未来のコンピュータ化の起こり得る影響を調査する。

 本稿は、John Maynard Keynesの論文から頻繁に引用される、「我々が労働の新しい可能性を見出すよりも速いペースで、労働を節約する手段を見つけてしまう」ことで広範囲に広がるテクノロジーによる失業の予測を動機としている(Keynes,1933,p.3)。実際に過去数十年にわたり、コンピュータは、簿記、現金出納係、電話オペレータなどの多くの仕事を代替してきた(Bresnahan,1999;MGI,2013)。さらに最近、先進国にわたる労働市場の不振から、経済学者の間でテクノロジーによる失業についての議論が過熱している。持続的に高い失業率の背景にあるものは、依然として意見の違いは見られるが、多くの学者は、コンピュータ制御機器の導入をあげている(Brynjolfsson and McAfee,2011の例を参照)。
 コンピュータ化が労働市場成果に影響を及ぼしていることは、論文では定着しており、特に定型業務(Routine task)が集約している職業の雇用減少を示している(ここで述べる定型業務とは、高機能なアルゴリズムが簡単に仕事をこなせる、明確な定義に基づく業務が主である職業である)。例えば、Charles他(2013)とJaimovich and Siu(2012)による研究では、製造業の進行している雇用の減少と他の定型業務の消失は、現在の雇用率の低さにつながっていることを重要視している 。製造業における定型業務のコンピュータ化に加えて、Autor and Dorn(2013)は、労働市場における構造的変化について述べている。それは、労働力の供給において、収入中間層の製造業から低収入のサービス業に労働者が流れているということである。恐らく、この現象は、サービス業で見られる手仕事業務が、柔軟性と身体的能力をより必要とするためにコンピュータ化されにくいからである(Autor,et al,2003;Goos and Manning,2007;Autor and Dorn,2013)。
 同時に、コンピュータの価格が下がり、コンピュータを使用した問題解決スキルが相対的に生産的になったことで、熟練労働者や学歴がある労働者に比較優位があるような認識業務を含む職業の雇用成長が大きく促されている。
(Katz and Murphy,1992;Acemoglu,2002;Autor and Dorn 2013)
Goos and Manning(2007)による最近の研究、「ひどい職業と素晴らしい職業:Lousy and lovely jobs」では、中間層の定型業務の空洞化を伴う、高収入の認識的職業と低収入の肉体労働における雇用の上昇という、労働市場の二極化に向かう、現在の傾向の本質を捉えている。
 Brynjolfsson and McAfee(2011)では、最新のソフトウェア技術が、余剰労働者を作り出し、労働市場を混乱させてもなお、その技術のイノベーションのペースは、未だに落ちていないことを示している。彼らの論文で興味深い点は、コンピュータ化はもはや製造業の定型業務に限定されるものではないということである。Googleによって開発された自動運転の車がどのように運輸と物流の手仕事業務をすぐに自動化できるかの一つの例をあげている。「ドメイン後のドメインにおける、コンピュータ競争の先行き:In Domain after Domain,Computers Race Ahead」の節では、そういった開発がどれくらい速く進むのかに注目している。その少し前に、Levy and Murnane(2004)は、「なぜ、人はいまだに問題があるのか:Why People Still Matter 」の章の中で、実際の交通状況における運転が自動化されにくいことを強調し、人間の知覚を複製することの難しさを指摘した。それは、「実際の交通状況で左折するには、多くの能力を必要とし、運転手の操作を複製できる規則の発見を考えただけでも難しい」ということであった。その6年後の、2010年10月には、Googleは、トヨタプリウスの数台を完全自動化に修正したと公表した(Brynjolfsson and McAfee,2011)。
 我々が知るところでは、最近のテクノロジーの進歩が未来の雇用にとって、どのような意味があるのかを定量化した研究はない。本研究では、論文間における隔たりを橋渡しする意図がある。職業雇用構成に対して、コンピュータ化の影響を調査するのに役に立つ、フレームワークが存在するが、定型業務のコンピュータ化の域を超えて、テクノロジーの傾向を説明するには、それでは不十分であるように思う。Autor他(2003)による重要な研究では、例えば、一方で、認識業務と手仕事業務を区別し、もう一方では、非定型業務と定型業務を区別している。認識業務も手仕事定型業務の両方共にコンピュータによって代替されることは明らかだが、非定型業務は、法的文書記載、トラックの運転、医療診断から、説得や販売まで多様な業務を含んでいる。本研究では、法的文書記載やトラックの運転はすぐに自動化されるが、説得に関しては、そうではないと予測している。エンジニアリング科学における最近の開発、特にML(データ・マイニング、マシン・ビジョン、コンピュータ統計学、人工知能の他分野も含む)やMRを利用して、コンピュータ化のリスクにある職業を把握するのに必要な追加の特質を導き出す。言うまでもなく、自動化の決定を左右する因子は数多くあり、全部を把握することはできないが、我々はテクノロジーの可能性の観点から、自動化されうる職業のためにエンジニアが解決すべき問題を確定することを目的としている。そういった問題、その難易度、その問題に関連する職業に注目し、我々は、コンピュータ化されるリスクに従って職業の分類分けを行った。その結果、問題の特性は職業別の特性と一致していた。さらにO*NETデータを使用して、労働市場の職業構成に影響を及ぼすテクノロジー変化の今後の方向性だけではなく、そういった新しく出現するテクノロジーによって影響を受けるリスクが生じる職業数も調査した。
 本研究は、2つの論文と関連している。1つには、今回の分析が雇用業務内容における労働経済論文(Autor,et al.,2003;Goos and Manning,2007;Autor and Dorn,2013)に基づいて作られている。コンピュータが何をするのかを定義した前提に基づいて、本稿では、労働市場の職業構成に対するコンピュータ化の歴史的な影響を調査した。しかし、コンピュータが行う領域は現在拡大しており、あらゆることがコンピュータ化され続けるだろう(Brynjolfsson and McAfee,2011;MGI,2013)。機械学習(ML)における最近の進歩を考慮して、我々はコンピュータが行える、または達成しうる業務についての前提を広げる。その際、先々のことを踏まえて、業務内容に関する論文に基づいて作成する。さらに、本稿は、1991年を最後に改訂された職業名辞典(DOT)からの業務尺度を重視する一方で、米国労働省で開発されたオンラインサービスである、DOTの後継のO*NETの2010年版を採用する 。O*NETは、職業別業務活動の最新情報を得ることができる。
 もう一つは、情報に基づいた業務の、海外へのオフショアリングを調査した論文に関連している(Jensen and Kletzer,2005;Blinder,2009;Jensen and Kletzer,2010;Oldenski,2012;Blinder and Krueger,2013)。この研究は、オフショアリングの可能性に応じて、職業を格付け、カテゴリ分けするのに異なった方法論で構成している。例えば、Blinder(2009)は、職業別の仕事の性質に関するO*NETデータを使って、米国の職業の22〜29%は、今後10年か、20年内にオフショアリングされることを推定した。そういった推定は、オフショアリングできない職業の2つの決定的な特質に基づいている。それは、(a)ある特定な場所で行わなければならない仕事(b)対面して人とコミュニケーションをとることを必要とする仕事である。当然、オフショアリングされやすい職業の特質は、自動化されやすい職業の特質とは違う。例えば、現金出納係は、セルフサービス技術によって、大幅に自動化されたが、特定の場所で行われるべきもので、また人とのやりとりを必要とする。コンピュータ化の適用領域は、それゆえ、オフショアリングの適用領域を超えているように思える。そのために、今回の方法論を実施することは、Blinder(2009)のものと似ている一方で、我々は、違った職業の特質を拠り所にしている。
 本稿の残りの部分は、以下のように構成される。セクションⅡにおいて、我々は、テクノロジーの進歩と雇用間の歴史上の関連性について、過去の論文を再調査する。セクションⅢでは、現代と予測される未来のテクノロジーの開発について述べる。セクションⅣでは、方法論について述べ、セクションⅤでは、労働市場の成果における、テクノロジー開発の予測される影響を調査する。
Ⅱ.テクノロジー革命と雇用の歴史
 テクノロジーによる失業に対する懸念は、現在だけの現象ではない。歴史を見てみると、テクノロジー革命に続く、創造的破壊の過程によって、膨大な富が生み出されているが、望んでいない崩壊もまた生み出した。Schumpeter(1962)が強調したように、経済発展を妨げたのは、発明のアイディアの欠如ではなく、むしろ、テクノロジーを現状維持させるような、パワフルな社会的、経済的関心であった。これは、1989年に靴下を手で編む作業から労働者を解放することを望んで、靴下編み機を発明したWilliam Leeの話でうまく表現されている。彼は、発明の特許権保護を求めて、エリザベス女王1世に機械を見てもらうためにロンドンに行った。その時、彼は女王の態度に失望した。女王は、彼の発明よりもその発明による雇用への影響に関心があり、彼に特許権を与えることを拒否した。その時、女王は、「汝の志は高い、Lee氏。汝は自分の発明が我が貧民に及ぼす影響を考えよ。きっと、彼らから仕事を奪い、彼らを破産させてしまうだろう。そして彼らは乞食になっていく。」と主張した(Acemoglu and Robinson,2012,p.182fに掲載)。おそらく、女王の懸念は、発明が職人のスキルを廃れさせるのではないかという靴下製造業者組合の不安の現れでもあった 。組合の反対は、実際にWilliam Leeが英国を去らなければならないほど大変激しいものであった。
 組合が、テクノロジーの現状を維持するために、まとめ役として市場の力を組織的に弱めようとしたことは、Kellenbenzによって説得力を持って論じられた。(1974,p.243)その中で「組合は、組合員の経済状況を揺るがす脅威に晒すような新しい設備や技術を持った部外者や発明者のような人々から、組合員の利益を守った」ということが述べられている。 Mokyr(1981,p.11)が指摘したことは、「市場成果の”判断”をすべての人が受け入れない限り、イノベーションを採用するかどうかの決定は、非市場原理や政治的活動を通して、敗者によって抵抗されるだろう。」ということであった 。そのために、労働者は、自分たちのスキルが廃れ、取り返しがつかないままに従来の稼ぎを減らす限りは、新しいテクノロジーに抵抗すると予測することができる。職業の保護とテクノロジーの進歩のバランスはそれゆえ、社会における権力バランスや、テクノロジーの進歩によって得られた利益をどのように分配するかを大きく反映している。
 英国の産業革命は、この点を鮮やかに描いている。手工業の同業組合は大陸ではまだ幅広く健在していた一方で、英国における手工業の同業組合は1688年の名誉革命までに衰退し、政治的影響力のほとんどを失った(Nef,1957,pp.26 and 32)。王位を超えて議会優位性が制定されるのに伴って、1769年に機械類の破壊行為が死で罰すべきものとする法律が承認された(Morkyr,1990,p.257)。確かに、まだ機械化に対する抵抗があった。1811年から1816年の「ラッダイト」暴動は、ウール研磨業界で起毛機の使用を禁止する1551年の法律を議会が無効とした時に、労働者の間で起こった暴動で、テクノロジーによって生じる変化に対する不安の部分的な現れであった。しかしながら、英国政府は、テクノロジーの進歩を中断させようとするグループに対して、徐々に厳格な考え方をするようになり、暴徒に対して12000人を配備した(Mantoux,2006,p.403-8)。機械類の破壊行為に対する政府の所感は、1779年のランカシャーの暴動後に承認された決議で表された。それは、「大きな暴動が起こった唯一の原因は、綿産業に採用された新しい機械であった。;この国は機械の導入から多くの利益を得ているにもかかわらず、この国で機械を壊すことは、機械を他に移す唯一の手段ではあるが、それは英国の貿易において損害となる」と述べている(Mantoux,2006,p.403掲載)。
 テクノロジーの進歩に対する姿勢転換に関して、少なくとも2つの解釈がある。1つは、王位を超えて議会優位性が制定された後に、資産を所有している階級が英国において、政治的に優勢になったことである(North and Weingast,1989)。様々な製造業におけるテクノロジーの普及は、彼らの財産価値を危険にさらすことはない上に、資産家には、製造業の輸出から利益を得る立場にいる者もいたために、職人にそれを抑え込む政治力が単純になかった。もう一つは、発明者、消費者、スキルがない工場労働者が、機械化によって、大きく利益を得るようになったことである(Mokyr,1990,p.256 and 258)。機械化によって生じる雇用不安があるにもかかわらず、単純労働者は産業革命でもっとも恩恵を受けた人々であった(Clark,2008) 。資本家が国民所得の増加する分け前を最初に蓄積していることを示す正反対のエビデンスもあるが、同様に実質賃金が増加しているエビデンスもある(Lindert and Williamson,1983;Feinstein,1998)。これは、製造業のテクノロジーが職人のスキルを廃れさせたが、成長している労働力のために次第になるような方法で、テクノロジーの進歩からの利益が分配されたことを暗示している 。
 19世紀の製造業におけるテクノロジーの重要な特徴は、幅広く「deskilling(デスキリング:熟練の解体)」が行われたことである。業務の単純化を通して、テクノロジーがスキルを代替した。(Braverman,1974;Hounshell,1985;James and skinner,1985;Goldin and katz,1998)。「熟練の解体」の過程は、工場システムが、職人の店に取って代わり始め、そして、蒸気機関を利用しながら、次第に機械化されていく生産の速度をあげた(Goldin and Sokoloff,1982;Atack,et al.,2008a)以前、職人によって行われた仕事は、現在、より小さくなり、高度に専門化し、連続した少ないスキルと多くの労働者を必要とするものになった 。あるイノベーションは、「熟練の解体」になるよう設計されていた。例えば、Eli Whitney は、互換性のある部品のパイオニアだが、このテクノロジーの目的を「長年の訓練と経験を通して習得する職人のスキルを、機械の正確で効果的なオペレーションに取り替える。そして考えられる限り、この国でまだ保有されていないスキルの種」と述べている(Habakkuk,1962,p.22)。
