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お稲荷さんのご縁日「初午祭」とはどんなお祭り?

皆様にはそれぞれ、日頃からお世話になっている氏神さまや、よく足を運ぶ馴染みの神社があることでしょう。
そこで質問です。その中に「稲荷神社」「稲荷社」、通称「お稲荷さん」と呼ばれている神社がありませんか?
もし心当たりがある方がいらしたら、今回のお話は特に必見です!

全国には数え切れないほどの「稲荷神社」が存在しているので、きっとお住まいやお仕事先などの半径数キロ圏内に、必ず一社は見つけられるのではないか……というくらい、日本人にとって身近な神様かと思います。

さらには、「稲荷神社」といった名前がついていなかったとしても、その神社の摂社末社(境内に本殿とは別にお祀りされている神様のお社)をよく調べていただくと、お稲荷さんがお祀りされていることも非常に多いです。

この記事では、そのお稲荷さんにとって大切な祭日である「初午祭(はつうまさい)」について、詳しくご紹介していきましょう!


お稲荷さんは、どんな神様?

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「お稲荷さん」という神様の通称は、神道にあまり詳しくない方であっても、一度はどこかで耳にしたことがあるのではないでしょうか。

私たちは一柱の神様を複数のお名前で呼ぶことが多いものですが、この「稲荷神(いなりのかみ)」という神様、別名で「宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)」「倉稲魂命(うかのみたまのみこと)」とも呼ばれています。

「お稲荷さん」と聞くと、真っ先に動物の狐を思い浮かべる方が多いはず。
それもそのはずで、稲荷神社では狛犬の代わりに「狛狐」と呼ぶべきか――スラっとした姿の狐の石像を目にしますよね。

そのイメージで、お稲荷さんが狐の姿をした神様だと勘違いをされている方もよくいらっしゃるのですが、狐は「ご眷属(けんぞく)」と言って、神様にお仕えしている動物のこと。

神様自体は、「稲が生る」という言葉が訛って「稲荷」になったとも伝えられ、稲の精霊が神格化した「五穀豊穣」を司る神様です。

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その他にも、「商売繫盛」「諸産業繁栄」といった御神徳もあり、昔は「屋敷稲荷」といって、家の敷地内にお稲荷さんをお祀りしている家庭も、決して少なくありませんでした。

つまり、それほど人々のくらしにとって非常に身近な「生活神」として、古くから大切にお祀りされてきた神様だということですね。

現在は、それらが転じて「家内安全」「開運招福」や「芸能上達」などと言った御神徳も挙げられるようになっています。
ひとえに「どんなお願い事でも網羅しているのではないか」と思えるほど、私たちの身近な味方になってくださる神様だと言えるかもしれません。


初午祭とは、どんなお祭り?

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「初午祭」とは、その五穀豊穣の神様――お稲荷さんにとって、とても大切なご縁日(えんにち=ゆかりの日)のことを指しています。

日本には、安産祈願で有名な「戌の日」や11月に酉の市が行われる「酉の日」など、年だけでなく日にちにも、十二支の動物を当てはめる独自の暦の文化があります。

12日に一度巡ってくるその中に、もちろん「午の日」もあるわけですが、2月の最初に迎える「午の日」のことを「初午」と言って、お稲荷さんが祀られる神社の多くで感謝とともに祭祀を執り行う大事な日なのです。

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そのお祭りの由来は、稲荷神社の総本宮とされている京都の伏見稲荷大社で、かつて2月の午の日に稲荷山へ稲荷伸が降臨されたという言い伝えが元になっているようです。
そこで、伏見稲荷大社はもちろん、各地に存在する数多くの稲荷神社でも、2月頭の午の日には「初午祭」が行われるようになりました。

この季節はちょうど、旧暦において農業の事始めの時期と重なっているため、その年の五穀豊穣を祈るという意味でも、稲作文化を繋いできた日本人には特に大切なお祭りだったのです。


お稲荷さんは赤いイメージ?

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ところで、お稲荷さんと言えば、なんとなく赤い色――正確には朱(しゅ)色のイメージがありませんか?

伏見稲荷大社では、この朱色が稲荷大神様の御神徳である「豊穣」を表す色ということで、多く取り入れられたのだとか。
鳥居や社殿が朱塗りになっていることも多いですし、よくご眷属の狐さんが朱色の前掛けをつけていますよね。

初午祭でも、稲荷神をたたえる朱色の幟(のぼり=旗)がたくさん奉納されています。
ちなみに、初午祭の御奉納では御神酒はもちろん、ご眷属の狐さんの大好物と言われる油揚げがお供えされることも多いです。


2021年の初午はいつ?

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それでは、2021年の「初午」はいつになるのでしょうか?
今年は、2月3日がその日に当たっています。

2月3日は通常「節分の日」という認識がありますが、2021年は立春が一日ずれて2月3日にやってくる珍しい年。そのため、その前日である2月2日が節分祭になるわけです。
2022年以降は、しばらくの間また2月3日が節分で2月4日が立春になります。

「初午」はもちろん、それとは関係なく日にちが毎年変わりますので、2021年以降の初午についても、むこう5年ほどご紹介しておこうと思います。

➤2021年 2月3日(水)
➤2022年 2月10日(木)
2023年 2月5日(日)
2024年 2月12日(月)
2025年 2月6日(木)


くらしの中の「感謝」を思い出そう

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稲荷神社のお祭り「初午祭」からも解るように、神社におけるあらゆる祭祀は、人々の「祈り」と「感謝」を神様に捧げるという意味が込められています。

お稲荷さんの御神徳である五穀豊穣も、食に関する自然からの恵みをしっかりと受け取ることができるよう、真摯に捧げてきた祈りの心からすべてが始まっているのでしょう。

今は日本で生きる多くの人が、何不自由ないくらしをしています。
しかし、そんな私たちも変わることなく自然から恩恵を授かり、平和な日常をたくさんの神様から授かっています。

こういったお祭りを通じて、ぜひそのことを思い出してみませんか?
身近な場所にお稲荷さんがある方は神社をご参拝いただき、日頃の何気ない幸せに対しても、感謝をお伝えしてみてくださいね!


文/巫女ライター・紺野うみ


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