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正しい呼吸がなければ美しい姿勢は存在しない~不適切な呼吸を重大インシデントに~

私たちは、この世に誕生した瞬間から死ぬ瞬間まで一度たりとも呼吸をやめない。

その回数は1日に約22,000回、1分間だと15回前後だ。

ではここで考えてみよう。もし1回1回の呼吸のやり方が適切なやり方でなかったら?

1日22,000回もの吸って吐いてという“動作”が、何年もの間ずっと異常なまま行われ続けたらいったい私たちの体には、どのような悪影響があるのだろうか?

Karel Lewit氏が言うように、「呼吸が理想的でなければ、その他全ての問題(姿勢や歩き方など)は改善しない」のである。

ここではそう断言できる理由と、呼吸と姿勢の切っても切れない蜜月な関係性について解説していく。

不適切な呼吸という重大インシデント


“1件の重大な事故の裏には29件の軽微な事故と300件のニアミスがある”

これは『ハインリッヒの法則』といって1931年に提唱されたものだ。

※Herbert Wilhelm Heinrich

また、重大なアクシデントに行き着く前に引き起こされていた問題や出来事をインシデントという。(ハインリッヒの法則でいう29件の軽微な事故はインシデントと解釈できるだろう)

何年か前に、新幹線のぞみ号の台車に亀裂が入っていたと話題になったことで、耳にした人もいるのではないだろうか。

これは政府によって、『重大インシデント』に認定された。

私は今回、この概念を呼吸に当てはめようと企てている。

すなわち、猫背・ストレートネック・O脚・骨盤の歪み・肩こり・腰痛・腱鞘炎・ヘルニア、さらには肥満・ヒップダウン・バストダウン・下腹ポッコリなどなどなど...

これらの体の問題を現在抱えている人は、その問題に行き着く随分と前から不適切な“呼吸”を繰り返していたと考えられるのだ。

そういった意味で不適切な呼吸は、未来の美と健康にとって重大インシデントと認定して然るべきなのである。

ではなぜ呼吸なのだろうか?

どのようにして呼吸が、そこまで多くの問題を引き起こすのだろう?

不適切な呼吸が及ぼす悪影響|諸悪の根源

この答えは複雑性の原理に当てはまる。

要するに、様々な要素が相互に作用し合い、さらに階層をなして絡み合うため単一のストーリーに断定することはできない。

というか断定する意味がない。

(人体のほぼ全ての問題は、その問題を細かい要素に分解していけば単一の原因に行き着くという還元主義的な手法は通用しない。全体は個の総和を超える(=複雑性)ということだ。)

しかし、このままではこの記事が終わってしまうので、不適切な呼吸が及ぼす悪影響のうち最も多くみられるパターンを紹介しよう。

まず注目したいのは、全身何百種類とある筋肉の中で最も重要な筋肉のうちの一つである“横隔膜”についてだ。

横隔膜の重要な機能に呼吸があるのは周知の事実ではないだろうか。

そしてもう一つの重要な機能に腹圧を保つことによって姿勢を維持するというものがある。

呼吸が浅かったり、通常より回数が多い人は、この横隔膜が正しく機能していないと考えてもらっていい。

結果として必要な腹圧が保てず、姿勢は悪くなり、骨盤も広がって歪むのだ。

次に、不適切な呼吸は肩と首と腰の筋肉を過剰に使うことを促すという悪影響もある。

こちらは予想通り、肩コリ首コリ、腰痛の原因になり得るだろう。

また、呼吸をする度に肩の筋肉を過剰に使っていると、首の筋肉が頭を支える役割を果たすことができなくなることが分かっている。

(専門的に解説すると、首の筋肉(斜角筋や肩甲挙筋など)が頭部を支える役割のことをワイヤーアクションと言い、この機能を発揮するには各筋の遠位側である肩側がフィックスポイントになる必要がある)

その状態が慢性化すればどうなるだろうか?