労働者が動かず、異なる作業が流れてくるような連続フロー生産の発展と共に、作業順序に従って、高度に専門化された工作機械を使って、複雑な製品を大量生産された各部品を集めて作れたのは、互換性のある部品があったからであった 。さらに、組み立てラインは1804年に最初の記録があるが、19世紀末期まで、連続フロー工程は大規模に採用されていない。それは、フォード・モーターが大衆の乗り物になるように、Tフォードを非常に安い価格で製造したような規模のことである(Mokyr,1990,p.137)。決定的に、1913年、フォードによって導入された新しい組み立てラインが、単純労働者が操作できるような機械が特別に設計された(Hunsell,1985,p.239)。さらに、以前、1人で行われていた仕事が29人の労働者の操作で行われ、34%も総労働時間を削減することができた(Bright,1958)。フォード・モーターの例は、比較的熟練した職人を代替する一方で、単純労働者を相対的に補完するような物的資本を伴った、19世紀において見られた一般的なパターンを明確に示していた(James and Skinner,1985;Louis and Paterson,1986;Brown and Philips,1986; Atack,et al.,2004) 。それゆえ、Acemoglu(2002,p.7)によって指摘されたことは、「テクノロジーの進歩がより熟練した職人にとって好ましいという考えは、20世紀の現象である」ということである。経済歴史学者の間で広く受け入れられている見解では、熟練した労働者の相対的需要に対する資本深化の程度に、19世紀と20世紀間に断絶があるとしている。スキルを補完する方に投資する現代のパターンは、19世紀末期に現れる。それは、製造業生産が次第に機械化された組み立てラインに転換するときである。この転換は、蒸気や水力からの電気の入れ替わりに端を発し、連続工程やバッチ生産方式を併用して、多くの運搬や組み立て作業の単純肉体労働者を削減する一方で、スキルの需要は増加していった(Goldin and Katz,1998)。要するに、工場の組み立てラインが労働力の徹底的な細分化で、多くの人間の工員を求める一方で、電化は多くの生産工程の段階を自動化させ、次第に機械を操作するために相対的に熟練した肉体生産労働者(ブルーカラー)の需要が増した。加えて、電化は、事務職の非生産労働者(ホワイトカラー)の割合の増加に貢献している(Goldin and Katz,1998)。19世紀にわたって、施設は、蒸気と水力の技術を改善して規模を大きくしていった。それは、労働の更なる細分化と高い資本集約度が重なったことで、生産性向上を実現する力のある機械を採用することができた(Atack,et al.,2008a)。さらに、運輸分野でのイノベーションは、インフラが幅広く改善されたこともあり、国内外における商品輸送のコストを下げた。職人の商品に対する市場は、早い段階で主に周辺地域で制限された。それは、商品原価に比べて、輸送コストの方が高くついたからである。しかし、運輸のイノベーションで市場規模が拡大し、地方の独占力が減少し、徐々に競争が激化したことで、企業は機械化による生産性向上に力を入れた。施設が大規模になり、地理的に広がった市場に提供するようになると、管理上の作業量が増え、複雑化し、より多くの管理職と事務職が必要となった(Chandler,1977)。このパターンは、20世紀の終わりまでに電化によって促進され、相対的に熟練した肉体労働者の割合を増加しただけでなく、事務職の需要も増加させた(Goldin and Kaz,1998)。また、そういった事務職にはより高い教育を受けている傾向があった(Allen,2001) 。
 電化が起こったことで、20世紀は、教育とテクノロジーの競争となった(Goldin and Katz,2009)。米国の高校設立運動は、オフィスの最初の産業革命と同時期に起きている(Goldin and Katz,1995)。タイプライターは1860年代に発明されたが、20世紀初頭までオフィスに導入されていない。20世紀初頭で、タイプライターはディクタフォン、計算機、ガリ版機械、宛名印刷機と共に、機械化の波を作った。重要なことは、そういったオフィス機器が、情報処理のコストを削減し、教育を受けたオフィス労働者の需要を増加したことである。また、教育を受けたオフィス労働者の供給の増加によって、高校設立の運動が起こり、また、生産労働者と比べて事務職の割増賃金における急激な減少が起こった(Goldin and Katz,1995)。しかし、これは「熟練の解体」のテクノロジーによる変化の結果ではない。事務職は、実際に相対的に教育を受けている人々であった。むしろ、それは学歴がある労働者の供給が、彼らのスキル需要を上回った結果であり、教育上の賃金格差を縮めることになった。
 1915年から1980年までの米国の教育上の賃金格差が小さい(Goldin and Katz,2009)一方で、教育上の賃金格差と全体の賃金格差の両方が、1980年代から多くの国で、急激に拡大している(Krueger,1993;Murphy,et.al.,1998;Atkinson,2008, Goldin and Katz,2009)。
 仕事には明確にいくつかの変動要素があるが、そういった変動要素はコンピュータや情報技術を採用することで、スキルを補完するような資本が増えることに起因しているという考え方が広がる(Kruger,1993;Autor,et,al.,1998;Bresnahan,et,al.,2002)。コンピュータ革命として一般に呼べるものは、1960年代のコンピュータの最初の商業利用から始まり、1990年代のインターネットや電子商取引の発展を通して続いた。コンピュータ1台あたりのコストが、1945年と1980年では年間平均37%下がった(Nordhaus,2007)時に、電話オペレータは余り、最初の産業ロボットがジェネラルモーター(GM)によって1960年代に導入され、1970年代には航空予約システムがセルフサービス技術方式を導入した(Gordon,2012)。1980年代と90年代では、コンピュータ価格は、さらにより急速に平均で年間64%まで下がり、それはコンピュータの躍進に伴って起こった(Nordhaus,2007)。同時に、バーコードスキャナと現金自動預け払い機は、小売業や金融産業にわたって広がり、最初のパーソナルコンピュータは、1980年代初期に、繰り返し計算を自動化した文書処理とスプレッドシート機能と共に導入され、コピータイピストの職業を削減した(Gordon,2012)。この労働の代替は、より重要な逆転、つまり既存の職業を削減する以上に新しい雇用を創出していることを示し、結果、20世紀初頭のオフィス機器が、事務職の需要を増やした(Chandler,1977;Golidin and Katz,1995)。同様に、コンピュータ化は、そのような業務の需要を増大しているが、そういった業務を自動化可能にした。
 過去数十年の賃金格差の拡大の要因は、コンピュータ革命によって多少説明がつく。例えば、Krueger(1993)は、コンピュータを使用する労働者が他の労働者より約10〜15%多く稼いでいたが、コンピュータの利用は、教育への利益還元率の増加のかなりの割合を占めている(コンピュータ利用は教育と関連があり、学歴があれば収入が高い傾向にあり、学歴がある人はコンピュータを利用した仕事をしているということ)。加えて、より最近の研究では、コンピュータは労働市場の職業構造において、転換を引き起こすことがわかっている。Autor and Dorn(2013)は、例えば、コンピュータ化が定型業務を行う労働者の賃金を値崩れさせるために、労働者は相対的に低いスキルのサービス業に移行することを示している。もっと正確に言うと、1980年と2005年の間で、サービス業における米国の労働時間の割合は、30%まで上昇した。その前までの30年間では、横ばいか下降傾向であった。さらに、米国雇用における純変化は、スキルレベルにおいて、U型であった。それは、もっとも低いスキルの職業(低い方の1/4)ともっとも高い職業(高い方の1/4)の雇用は急速に拡大し、中間層の雇用が相対的に減少していたことを意味している。
 高いスキルを必要とする雇用の広がりは、より抽象的で創造的なサービスを補完するコンピュータを利用して定型業務を行う価格の下落で説明できる。生産関数の視点から見ると、定型的な情報入力作業をコンピュータによって行うことは、そういった作業を必要とする労働者の限界生産力を増加する。例えば、テキストマイニングやデータマイニングが法律検索の質を改善し、市場情報に常時アクセスすることで、経営上の意志決定の効率を改善している。それは、収入が高い熟練労働者による業務である。その結果、次第に労働市場を二極化し、高収入の認識職業と低収入の手仕事業務における雇用が大きくなるにつれ、中間層の定型的な職業が空洞化していく。これは、米国だけではなく、先進国の多くで同じように見られるパターンである(Goos,et al.,2009)。
 21世紀のテクノロジーの進歩は、今後の課題となる労働市場の成果に影響を及ぼすだろう。歴史を通して、テクノロジーの進歩が農業や職人から、製造業や事務職、さらにサービス業、管理職に雇用構成が大きく転換してきている。また、テクノロジーによる失業に広がる懸念は、大げさであることがわかっている。この懸念が実際には起こらない明確な理由は、リカードの機械における有名な章に関連している。その章では、省力化のテクノロジーが未分化の労働需要を減らし、それがテクノロジーの失業につながることを示している(Ricard,1819)。しかし、経済学者は長い間、機械によって労働者を置き換える発明はすべての製品や工場市場に影響を及ぼすと捉えていた。一つの商品の価格を下げるような生産効率の上昇は実際の収入を増やし、その結果、他の商品の需要も増える。そのために、テクノロジーの進歩は、雇用に対する2つの相反する効果がある(Aghion and Howitt,1944)。一つ目は、テクノロジーが労働力を代替するような破壊効果である。それによって、労働者は他の仕事に転職しなければならない。二つ目は、より多くの企業が相対的に生産性の高い産業に参入できる資本化効果である。それが拡大する産業の雇用につながる。
 資本化効果は歴史的に重要であるが、労働の利用を節約する方法の発見は、労働に対する新しい利用を見つけるペースを上回ると、Keynes(1933)は指摘している。人の労働力が優勢である理由は、教育によって、新しいスキルに適応し、習得することができる能力と関係している(Goldin and Katz,2009)。また、コンピュータ化がより認識的作業領域に参入するのは難しいが、次第にやりがいのあることになるだろう。(Brynjolfsson and McAfee,2011)。そのために、最近の調査結果は特に重要である。例えば、Beaudry他(2013)は、高学歴を持つ労働者の供給が上昇し続けているにもかかわらず、過去十年にわたってスキルに対する需要の減少を示している。それは、高スキル労働者が、従来低スキル労働者が行うような職業に就いたり、低スキル労働者はより低い職業に追いやられたり、また、一部の人々は失業してしまうことを明らかにしている。このことから、以下の課題が生じてくる。(a)教育でテクノロジーとの競争に勝てる人の労働力、と(b)テクノロジーが引き起こす失業の潜在的領域(テクノロジーの進歩が加速することで、多くの人が転職を迫られ、その結果、より高い自然失業率を招く)(Lucas and Prescott,1974;Davis and Haltiwanger,1992;Pissarides,2000)。現在の研究はテクノロジーの破壊効果の調査に限定されているが、今後数十年の失業リスクがある職業の数を相殺するような雇用増加の有益な情報を与えてくれる。
Ⅲ.21世紀のテクノロジー革命
 コンピュータの実質コストが長期的に下落することは、雇用主がコンピュータ資本で労働を代替するような、大きな経済的誘因を作っている。また、コンピュータが行える業務は、不測の事態が起こった時、適切に対処するような手続きや規則を作るプログラム能力に最終的に依存している。そのために、問題を特定できる(成功基準を定量化し、容易に判断できる)点では、コンピュータは人の労働力より比較的生産性が高い(Acemoglu and Autor,2011)。そのために、仕事のコンピュータ化の領域は、技術的問題を十分に明確に解決できるようなテクノロジーの進歩によって決定される。このセクションにおいて、我々は、コンピュータ制御設備が今後数十年で行えると考えられる業務領域を調査する。そして、我々は認識業務を自動化できるようなアルゴリズムの開発に積極的に取り組み、機械学習(ML)に関連する分野での進展を重要視する。機械学習には、データマイニング、マシン・ビジョン、コンピュータ統計学、人工知能(AI)の他の下位分野を含む。加えて、我々は、移動ロボット技術(MR)におけるML技術の適用性を研究し、また、手仕事業務におけるコンピュータ化の領域も調査する。
 今回の分析は、Autor他(2013)の業務カテゴリ化に基づいて行われている。それは、2×2行列を使って職場での業務を分ける。一つの軸に「定型業務対非定型業務」、もう一つの軸に「手仕事業務対認識業務」とする。簡単に言うと、定型業務は機械で達成できる明確な規則に従う業務であり、非定型業務は、コンピュータコードによる明確化が十分にできない業務である。次に、そういった業務は手仕事業務(肉体労働など)か認識的業務(知識労働など)に分けられる。歴史的に、コンピュータ化は、明確な規則に基づく作業を含むような、手仕事業務と定型認識業務(Rotine cognitive task)に限られてきた(Autor and Dorn,2013;Goos, et al.,2009)が、最近のテクノロジーの進歩によって、コンピュータ化は、一般的に非定型業務と考えられた業務にも広がってきている。たった10年前に非定型業務と考えられた業務に対する、現在のコンピュータ化への急速なペースは、Autor他(2013)によって示されている。彼らは、「自動車のナビゲーションまたは、小切手の個人の走り書きサインの解読など、ほとんどの人にとって大したことがない、そういった業務は我々の定義では定型業務ではない」と強く主張している。今日、車のナビゲーションや手書きの解読などの問題は、多くの関連業務がコンピュータコードによって明確化され、自動化されているのと同様にコンピュータ化できるものとして考えられている(Veres,et,al,.2011;Plotz and Fink,2009)。
 最近のテクノロジーの飛躍的進歩は、大部分で、非定型業務を明確に定義した問題に代えていく取り組みのおかげである。そのような問題の定義には関連データが必要となる。これは、Plotz and Fink(2009)による手書き認識の研究で強調された。手書き認識のアルゴリズムの成功は、試験データがなく定量化するとしたら難しい。特に、様々なスタイルを含んだデータを必要とするような手書きの色々なスタイルに対して、アルゴリズムがよく働くかどうかを左右する。これは、人の労働力を十分に代替するために、テクノロジーが処理すべき多くの不確実性を明確化するデータが必要ということである。データからアルゴリズム成功の客観的、定量的な尺度が生み出される。それは、人間の能力と比較して、アルゴリズムの能力を改善するのに役立つ。
 そのように、テクノロジーの進歩はビッグデータ(徐々に拡大し複雑化するデータの集まり)の最近の成果のおかげである。機械翻訳の例で説明すると、人の翻訳のデジタル化テキストのコーパス(言語資料)の拡大のために、機械翻訳の精度がより正確になっていることがあげられる。その具体例として、人間の専門家によって6つの言語に翻訳された国際連合文書からのデータによって、Google翻訳は様々な機械翻訳アルゴリズムの性能を管理し、改善できた(Tanner,2007)ことをあげる。
さらに、MLアルゴリズムは、古いデータと新しいデータ間の思いがけない類似点を発見し、ビッグデータが新たに有効になる業務をコンピュータ化するのを助ける。 その結果、コンピュータ化は、規則に基づいたソフトウェアクエリ(ソフトウェアに対するデータの問い合わせや要求などを一定の形式で文字に表したもの)に置き換えられる定型業務だけにもはや限定されない(Brynjolfsson and McAfee、2011)。 このセクションでは、定型業務を超えた将来のコンピュータ化の領域を調査した。

Ⅲ.A.非定型認識業務のコンピュータ化(MLの利用)
 ビックデータのおかげで、非定型認識業務の広い領域においてコンピュータ化できるようになってきている。さらにビックデータによって、テクノロジーの進歩が一般的に改善したことで、ビックデータを扱うアルゴリズムが情報を蓄積したり、アクセスする領域に急速に参入している。ビックデータの利用は、人間の労働に比べて、コンピュータの優れた比較優位の一つ、つまり、スケーラビリティ(拡張可能性:利用者や仕事の増大に適応できる能力・度合いのこと)によって生じる。面倒な計算作業を行うときに、機械のネットワークが、人間の労働よりうまく計算することは当たり前である (Campbell-Kelly, 2009)。そのように、コンピュータは大規模なデータの集まりを使用するときに必要な大量な計算をより良くこなすことが出来る。コンピュータで動作するMLアルゴリズムは、今、多くの場合で、人間よりビックデータにおけるパターンをうまく検出することができる。
 認識業務のコンピュータ化もまた、アルゴリズムのもう一つの中核となる比較優位によって行われている。つまり、それは、人間的バイアスがないことである。アルゴリズムは、作業の小さな領域を無機質に満たすように設計されている。人間は反対に、職業と関係のない作業領域、つまり睡眠のような職業行為を時折、犠牲にするようなことを行わなければならない(Kahneman, et al., 1982)。人が行動するときに生じる制約は人間的バイアスとして現れる。人間的バイアスの例として、Danziger他 (2011)が、経験豊かなイスラエルの裁判官が昼食後に緩やかな判決を行うことを示している。それゆえに、決定権者を含む多くの役割が公平なアルゴリズムソリューションから利益を得ることを述べている。
 不正検出は、公平な決定とビックデータの傾向を検出する能力の両方が必要な作業であるために、この作業は、現在、ほとんど完全に自動化されている(Phua, et al., 2010)。このように、コンピュータの比較優位は、幅広く、産業や職業にわたって、仕事の本質を変える。
 ヘルスケアにおいて、診断業務はすでにコンピュータ化されている。スローン・ケタリング記念癌センターでのがん専門医は、例えば、IBMのWatsonコンピュータを使って、長期療養やがん治療診断を行なっている。60万の医療エビデンス報告書、150万人の患者の記録と臨床試験、医療雑誌の200万ページの内容から得た知識を、ベンチマークやパターン認識の目的で使用する。このことによって、コンピュータは、各患者の個人的な兆候、遺伝、家系、病歴などを比較して、診断し、成功率の高い治療計画を立てることができる(Cohn, 2013)。
 加えて、コンピュータ化は、法律や金融サービス業の領域に参入している。最新のアルゴリズムは、次第にパラリーガルと契約や特許の弁護士が行う、多くの業務を行えるようになる(Markoff, 2011)。すなわち、法律事務所は、公判前の調査に役立てるために、数千もの、弁論趣意書や前例を精査することができるコンピュータに現在頼っている。頻繁に見られる例では、シマンテックのClearwell システムであり、これは文書内の一般的な概念を識別するために言語分析を使用し、グラフを使って結果を示し、2日間で57万件を超える文書を分析及びソートすることができることを証明した。(Markoff, 2011)。
 さらに、センシング技術の向上は、センサデータをビックデータの最も優れたソースの一つとする(Ackerman and Guizzo, 2011)。センサデータは、頻繁に新しいMLのフォールトと異常検出アルゴリズムに結び付けられ、多くの業務をコンピュータ化可能にする。幅広い分野にわたる例として状態監視や特異点検出(新規性検知)がある。それらには、閉鎖回路TV(CCTV)オペレータや機器の欠陥を検査する労働者や集中治療の患者の状態を監視する医療スタッフなどを代行する技術を伴っている。コンピュータが人間バイアスがないという事実には大きな価値がある。つまり、アルゴリズムには、理不尽なバイアスがなく、休憩あるいは集中力の欠如によって中断されることに注意する必要がない。デジタルセンシングやアクチュエーション(デジタルの検出や作動)のコスト下落に伴い、MLアプローチは、バッテリー(Saha, et al., 2007)から、航空エンジン(King, et al., 2009)、水質(Osborne, et al., 2012)、集中治療室(ICUs) (Clifford and Clifton, 2012; Clifton, et al., 2012)までの状態監視アプリケーションをうまく取り組んでいる。センサは、均等にトラックやパレットに配置され、企業のサプライチェーン(原材料、部品の調達から、製造、在庫管理、販売、配送までの製品の全体的な流れ)管理を改善し、水道を通る水の流れをたどるために、農作物の田畑における湿度を測るために使われる。これは、自動的にメーターを読むことで、人がそのような情報を収集する手間を減らす。例えば、ドーハ、サンパウロ、北京の都市では、状態を監視し、水漏れを管理するために、パイプ、ポンプ、その他の水道インフラでセンサを使用している。そのおかげで、水漏れを40-50%まで削減することができている。近い将来、電灯、歩道に加えて、音や画像を捉えられる他の公共財に安価なセンサを配置できるようになり、公的機関で働く人の数を減らすことができる(MGI, 2013)。
ユーザーインターフェイスの進歩もまた、コンピュータが幅広い人間の要求に応えられるようになり、高スキル労働者を増やし、その一方で、ある特定な仕事は完全に自動化される。例えば、AppleのSiriとGoogle Nowは、話し言葉を認識し、その意味を解釈し、それに応じて行動するために、ナチュラルユーザーインターフェイスを利用している。さらに、スマートアクションと呼ばれる企業は、現在、従来の対話型音声応答システムを改善するために、ML技術と高度な音声認識を使用したコールコンピュータ化ソリューションを提案し、人の労働からなるアウトソーシングのコールセンターにわたって、60-80%のコスト削減が実現している(CAA, 2012)。教育でさえも、多くの労働力を必要とする分野の一つで、ビックデータに基づいた、ユーザーインターフェイスやアルゴリズムの改善によって、大きな影響を受けると思われる。MOOCs (Massive Open Online Courses;ムークス)の最近の成長は、生徒の講義でのやり取り、課題を完了し、講義を視聴する時の勤勉さ、最終成績を詳述する大規模なデータの集まりを生成することから始まっている(Simonite, 2013; Breslow, et al., 2013)。そのような情報は、改善されたインターフェイスとともに、MLアルゴリズムが、各生徒のニーズに合わせて統計的に調整するような、教授法と評価方法で対話型チュータ(指導者)としての機能を果たすことができるようにする(Woolf, 2010)。ビックデータ分析は、生徒の成績のより効果的な予測、卒業後の職業の適性を出すことを可能にする。そういったテクノロジーは、就活で公平に行われ、おそらく、結果として、ヒューマンリソース(HR)分野の合理化に至るだろう。
 微妙な判断を必要とする職業もまた、次第にコンピュータ化しやすくなる。多くのそのような仕事にとって、アルゴリズムのバイアスのない決定は、人の判断より比較優位を示している。集中治療室(ICUs)のような、難しい課題または重要な利用においては、アルゴリズムの提案は、行動者に対する助言としての役割を果たす。しかし、他の環境では、アルゴリズムは適切な意思決定に対して責任を負う。金融の分野では、そのような自動化された意思決定はかなり長い間、アルゴリズムの役割である。AIのアルゴリズムは、より多くの金融告知、プレスリリース、その他の情報を人のトレーダより処理し、より早く行う(Mims, 2010)。未来アドバイザ(フィーチャアドバイザ)のようなサービスは、同じようにAIを使用し、より大きな規模とより低コストで、個別の金融アドバイスを提案する。ソフトウェアのエンジニアでさえも、次第にコンピュータ化されるかもしれない。例えば、MLの進歩によって、プログラマが複雑なパラメータを手放し、アルゴリズムによって適切に最適化された選択を設計することができるようになる(Hoos, 2012)。アルゴリズムは、人が敵わないような信頼性で、さらに自動的にソフトウェアの中のバグを検出できる(Hangal and Lam, 2002; Livshits and Zimmermann, 2005; Kim, et al., 2008)。コードのビックデータベースもまた、人が提案した仕様書に応えるようなプログラムの書き方を学ぶ、アルゴリズムの最終的な可能性を表す。そのようなアプローチは、人の書いたコンパイラ(プログラミング言語で書かれたプログラムを、コンピュータが直接的に実行できる機械語に変換するプログラム)が次第に、自動的に最適化されたコンパイラに劣るのと同様に、徐々に人のプログラマを改善するようになるだろう。アルゴリズムは、ワーキングメモリにおいて、全体のプログラムをよりよく保持し、人が理解できるコードで制限されない。そのことで、人間には思いつかない全体的なソリューションができる。人間の判断を超える、そのようなアルゴリズムの向上は、次第に当たり前のものになるだろう。
 アルゴリズムが発展する領域にまだ余地はあるが、MGI (2013)による調査では、最新のアルゴリズムは約1億4000万の知識労働者の代わりになることが示されている。経済史におけるテクノロジーの進歩の大半は肉体労働を必要とする手仕事業務を機械化することに限定されてきたが、21世紀のテクノロジーの進歩は、現在まで人間の領域と考えられてきた幅広い認識業務に貢献すると予想されている。もちろん、そういった発展に影響を受ける多くの職業は、まだ、完全なコンピュータ化には程遠く、コンピュータ化されたいくつかの業務は、人間が他の業務を行うために人間の労働の手間を単に省いただけである。しかし、動向ははっきりしており、コンピュータは幅広い認識業務において、徐々に人間の労働に挑んでいる(Brynjolfsson and McAfee, 2011)。