そう、頭が前方に突き出しくるはずだ。(=頭部前方位姿勢)

そしてそれが定着すると、ストレートネックや頭痛、眼精疲労、二重あごの原因となる。

このように、不適切な呼吸がきっかけとなって引き起こされる体の問題や悩みはまだまだ考えられる。

今あなたが、この記事を読みながら行っている不適切な呼吸がもしかすると将来の何かしらの重大な問題に繋がるインシデントかもしれないのだ。

しかし、たとえすでに重大な問題を引き起こしていたとしても新幹線の事故とは違って“時すでに遅し”ということはない。

だからこそ未然に予防策を講じておいた方がどう考えても賢明だ。

では、呼吸のやり方を正しく行うになどうすればいいのだろうか?

呼吸の為の姿勢VS姿勢の為の呼吸|依存関係


理想的な正しい呼吸を行うには、美しい姿勢が必要不可欠だ。

ん...?

この答えに違和感を感じた人は多いだろう。

先ほど私は、不適切な呼吸は姿勢を悪くすると主張した。(=不適切な呼吸が原因)

今度は、不良姿勢が不適切な呼吸を促すと主張している。(上とは因果の方向が逆になり、不良姿勢が原因となっていることに注目)

いったいどういうことだろうか?

これはいわゆる、“卵が先か、鶏が先か問題”である。

では説明していこう。

ここでの姿勢とは骨格のポジションのことを指すことにする。(アライメントともいう)

特に体幹部の骨格(骨盤、背骨、肋骨)が正しいポジションにない場合(=不良姿勢)、横隔膜と骨盤底筋群がうまく機能できなくなると認識しておくことは重要だ。

横隔膜は先ほど出てきた今回のキーマン。

骨盤底筋群は、骨盤の底をふたしているハンモック状の筋肉たちとイメージしてもらえばいい。

主に膀胱などの内臓を支える役割を持つ。(もちろんそれだけではない)

さらに横隔膜と骨盤底筋群は、協力して活動することがわかっており、腹横筋などのお腹周辺の筋肉も加わって呼吸と姿勢の機能に大きく関わっている。

そして、前者は肋骨に、後者は文字通り骨盤に付着するので、それらの骨格が異常なポジションなままでもこの2つの重要筋が適切に機能してくれると考えるのは少々無理があるだろう。

以上を簡単にまとめると、姿勢が悪いと正しい呼吸が行えなくて、呼吸が不適切だと美しい姿勢が維持できないということになる。

呼吸と姿勢はいつだって大恋愛中なのだ!

まとめ|反社会的発明と私たち


さて、最後に読者の皆様には残念なお知らせをしなければならない。

ここまで裕福で便利な先進的な世界において、真の意味で理想的な呼吸をしている人はほぼいないとも言われてるのだ。

姿勢だって同じような状況だろう。(もはや小学生や中学生などの子ども世代にすら蔓延している社会問題だ)

車、エスカレーター、冷蔵庫、電子レンジ、テレビ、パソコン、スマートフォン、加工食品、保存料、冷凍食品、徒歩圏内どこにでもあるコンビニやさらには出前や宅配サービス...

(私たちの健康に及ぼす影響の全てを考慮すれば、これらはもはや反社会的発明ともいえる)

現在私たち人類は、私たち人類にしか進化させることができなかったその賢い能力によって生み出してきたあらゆる発明によって、新しい重大な問題に直面している。

呼吸と姿勢の問題に対処したければ、腹式呼吸とかヨガとか骨盤の歪みとか姿勢矯正とかを語る前に、もう一段階、階層を下げる必要がある。

この記事の後編では、いま私たちを取り巻く環境やライフスタイルがどのように呼吸を乱すのか解説していく。

もちろん今回示せなかった、不適切な呼吸の改善法もお伝えするつもりだ。


|この記事を書いた神尾健太という人物➤https://wp.me/P9oEaZ-41|

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