Ⅲ.B.非定型手仕事業務のコンピュータ化(MRの利用)
 移動ロボット技術は、拡大する手仕事業務のコンピュータ化を支援するために、ML技術を直接活用する手段を提供する。ロボットハードウェアの継続的な技術開発は、雇用に顕著な影響を及ぼしている。つまり、過去十数年にわたって、産業用ロボットは、製造業における、ほとんどの熟練工の定型業務を引き受けてきている。しかし、現在、より進歩したロボットが改善されたセンサやマニピュレータを搭載し、非定型業務を行えるようになっている。例えば、GE(General Electric)は、最近、風力タービンを登り、姿勢維持するようなロボットを開発した。そして、より動く範囲を広げ、より柔軟性のある手術用ロボットがもうすぐ、より多様な手術を行うようになるだろう(Robotics-VO, 2013)。同様に、物流のコンピュータ化は、高度な機器を搭載し、コンピュータ化された自動車のコスト効率向上によって助けられている。日産のリーフのような量産車には搭載されたコンピュータや先進的な通信機器が導入され、車に潜在的なフライ・バイ・ワイヤ のロボットを提供する。センサ技術の進歩によって、車両がより高度なセンサを搭載し、素早く向上する可能性を高める。センサ技術の進歩によって、アルゴリズムの車体コントローラは、どんな人間の運転手の能力も超えた領域まで状況を監視することができるだろう。つまり、それらは同時に前後を見る能力を持ち、自然にカメラ、GPS、LIDARデータを統合でき、人間のように注意散漫にはならない。そのためにアルゴリズムは人間より潜在的により安全でより有効な運転手である。
 向上したセンサによって提供されたビックデータは、過去のロボット開発を妨げた、多くのエンジニアリングの課題にソリューションを提案している。特に、道路網の詳細な立体地図の作成によって、自動車両がナビゲーションを行えるようになった。なかでも注目すべきは、グーグルが自動運転車から集めた大規模で特殊なデータの集まりを使用していることである(Guizzo, 2011)。ナビゲーションの課題を大幅に簡素化して、車に搭載された全道路網の画像を貯蓄することは現在では完全に実現可能である。変化する季節を通して、ナビゲーションを行うアルゴリズムは、特に降雪後が大きな課題として考えられているが、ビックデータアプローチは、最後の降雪からの記録を蓄積し、これに応えることができる。それは、その過去の記録と車両の現在の環境を比較することで自動運転を可能にするということである(Churchill and Newman, 2012)。道路工事のような道路網のある特定部分での前例がない変化を見定めるためのMLアプローチもまた開発されている(Mathibela, et al., 2012)。この広がる技術は、多様な物流に影響を及ぼす。農業車両、フォークリフト、貨物ハンドリング車は、すぐに自動化され、病院はもうすでに、食事、処方薬、サンプルを運ぶ自立型ロボットを採用している(Bloss, 2011)。鉱山車のコンピュータ化は、RioTintoのような企業によってさらに追求されており、それは、オーストラリアの採掘現場での労働に代わることを模索している。
センサの改良により、ロボットは、人間の労働と比べてより高品質で信頼性のある品物を生産することができる。例えば、スペインのフードプロフェッサーのEL Dulzeは、現在、ロボットを使用し、ベルトコンベアからレタスの頭を掴み、社内基準に満たないレタスの頭を取り除く。これは、その密度を測定し、ベルト上のレタスを取り替えることによって行われている (IFR, 2012a)。センサの向上は、よりロボットにパターンを認識させることができ、22,000ドルの汎用ロボットBaxterはよく知られている。ロボットは、状況に応じて異なる表情を呈する一対の目を表示するLCDディスプレイスクリーンを備えている。ロボットが最初にインストロールされる時、または新しいパターンを学ぶ必要がある時に、プログラミングは不要である。人間の労働者は、作業に必要な動きをロボットアームに伝えるだけである。Baxterはそういったパターンをその時に記憶し、新しい指示を理解したことを伝えることができる。Baxterの物理的な柔軟性は、物体をつかんだり、移動させたりするような単純な操作に限られているが、様々な標準アタッチメントをそのアームに取り付けることができ、Baxterは、低コストで定型作業の比較的幅広い範囲を行うことができる(MGI, 2013)。
 テクノロジーの進歩は、ロボット工学におけるコスト削減に貢献している。過去数十年にわたり、ロボットの価格は、年間約10%低下し、近い将来もっと速いペースで減少すると見込まれている(MGI, 2013) マシンビジョンと高精度の器用さによって特徴付けられ、典型的に10万〜15万ドルのコストを要する機能を備えた産業ロボットは、今後10年で5万〜7万5千ドルで利用可能となり、加えて、高水準の知能と追加能力を持ち合わせるようになる(IFR, 2012b)。ロボット価格が低下することで必然的により多くのユーザーがロボットを手にいれることができる。例えば、中国において、雇用主が賃金や生活水準が上がり、次第に労働をロボットに代替しようという動きがある。香港にある、1,200万人の労働者を雇う中国の委託製造業者は、現在、Appleのiphoneのような製品を組み立てるロボットに投資している(Markoff, 2012)。国際ロボティクス連盟(International Robotics Federation)によると、中国でのロボット販売は、2011年に50%以上増加し、より増加することが見込まれている。グローバル規模において、産業ロボットの販売台数は、2011年には16.6万台となり、前年比で40%増となった(IFR、2012b)。おそらく、Baxterのような低価格で汎用目的のモデルが単純な製造やサービス業務において採用されていくために、今後さらに成長していくだろう。
 技術力の向上とコスト削減によって、ロボットの全く新しい用途を可能にする。ロボットは、製造、梱包、建築、メンテナンス、農業での増加傾向にある手仕事業務を担い続けるだろう。加えて、ロボットはもうすでに、掃除機がけ、モップ掃除、草刈り、雨樋清掃などの多くの単純サービス業務も行っている。個人的な家事サービスロボット市場は、年間約20%増加している(MGI, 2013)。それと同時に、商用サービスロボットは、現在、食事準備、ヘルスケア、商用清掃、高齢者介護におけるより複雑な業務を行うことができる(Robotics-VO, 2013)。ロボットのコスト削減と技術力の向上によって、ロボットは、米国で過去数十年、雇用が伸びていた低賃金サービス業の幅広い領域で徐々に労働を代替すると考えられる (Autor and Dorn, 2013)。これは、以前コンピュータ化を免れていた多くの低賃金の手仕事職業が時とともに減少していることを意味する。

Ⅲ.再考察された業務モデル
Autor他(2003)の業務モデルは、直感的で正確な予測を以下ように行なっている。
(a)コンピュータは、非定型業務と比較して定型業務で人間の労働を代替する。
(b)コンピュータが定型業務の労働投入量に多く集中するほど非定型業務の労働投入量の限界生産性が上昇する。
 つまり、コンピュータは、多くの定型業務における労働の代替としての機能を果たし、その一方で、非定型認識業務を行う労働者との強い補完性も示している 。さらに、コンピュータが行えることの前提が最近広がっている。コンピュータは、現在、非定型として一般に定義されている業務の幅広い領域を定型業務と同様に代替することができ(Brynjolfsson and McAfee, 2011)、このAutor他(2003)の業務モデルは、21世紀の雇用の業務内容へのコンピュータ化の影響を予測することにおいては、有効ではないことを意味する。最近のテクノロジーの進歩による代替の影響に焦点を当てる一方で、我々は、非定型業務におけるコンピュータ化の程度を決めると考えられる、いくつかの要因を導き出して、業務モデルを構築する。
 業務モデルは、扱いやすさのため(分析の実行可能性)に、集合体の規模に関する収穫一定(全ての生産要素の投入量をλ(>0)倍したとき,産出物の量もλ倍になることをいう)のコブ・ダグラス型生産関数を仮定する。

図1

LSは、コンピュータ化の影響を受ける労働投入量で、LNS は、コンピュータ化の影響を受けにくい労働投入量である。C は、コンピュータ資本である。コンピュータ資本は、能率単位ごとに市場価格で弾力的に供給されており、そこではテクノロジーの進歩によって時間と共に市場価格が低下している。さらにコンピュータの影響を受ける、受けない両方の業務共に異質性(異質性:生産能力の差異がある)生産賦存量(賦存量:理論的に導き出された総量)で最大の所得を得る労働者を想定した。労働者の業務供給は相対賃金水準に弾力的に反応し、これは、Roy (1951)が述べているように、労働者が自分の比較優位に従って仕事を選ぶことを意味する。テクノロジーの進歩やコンピュータの市場価格の低下で生じるコンピュータ化が広がるにしたがって、その影響を受けやすい労働者は、それゆえ、影響を受けにくい業務へと移される。 上記の単純モデルは、LNSが定型労働投入量に制限されていない点において、Autor他 (2003)の業務モデルとは違う。これは、MLとMRの最近の開発がビックデータを基にして、パターン認識を可能にし、非定型業務の幅広い領域にわたって、コンピュータ資本が労働に迅速に代わることを可能にするためである。コンピュータ化を阻害するエンジニアリングのボトルネックが根強くあるが、そういったボトルネックを克服して、十分な量のデータがパターン認識のために収集されれば、どんな業務も自動化にすることがもうすでに技術的に可能である。そのために、我々のモデルはボトルネックを克服するペースが、21世紀のコンピュータ化の程度を決定すると想定している。 つまり、Autor他(2003)の業務モデルが、労働を代替するコンピュータ化が定型業務に限られることを予測する一方で、我々のモデルは、コンピュータ化を阻害するエンジニアリングボトルネックの影響がない非定型業務までにコンピュータ化が広がることを予測している。そういったボトルネックが非定型業務のコンピュータ化の程度を左右する。MLとMRの論文を利用するにあたって、オックスフォード大学エンジニアリングサイエンス部でワークショップを開催し、3つの業務カテゴリに合わせて、いくつかのエンジニアリングボトルネックを特定する。そういった調査結果に従って、影響下にない労働投入要素を以下のように記述することができる。

図2

LPMは、認識と操作業務への労働投入量、LCは、創造的知性業務への労働投入量、LSIは、社会的知性業務への労働投入量である。
 我々は、いくつかの関連するエンジニアリングボトルネックは、業務の単純化によって部分的に緩和できることに注目する。これを達成するための一般的方法の一つは、業務の反復での変化を減らすこと(同じような業務を行うこと)である。典型的な例では、工場の組み立てラインにおいて、職人の店の非定型業務を、未熟練の工場労働者が行うような反復的な定型業務に置き換える例がある。より最近では、建築業での非定型手仕事業務のコンピュータ化がある。建築現場での業務は通常、不規則に配置され、天候に応じて変わる作業環境に適応するための高い適応力を求められる。しかし、建築物が建築現場に運ばれる前に工場で部分的に組み立てるプレハブ(組立工法)は、適応力の要件を大幅に取り除く方法である。それによって、多くの建築業務は、業務の変動性を削減する制御された環境でロボットによって行うことができる。この方法は、特に日本において次第に広がりを見せている(Barlow and Ozaki, 2005; Linner and Bock, 2012)。21世紀におけるコンピュータ化は、それゆえ、業務改革の革新的アプローチを部分的に担っている。このセクションの後半では、上述した業務カテゴリに関連するエンジニアリングボトルリングを順番に分析する。

認識と操作業務
 ロボットは、まだ、人間の認識の深さや広さに見合うのは不可能である。基本的な幾何学的な識別は合理的に成熟しており、最新のセンサやレーザの急速な開発によって可能になっているが、雑然とした視界での物体や性質を特定するような、より複雑な認識業務に関する重要な課題は残っている。そのようなものとして、体系化していない労働環境に関連した業務は、仕事をコンピュータ化されにくい。例えば、ほとんどの家は、体系化されていない。それは、多くの不規則な物体の識別を必要とし、車輪で動く物体の可動性を妨げるような、多くの雑然とした空間があるからである。反対に、スーパーマーケット、工場、倉庫、空港、病院は、大きな車輪付き対象物のために設計されているために、ロボットが非定型手仕事業務を行う時に簡単にスムーズに動ける。認識の問題は、しかしながら、時々、巧みな業務設計によって回避される。例えば、2012年にAmazonによって採用された、Kivaシステムは、単純にバーコードステッカーを床に貼り、ロボットに正確な場所を教えることで、倉庫ナビゲーションの問題を解決した(Guizzo, 2008)。
 認識の難しさは、操作業務や、特に、ロボットが人間レベルの適性に達していない不規則な対象物の操作に予期しない影響を及ぼす。これは、人の物体や環境と相互作用するロボットの開発において証明されている。進歩する一方で、多くのアプリケーションが要する、一日何千回も繰り返される単純作業の、無数な小さな変動に対して、ソリューションは信頼できない傾向がある。関連した課題は、障害回復である。例えば、物体を落とした時のロボットの失敗を特定して、修正するなどである。物体をある場所から他の場所に移すことを要する連続した行動の計画を練る難しさによって操作もまた制限される。柔らかく、スムーズな動態を持ち、有益な触覚フィードバックを備える、人間の手足のようなマニュピレータを設計する際にさらなる問題がある。ほとんどの産業マニュピレータは、そういった課題を回避する方法を利用している(Brown, et al., 2010)。しかし、そういったアプローチは、しかしながら、業務の狭い範囲に制限されている。ロボットによるコンピュータ化、認識及び操作の主な課題は、それゆえ、ほとんど残り、今後10,20年では、完全に解決される可能性が低い。(Robotics-VO, 2013)。

創造的知性業務
 人間の創造性に内在する心理的プロセスを特定するのは難しい。Boden (2003)に従うと、創造性は、崇高で価値あるアイディアまたはアーチファクトを思いつく能力である。より広い感覚でのアイディアは、概念、作詞、作曲、科学的理論、調理レシピ、冗談を含み、一方でアーチファクトは、絵画、彫刻、機械、陶器のような物体である。アイディアを創出する(アーチファクトも同様に)一つのプロセスは、聞き覚えのあるアイディアの見たこともない組み合わせを作ることで、これは豊かな知識を要する。ここでの課題は、「筋が通っている」組み合わせに到達する、いくつかの信頼できる手段を見つけることである。例えば、コンピュータがちょっとした冗談を作るには、人間と同等な豊かな知識があるデータベースや、アルゴリズムの微妙さを基準に従って評価する方法が必要となる。
 原則として、そのような創造性は可能で、創造性へのいくつかのアプローチは、文献にすでに存在している。Duvenaud他(2013)は、統計を行うために必要となる中核の創造的業務の自動化とデータに関するモデル設計の例を示す。芸術的な創造性に関しては、描画プログラムのAARONは、何千ものスタイルが似通った描画を生み出し、それは、世界中の画廊で、展示されている。さらに、David CopeのEMIソフトウェアは、明確な人間の作曲家を彷彿させるような、多くの異なるスタイルで作曲する。
 そういった、多くの他のアプリケーションにおいては、目新しいことを生み出すことは、特別に難しいことではない。その代わり、創造性をコンピュータ化する、主要な障害は、我々の創造的価値を十分に明確に述べて、プログラムにコード化できることである(Boden, 2003)。さらに、人間の価値は、時間とともに変化し、文化に渡って変化する。創造性が定義によれば、目新しいことだけではなく、価値も含み、価値は大きく変化するために、創造性についての多くの議論が価値の不一致が根底にあるという結果になる。それゆえ、たとえ、我々が創造的価値を特定、コード化し、コンピュータがそれに従って、それ自身の活動を伝え、表示できたとしても、コンピュータが創造的であるかどうかについて論争がまだあるだろう。この問題を克服する、エンジアリングソリューションの欠如のために、高度な創造的知性を要する職業は、今後数十年において自動化されそうにもない。

社会的知性業務
人間の社会的知性は、交渉、説得、ケアのような幅広い労働業務において重要である。そのような業務のコンピュータ化を支援するために、感情コンピューティング(Scherer, et al., 2010; Picard, 2010),や社会ロボット(Ge, 2007; Broekens, et al., 2009)の分野での積極的研究が行われている。アルゴリズムとロボットが現在、人間の社会的相互作用のいくつかの側面を再現することができる一方で、自然な人間の感情のリアルタイムの認識には課題が残っており、そのような入力に対して、知的に返答する能力は難しい。社会的相互作用が純粋なテキストに縮小される場合のように、典型的な社会業務の単純化されたバージョンでさえもコンピュータにとっては難しいことが証明されている。実際の人間と区別できないくらいにコミュニケーションする機械の能力を測定するTuringテストによって、アルゴリズムの社会的知性は、部分的に捉えられている。1990年以来、毎年行われているTuringテストコンテストであるLoebner賞は、最も人間的なものとみなされるテキストチャットプログラムに賞を与える。各コンテストにおいて、人間の審査員は、アルゴリズムと人間の両方の、コンピュータに基づいたテキストによる対話を同時に実施する。返答に基づいて、審査は、二つを区別することである。最新のアルゴリズムは、人間の類似としては審査員を納得させることは、今までのところできない。これは、言葉に発するのが難しい、人間が持つ多くの「常識」の情報があるためである。もし、アルゴリズムが人間の社会的環境で機能するとしたら、アルゴリズムにこの「常識」の情報を与える必要がある。
 全脳のエミュレーション(模倣)、つまり、人間の脳をスキャンし、マッピングし、デジタル化することは、これを達成するための一つの可能なアプローチであるが、現在では理論的な技術だけである。脳の模倣が使用可能になるには、どのテータが関連しているかを認識するための機能的な理解と、それを実装するために必要な技術のロードマップが必要です。そのようなロードマップが存在している一方で、現在の実装の見積もりで、特定の前提下において、全脳のエミュレーションは、今後10年〜20年以内では、運用可能にはならないことを示唆している(Sandberg and Bostrom, 2008)。運用可能な場合、もしくは、もし運用可能だとしたら、雇用への影響は甚大である(Hanson、2001)。
 それゆえ、要するに、ビックデータに基づいた、最新のアルゴリズムとMRの開発が、現在、多くの非定型業務を自動化可能にしている一方で、複雑な認識や操作業務、創造的知性業務、社会的知性業務を含む職業は、今後10年〜20年の間に、コンピュータ資本によって代替される可能性は低い。職業が自動化される可能性は、それゆえ、そういった業務特性の関数で表すことができる。図Ⅰでは、皿洗いに要する社会的知性の低さは、例えば、広報活動の専門家よりこの職業がよりコンピュータ化されやすいことを示す。我々は、上記のコンピュータ化されにくい業務特性の関数として、コンピュータ化されやすい職業の可能性を続けて調査する。

図3

図1 コンピュータ化の可能性は、ボトルネック変化の機能として、どのように変わるかの描写

Ⅳ.雇用へのコンピュータ化の影響
Ⅳ.A. データソースと実行戦略
上記の方法論を実行するために、我々は、米国労働省のために開発されたオンラインサービスのO*NETを拠り所とする。O*NETの2010年版は、903の詳細な職業に関する情報を含み、そのほとんどが、労働省の職業分類(SOC)に密接に対応している。O*NETデータは、最初に労働市場分析から集められ、職業別労働人口調査や関連する専門家によって、定期的に更新され、時間とともに進化する職業の最新情報を提供している。我々の目的に関して、O*NETの重要な特性は、標準化し、測定可能な一連の変数として、職業の鍵となる特性を定義するだけでなく、職業別に特定の業務の自由記述を提供することである。このことによって、我々は以下のようなことができるようになる。(a)知識、スキル、必要な能力の配分によって、客観的に職業を格付けする(b)多様な業務に基づいた職業を主観的にカテゴリに分ける。
 O*NETが密接にSOCに対応していることによって、職業特性を2012年の労働統計局(BLS)の雇用と賃金データに関連づけることができる。O*NETの職業分類が多少より詳細で、例えば、会計検査官と会計士を区別しているが、我々は、雇用と賃金の値を報告している6桁の2010年のSOCシステムに対応させるために、そういった職業を統合する。6桁のSOC分類に対応している唯一のO*NET変数を得るために、我々は、O*NETを集計する方法を使用した。加えて、我々は、O*NETデータが欠損している6桁のSOC職業を除外する。それを行って、我々は、702の職種からなる最終データセットを最終的に得る。
 MLにおける前述したテクノロジーの開発の雇用への影響を評価するときに、理想的な実験は、2つの同一の自立的な経済を提供する。一つは、我々がよく見るテクノロジー可能性の拡大とコンピュータ化の価格の長期的な低下に直面することで、もう一つはそうではないということである。比較すると、どのようにコンピュータ化が労働市場の職業構成を再形成するかを調査することは簡単であろう。この実験がない場合、2番目に望ましい選択肢は、Autor他(2003)の実行戦略に基づき、単純な経済モデルをテストし、職場業務の需要が、MLやMRの開発に対して、どのような反応を示すのかを予測することであろう。しかしながら、前述したテクノロジーの開発のほとんどが、より広い規模において、産業内で未だ実行されていないという意味では、本稿は将来を見通すために、この選択肢は、我々の目的には有益ではなかった。
 その代わりに、我々の実行戦略は、オフショアリングの対象に成りやすいかどうかに応じて、職業を格付け、カテゴリ分けするような異なる方法論から成る、情報に基づいた業務の海外事業所へのオフショアリングを調査する文献の上に築いている(Blinder, 2009; Jensen and Kletzer, 2005, 2010)。そういった研究に関する共通点は、それらが異なる方法でO*NETデータに頼っていることである。Blinder(2009)が、職業別にO*NETデータを注視しながら、職務内容、業務、作業活動に特に注意を払って、オフショアリングの可能性の明らかに主観的な2桁の指数を各職業に割り当てる一方で、Jensen and Kletzer (2005)は、標準化され、測定可能なO*NETに基づいた、純粋に客観的な格付けを作成した。両方のアプローチ共に、難点がある。主観的な判断はほとんど複製可能ではなく、結果的に研究者がある特定の信念に従って、データを無意識に不正操作してしまう可能性がある。客観的な格付けは、もう一方で、そのような欠点の心配はないが、使用している変数の信頼性によって制限される。この段階では、O*NETデータが、職業のオフショアリングの可能性あるいは自動化される可能性を測定するために集められなかったことに注意すべきである。従って、Blinder (2009)は、O*NETを使用した客観的なオフショアリングの可能性の格付けを作成するための過去の試みが、いくつかの疑わしい結果を生み出していたことを発見する。その疑わしい結果とは、データ入力、電話オペレータ、請求書作成事務のような職業を、実質的にオフショアリングできない業務として分類している一方で、最もオフショアリング可能な職業に弁護士と裁判官を格付けしてしまうというようなものであった。
 そういった欠点をなんとかするために、我々は、2つの下述するアプローチを組み合わせ、それらに基づいて築く。1つ目は、MLの研究者のグループと共に、我々は、自動化できるものを1、自動化できないものを0と割り当て、主観的に70職種をラベル処理した。そして、オックスフォード大学エンジニアリングサイセンス部でのワークショップを利用し、幅広い領域の業務における自動化の可能性を調査した。我々のラベルの割り当ては、注視したO*NET業務や職業別職務内容に基づいていた。この情報は、職種に渡って標準化されたものと対照的に、各職業に特有なものである。職業のラベル処理は、「この仕事の業務は、人工コンピュータ制御機器によって実行されるよう、ビックデータの利用可能性に応じて、十分に仕様決めできるか」という質問の答えによって行われた。それゆえ、我々は、すべての業務が自動化されると考えた、完全に自動化される職業に1だけを割り当てた。我々の知っている限りでは、業務の単純化の可能性が、場合によっては、現在自動化できない業務を自動化するかもしれない。格付けは、我々がほぼ自信がある職業だけ割り当てられた。
 2つ目は、我々は、コンピュータ化に対する明確なボトルネックに対応する客観的なO*NET変数を使用する。すなわち、我々は、それを行うのに必要な認識と操作、創造性、社会的知性のレベルを表す変数に関心を持つ。表1にあるように、我々がそういった特性を表す9つの変数を特定した。そういった変数は、O*NET調査から由来しているもので、回答者に重要な一組として、「重要度」と「レベル」を伴った、多角的な尺度を与えている。我々は、職業の業務を行うためにコンピュータ制御機器に要する能力についての具体例を明確化することに一致する「レベル」評価に頼っている。例えば、 「手先の器用さ」の特性に関して、低度(レベル)は、「照明用ソケットに照明バルブを回し入れる」であり、中等度(レベル)は、「できるだけ速く、木箱にオレンジを詰める」であり、高度(レベル)は、「手術器具を使っての心臓切開手術」として類型化する。これは、私たちに、コンピュータ制御機器が特定の職業を遂行するのに必要とする「手先の器用さ」のレベルの表示度数を与えてくれる。除外は「窮屈な作業スペース」の変数であり、それらは、体型化されていない作業の頻度を測定している。
 それゆえ、手短に言えば、職業のラベル処理によって、我々は、Blinder(2009)と似た方法で職業の自動化を具体的に測定するために、O*NETデータが集められなかったという問題に対処する。加えて、我々は、客観的なO*NET変数を使用することで研究者による、いくつかの主観的なバイアスを軽減し、潜在的なラベル処理の間違いを正す。全702職種を70だけに格付けした事実は、我々が高い自信を持つコンピュータ化に格付けされる職業を選び、主観的なバイアスが分析に影響を及ぼすリスクをより減らす。この業務に関して、適切なアルゴリズムを作成するに当たって、我々は、確率的分類に取り掛かる。

図表1 コンピュータ化のボトルネックの表示度数としての役割を果たすO*NET変数

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Ⅳ.B. 分類方法
我々は、初めに702職種の自動化の可能性に対する主観的評価の正確性を検討する。分類に関して、我々は、変数の以前見られなかったベクトルを与えられたラベル確率を与えるアルゴリズムを作成する。分類の専門用語において、特徴ベクトルからO*NET変数は、▁x∈R^9 で表す。O*NETはそれゆえ、702の完全なデータセットにそのような特徴ベクトルを提供する。コンピュータ化できるラベルは、クラスと呼ばれ、y∈{0,├ 1}┤で表す。我々の問題に関して、y=1(true)は、我々がコンピュータ化できるとして、▁x∈R^9を含む関連した9つのO*NET変数で表した職業をラベル処理したことを示す。我々の訓練データは、D=(X,y)で、そこで、X∈R^(70×9)は、変数の行列であり、▁y∈{0,├ 1}┤^70は関連したラベルを与える。このデータセットは、yが▁xの関数として、どのように変化するのかについての情報を含む。つまり、仮説例として、それは全ての職業がx_1>50,y=1である可能性がある。確率的分類アルゴリズムは、クラスレベルy_*=1を持っている特徴▁x_*を有して、新しく分類されていないテスト基準(データム)の確率P(y_*=1│▁x_*,X,▁y)に答えるために、訓練データにおけるパターンの存在を活用する。
 我々は、判別関数として知られているf:▁x↦Rの潜在的関数の導入によって、確率的分類を達成する。テストポイント▁x_*で判別f_*の値を与えて、我々はクラスラベルに関する確率が以下のロジスティック回帰によって与えられると仮定している。

図(3)


f_*>0、y_*=1は、y_*=0より起こりえる。我々の適用に関して、f_は、連続値「自動化の可能性」の変数として考えることができる。つまり、値が高ければ高いほど、コンピュータ化の確率も高くなる。
 我々は、判別関数f_に対して、継続解析の最高のパフォーマンスを使用して、3つの異なるモデルをテストする。最初に、f,f(▁x)=▁w^⊺ ▁x の線形モデルを採用している、ロジスティック回帰を行う。そこでは、知られていない重みづけ▁w^がしばしば、訓練データを踏まえて、確率を最大にすることで推測される。この単純モデルは、特徴と特定の値をとるクラスの確率の間の単純、単調な関係を必然的に示す。より豊かなモデルは、ガウス過程分類子によって提供される(Rasmussen and Williams, 2006)。そのような分類子は、ガウス過程(GP)を伴う潜在的関数fをモデルとして作る。つまり、ノンパラメトリック確率分布関数である。
 GPは、有限の部分集合X(Xのような)において、考えられる関数値にわたる分布が多変量ガウス分布であるような関数にわたる分布f:X→Rとして定義される。関数f(▁x)に関して、部分集合▁x⊂Xにおいて、その値▁fにわたる事前分布は、共分散行列Kによって完全に規定される。

図(4)


共分散行列は、共分散関数κ:X×X↦Rによって生み出される。つまり、K=κ(X,X)である。GPモデルは、κの選択によって表される。それゆえ、我々は、累乗二次方程式(exponentiated quadratic)と有理二次方程式(rational quadratic)を考慮する。P(y_*=1)=1/2が十分に訓練データから離れているという仮定をエンコード化して、ゼロ平均関数を選択したことを記す。訓練データDを与える時、我々は、入力▁x_*での関数値f_*についての予測をするためにGPを使用する。この情報で、我々は、以下の予測方程式を作成した。

図(5)


その中の

図(6)

図(7)


ラベル後部のp(y_*│▁x_*,D)の推測は、ロジスティック回帰(3)の非ガウス分布の形によって複雑になる。効果推定のために、我々は近似期待伝播(Expectation Propagation)アルゴリズムを使用する(Minka,2001)。
 我々は、我々のデータにおいて、GPML のツールボックス(Rasmussen and Nickisch, 2010)を使用して、3つのガウス過程分類器のテストを行い、累乗二次方程式(exponentiated quadratic)、有理二次方程式(rational quadratic)、線形共分散を中心に構築した。後者は、前に重み▁wをつけられたガウス分布を伴うロジスティック回帰と同等である。そういった分類器を有効にするために、我々は、半分の有効データDの減らされた訓練セットをランダムに選択した。そして、残りのデータは、テストセットを形成した。このテストセットにおいて、我々は、アルゴリズムの分類が2つの指標に従ったラベル処理にどの程度見合っているかどうかを評価した(Murphy (2012)参照)。ROC(受信者動作曲線)下面積(AUC)は、完全な分類器に関しては1と同等であり、完全に無作為な分類器に関しては1/2であり、また対数尤度は理想的に高くなければならない。この実験は、無作為に選ばれた訓練セットに対して、繰り返し、平均結果を図表Ⅱに表す。累乗二次方程式(exponentiated quadratic)のモデルは、3つの中で最良なパフォーマンスを回帰する(ロジスティック回帰に対応する線形モデルより明確にパフォーマンスが優れている)。それゆえ、残りのテストでは選択された。約0.9のAUC得点は正確な分類を示している。つまり、我々のアルゴリズムは、職業がコンピュータ化できたかどうかを明記するラベル処理を、成功裏にどうにか生み出した。これは、我々の主観的な判断が体系的に一貫してO*NETに関連していることを我々のアルゴリズムが立証したことを表している。
 有効な我々のアプローチで、我々は、702全ての職種のコンピュータ化の可能性を予測する分類を続けて使用する。この目的に対して、我々は、職業が本当にコンピュータ化されるか否かを示す、新しいラベル変数zを導入する。これは、将来において明確ではない時点において、職業がコンピュータ化する時だけ判断できる。我々再度、ロジスティック対数尤度をとる。

図(8)


我々は、今回のラベル処理yが、未知の真のラベルzのノイズが破損したバージョンであると暗に仮定する。我々の動機は、コンピュータ化の今回のラベル処理がノイズ測定のように必然的に扱われるべきであるということである。それゆえ、我々は、自分たちがラベリングした、コンピュータ化される仕事が決して信頼できるものではないということを認識している。我々は、X_*∈R^(702×9)を702全ての職種に対するO*NET変数の行列として定義する。この行列は我々のテストの特性を示す。我々は最後の実験を行う。訓練データDを与え、70のラベル処理した職業を構成して、我々のテスト特性X_*に対して、▁z_*を予測することを目標とする。このアプローチによって、まず最初に、残りの632職種に対する予測を最も確実にするために、70の職業の特性を使用することができる。さらに、我々のアルゴリズムは、誤っている可能性のあるものを正すために、大量データから学んだ傾向とパターンを使用する。具体的には、アルゴリズムは、変数の関数として、自動化の可能性の円滑に変化する確率的評価を提供する。我々のガウス過程分類器に対して、この関数は非線形であり、訓練データ固有のパターンに柔軟に適応していることを意味している。我々のアプローチは、それゆえ、より複雑で非線形な変数間の相互関係を可能にする。つまり、例えば、おそらく、一つの変数が他の変数の値が十分に大きくない限り、重要ではない。
我々は、p(▁z_*│X_*,D)をコンピュータ化の可能性としてこれから報告する(詳細の可能性の格付けは付録を参照)。図表Ⅱは、この可能性が選択した9つのO*NET変数に非線形に関連していることを示す。

Ⅴ.21世紀の雇用
このセクションでは、我々は、コンピュータ化のリスクにある仕事の未来の可能性と、関連する労働市場の成果を調査する。業務モデルは、MLにおける最近の発展が、 パターン認識によって定型化できる業務での労働投入の総需要を減らす一方で、コンピュータ化の影響を受けない業務を行う労働の需要を増加させることを予測している。しかしながら、我々は、労働市場の職業構成における未来の変化を予測する試みはしていない。2010年から2020年のBLS職業雇用予測は、歴史的な人員パターンに基づいて、主要な職業にわたる米国の純雇用成長を予測しているが、開発の初期段階のテクノロジーだけを推測している。これは、テクノロジー発展の影響に関する歴史的データが入手不可能なことを意味する 。我々は、それゆえ、2010年に存在している多様な職業におけるコンピュータ化の影響に焦点を当てている。したがって、我々の分析は、未来のコンピュータ化による代替の影響に制約されている。
 図表Ⅲに示したように、予測された雇用への影響を見ると、コンピュータ化の可能性(0.7と0.3の確率で閾値化)に応じて、高い、中間、低いの3つのリスクに職業を分けられる。我々の評価によれば、総米国雇用の47%が高いリスクのカテゴリにあり、これは関連する職業が不特定な年数、おそらく10,20年内で潜在的に自動化される可能性があることを意味する。コンピュータ化の可能性の軸が、高い可能性にある職業が比較的早くコンピュータ資本によって代替されるような、大まかな時間軸と見ることができることに留意されたい。今後数十年にわたって、コンピュータ化の範囲は、上記の自動化に対するエンジニアリングボトルネックが克服される速度によって決定されるだろう。このような観点から見ると、我々の調査結果は、「技術的プラトー」によって分けられた、コンピュータ化の二つの波として解釈できる。第一の波では、運輸、物流業の労働者の大半が、事務や行政支援労働者、製造業の労働者の大半と共に、コンピュータ資本によって代替される可能性があることがわかる。コンピュータ化された車がもうすでに開発され、センサのコスト削減によって、高度なセンサを搭載した車両がますますコスト効率が高まるにつれて、運輸、物流業の自動化が文献に記載されたテクノロジーの開発に沿うものになる。さらに、ビックデータのアルゴリズムはすでに、情報の蓄積や情報へのアクセスに依存している領域に急速に参入しており、事務職や行政支援職がコンピュータ化の対象になるのは同様に直感的にわかる。製造業のコンピュータ化は、産業ロボットが製造業での大半の定型作業を行ってきたような、過去数十年にわたって観られた傾向の継続を単純に示す。産業ロボットが高度な感覚や器用さを伴うような、より進化することで産業ロボットは、非定型手仕事業務の幅広い範囲を行えるようになるだろう。テクノロジーの能力の観点から見ると、製造業で幅広く残る雇用は、それゆえ、今後数十年にわたって姿を消していくだろう。
 最も驚いたことは、サービス業、販売業、建築業における雇用の大部分が、コンピュータ化される可能性が高いことを示したことである。さらに、そういった調査結果は、最近記載されたテクノロジーの発展と大きく一致する。1つ目に、個人的な家事サービスロボットの市場はすでに年間約20%の成長がある(MGI,2013)。可動性や器用さを含んだ人間の労働の比較優位が時間と共に消えるに従って、サービス業における労働の代替のペースはさらに増大する可能性がある。2つ目に、社会的知性を高く求められる可能性のあるサービス業が、近い将来、コンピュータ化の対象になることが直感に反しているように思えるが、高いリスクにある販売業は、例えば、現金出納係、計算係、レンタル事務員、電話販売員などを含んでいる。そういった職業は相互作用的な業務を含んでいるが、必ずしも高い社会的知性は必要としない。我々のモデルはそれゆえ、職業カテゴリ内での個々の職業を区別することにおいて、うまくいっているように思える。3つ目に、プレハブ法は、工場での制御された状況下で行われる建築作業において割合を伸ばし、作業におけるバラツキを部分的に解消している。この傾向は、建築作業のコンピュータ化を促進する可能性がある。
 要するに、我々の調査結果は、MLにおける最近の発展が、職業の広い範囲にわたって、雇用の大部分を近い将来、リスクに晒すことを示唆している。我々の調査結果に従うと、しかしながら、コンピュータ化を妨げるエンジニアリングボトルネックが根強く残るために、この自動化の波に続いて、コンピュータによる労働の代替の低迷が起こるだろう。雇用の中等度のリスクカテゴリにわたるコンピュータ化の比較的緩いペースは、それゆえ、労働の代替を引き続き促進するような漸進的な技術的改善を伴う、技術的プラトーとして部分的に解釈できる。具体的には、中等度リスクカテゴリの職業のコンピュータ化は、主に認識と操作上の課題次第だろう。これは、図表Ⅲからも明らかであり、「手先の器用さ」「指先の器用さ」「窮屈な作業空間」の変数が、中等度リスクカテゴリにおいて比較的高い値を示していることがわかる。実際に、最近のテクノロジーの発展に伴って、より高度なパターン認識ができても、人間の労働は、より複雑な認識や操作を要求する業務においてまだ比較優位を保っている。しかし、漸進的な技術改善を伴って、認識と操作上の業務における人間の労働の比較優位は次第に消えていくに違いない。これは革新的な業務の再構築、認識上の課題へのMLアプローチにおける改善を求め、さらに反復作業と規格外品の処理間でのバリエーションに関連する操作上の問題を克服するためのロボットの手先の進歩を求めている。中等度リスクカテゴリに大きく制約され、高い認識と操作上の能力を求める、設置業、保守業、修理業における漸進的なコンピュータ化は、この結果で明らかになった。
 我々のモデルは、コンピュータの第二の波が主に、創造性や社会的知性に関連するエンジニアリングボトルネックを克服するかどうかにかかっていることを予測する。図表Ⅲに示すように、「美術(ファインアート)」「独創性」「交渉」「説得」「社会的洞察力」「他者への支援とケア」の変数は、低いリスクカテゴリにおいてすべて比較的高い値を示す一方で、「手先の器用さ」「指先の器用さ」「窮屈な作業空間」の変数は、比較的低い値を示す。それゆえ、要するに人間の発見的問題解決の知識を必要とする万能型職業や斬新なアイディアや技能の開発を含む専門的職業は、最もコンピュータ化の可能性が低い。高い社会的知性を求められる万能型職業の典型的な例は、O*NETでは最高責任者の業務である。それには「問題の議論、活動の調整、問題解決のために役員、組織職員、スタッフと話し合うこと」や「交渉、契約承認、協定」などが含まれる。我々の予測はそれゆえ、社会的知性を必要とする万能型業務に集約されている多くの管理、ビジネス、ファイナンス業は、ほとんど低いリスクカテゴリに制約されると直感的に捉える。芸術やメディア業と同様に、教育、ヘルスケアの多くの職業で同じことが当てはまる。例えば、俳優のO*NET業務は「体の動きや表情、ジェスチャーを使って、感情、行動、状況のユーモラスでシリアスな演技を行う」「役作りのために、お互いの関係性や台本にある特徴について学ぶ」を含む。そういった業務が最高責任者の業務とはかなり異なる一方で、同様に、人間の発見的問題解決の深い知識を必要とし、社会的知性を含む、業務の幅広い範囲が近い将来コンピュータ化されそうにもないことを意味している。
 一方で工学や科学の仕事のコンピュータ化の可能性が低いのは、高い創造的知性が大きく必要とされるためである。例えば、数学者のO*NETでの業務は「数理科学を進歩させるために、現存の数学的原理間の新しい関係性や新しい原理を作成する」「代数、幾何学、確率、論理のような伝統的な領域における数学知識を広げるような研究を行う」を含む。それゆえ、コンピュータが科学や工学の領域に参入するのも明らかであり、我々の予測は、創造的科学や工学の職業におけるコンピュータと労働の強い相補性を明確に示唆している。それは、長い目で見るとそういった職業において、コンピュータが完全に労働者の代替を行う可能性があるかもしれないが。我々のモデルの予測が、同じ職業カテゴリ内にあっても知的作業の自動化において見られる技術の傾向に際立って従うことに留意する。例えば、パラリーガルや法律アシスタントは、すでにコンピュータによって代替されており、高いリスクカテゴリにあるが、同時に、法律アシスタントからの労働投入に頼っている弁護士は低いリスクカテゴリにある。それゆえ、弁護士の業務を完全に自動化するには、創造的、社会的知性へのエンジニアリングボトルネックを克服しなければならず、しばらくは法律検索のコンピュータ化は弁護士の業務を補完するに止まる。
 最近のテクノロジーの進歩が未来の雇用に関してどのような意味を成すのかについて全体像を把握するのに、コンピュータ化の可能性によって、職業の平均中央賃金を描く。我々はスキルレベルと同様に行い、各職業内での学士号を持つか、あるいはより高い教育を受けている労働者の割合によって測定した。図表Ⅳでは、賃金と受けた教育の両者共に、コンピュータ可能性との強い負の相関が見られた。この予測が、中間層の職業の空洞化を伴う高給と低給の職業での雇用成長がある、現在の労働市場の二極化傾向での切り捨てを暗に示していることに留意する。過去数十年にわたるパターンである中間層の職業の需要を減らすことよりもむしろ、近い将来コンピュータ化は低いスキル、低給の仕事を主に代替するだろうと予測する。反対に、高いスキル、高い賃金の職業はコンピュータ資本によって最も影響を受けにくい。
 我々の調査結果は、訓練データを形成した70職種の選択に妥協しなかった。これは、図表Ⅱで表された実験結果によって確認された。つまり、訓練データの半分に向けたGP分類器は、100の異なる区画にわたって、他の半分のラベルをはっきりと正確に予測することができた。 そういった予測が訓練セットの多くの可能な区画に関して正確であることは、このセットのわずかな変更が全体のデータセットにおいて、実質的に異なる結果につながる可能性が低いことを示唆する。

Ⅴ.A.欠点
 我々の予測が、コンピュータ制御された設備が行うことができるとする業務についての前提を広げていることに基づいていることに留意されたい。それゆえ、我々は、テクノロジーの能力の観点から、年数が明確でない状態での潜在的にコンピュータ資本によって代替されうる雇用の割合を評価することに焦点を当てている。どれだけ多くの職業が実際に自動化されるかについて調査しようとしたものではない。実際のコンピュータ化の範囲や速度は、説明されないままのいくつかの追加要因次第だろう。
 1つ目に、労働省力の発明は、安い労働の利用が不十分か、または資本価格が比較的高かった時飲みに採用されるのかもしれない(Habakkuk,1962)。我々は、未来の賃金水準、資本価格、労働不足についての説明はしていない。そういった要因が我々の予測のタイムラインに影響を及ぼす一方で、仕事は不十分な要因ではなく、長い目で見ると、賃金水準は資本価格と比較して増加し、コンピュータ化は次第に有益になることを示す(Acemoglu,2003参照)。
 2つ目に、規制上の懸念や政治的能動主義は、コンピュータ化の過程をスローダウンするかもしれない。例えば、カルフォルニア州やネバダ州は、現在、運転手のいない車を許可するために法律を変更している途中である。多様な技術に関連して、他の州でも同様な段階が必要だろう。法律制定の遂行の範囲や速度はさらに、テクノロジーの進歩への大衆の承認と関係してくる。テクノロジーの進歩に対する抵抗は産業革命以降、あまり一般的ではないが、テクノロジーによる変化に対する最近の抵抗例もある。我々は、法律制定の過程やテクノロジーの進歩に対する大衆の承認やそれに伴うコンピュータ化の速度について予測をするのは避ける。
 3つ目に、テクノロジーの進歩について予測することは難しいことで有名である(Armstrong and Sotala, 2012)。このために、我々はMLやMRにおける近い将来でのテクノロジーの飛躍的進歩に焦点を当て、コンピュータ化に対する多様なエンジニアリングボトルネックを克服するのにかかる年数についての予測は避ける。最終的に我々の確率評価は、完全に自動化される職業の見込みについて述べているために、人間の労働が他の業務を行う時間を純粋に自由にした業務のコンピュータ化から生じる職業内変化を捉えていない。雇用における生産性上昇の影響が職業や産業にわたって変わることは明確ではあるけれども、我々はそのような影響は調査しようとしていない。

Ⅵ.結論
コンピュータ化が、明確に規則に基づいた作業を含む定型業務に歴史的に集約されてきた(Autor,et al.,2003;Goos, et al.,2009;Autor and Dorn,2013)一方で、ビックデータに関するアルゴリズムは、現在、パターン認識を頼りにしている領域に急速に参入し、広い範囲の非定型認識業務での労働を簡単に代替することができる(Autor, et al.,2003;Goos, et al.,2009;Autor and Dorn,2013)。加えて、高度なロボットは高度なセンサや器用さを得て、幅広い範囲での手仕事業務を行えるようになっている(IFR, 2012b; Robotics-VO,2013; MGI,2013)。これは産業や職業にわたる仕事の質を変える可能性がある。
 本稿では、我々は以下のような質問を行う。:現在の職業でそういったテクノロジーの発展の影響をどのくらい受けるのか。これを知るために、我々は斬新な方法論を遂行し、702職種に関するコンピュータ化の可能性について評価する。そういった評価に基づいて、我々は、労働市場の結果における未来のコンピュータ化の予測される影響を調査し、リスクにある職業の数とコンピュータ化される職業の可能性と賃金と受けた教育間の関係性についての分析を第一目的とする。
 我々はコンピュータ化の可能性に応じて、リスクが高い、中間、低いの3つに分けている。我々は、実際に自動化される職業の数を評価しようとはせず、年数を特定しない状態で潜在的な職業の自動化に焦点をおく。我々の評価では、米国の総雇用の約47%が高いリスクカテゴリにある。我々はそれらをリスクにある職業として呼ぶ。我々が予測する職業は比較的すぐに自動化されるに違いない、おそらく今後10年か20年にわたって。
 我々のモデルは、運輸や物流業におけるほとんどの労働者が、事務員や行政支援者の大半や製造業の労働者と共にリスクに晒されると予測する。そういった調査結果は、文献に記載されているような最近のテクノロジーの発展と一致する。最も驚くことは、過去数十年にわたる米国の多くの雇用成長を起こしたサービス業(Autor and Dorn,2013)における雇用の大半が、コンピュータ化の影響を受ける可能性が高いことである。この調査結果に対して後押しする事実は、サービスロボット市場における最近の成長(MGI,2013)と動作や器用さを含む業務における人間の労働の比較優位が次第に減少していることである(Robotics-VO, 2013)。
 最後に、我々は、賃金と受けた教育が、コンピュータ化の可能性と強い負の相関を示すエビデンスを提供する。この調査結果は、熟練工の相対需要で深まる資本の影響においての19世紀、20世紀、21世紀間の不連続性を示唆している。19世紀の製造業のテクノロジーは、業務の単純化を通して、熟練工を大幅に代替し(Braverman, 1974; Hounshell,1985; James and Skinner,1985; Goldin and Katz,1998)、20世紀のコンピュータ革命は、中間層の職業を空洞化させた(Goos, et al., 2009; Autor and Dorn, 2013)。我々のモデルは、コンピュータ化が主に低いスキルで低賃金の職業に制約される現在の労働市場の二極化傾向の切り捨てを予測する。我々の調査結果はそれゆえ、技術競争が優勢になると、低いスキルの労働者は、コンピュータ化される可能性のない業務、例えば、創造的、社会的知性を求めるような業務に配置換えに成ることを示唆している。競争に勝つ労働者に成るには、創造的、社会的スキルを習得しなければならないだろう。

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