水引工芸作品の中に漂う私が影響を受けたジャパニーズカルチャー
こんにちは、紙単衣の水引デザイナー小松です。
連日の訃報をうけて、ご多分に漏れず私も'80年代以降の漫画やアニメ、ゲームで幼少期を豊かに彩ってもらった一人なので、相応の喪失感を抱いています。
そんな中 X(旧Twitter)を眺めて、漫画家さんやイラストレーターさんの多くが、鳥山明先生の作品に感銘を受け、絵を真似し、絵師を目指し、その後に輩出された名作少年漫画のストーリーや描写のレベルが格段に引き上がったという投稿をいくつも目にしました。
私自身は小学校で3年間絵本マンガクラブに入っていたものの、少年漫画誌を手に取る機会は少なく、鳥山先生の絵は手で描いているとは思えないくらい完璧な見る対象であって、自分で真似しよう、近づこうと思ったことが全くなかったので、プロの絵師さんたちが見て鍛錬してきた世界が、いかに当時から私とは違っていたのだろうと改めて知る機会となっています。
では、「創作をする」という点ではどうだろう?と考えると、鳥山先生の作品に限らず、幼少期に好きだったものや日本のこの時代に生きたからこそ影響を受けているものが多少なりともあるな〜と思ったので、今回は自作水引作品の中からうっすら感じられるジャパニーズカルチャー臭の漂う作品をまとめてご紹介します。
1.辰年は漫画『ドラゴンボール』の「神龍」!?
辰年のお飾り用に龍を作る時は、架空の生物であり、金色の巨大な水引龍の作品を工芸館で見たことがあったので、金色や白もいいな〜と思ったのですが、どうしても龍には『ドラゴンボール』の「神龍」のイメージがあって、きっと他の人もそうなんじゃないかな〜と思ったので、意識的に緑色の龍を作りました。
2.卯年は絵本『わたしのワンピース』!?
卯年のお飾り用にうさぎを作る時は、「かわいく作りたい!」という目標がありました。うさぎのキャラクターといえば、ミッフィーやマイメロディー、マロンクリーム、チアリーチャムなど思い浮かぶものがいくつかありますが、私は絵本『わたしのワンピース』が大好きだったので、顔の下に三角形のワンピースを着ているようなバランスを意識して、お飾り全体を仕上げました。
3.寅年はアニメ『タイガーマスク』!?
寅年のお飾り用に虎を作る時は、どんなデフォルメの仕方があるかな〜と迷いつつ決めた形が、結果的にちょっとアニメの『タイガーマスク』っぽかったかもな〜と思っています。世代ではないので傑作選みたいな特番で見たくらいの記憶ですが…どうでしょう?
4.戌年はサンリオの『ポチャッコ』風!?
戌年の2018年年始には、個展を開催して「ポチの袋」という御年賀セットの中に犬ブローチを入れました。何の犬種にしようか迷ったのですが、あまり知見がなくて、他の動物に見えない形がいいな〜と思ったので、自分がかつて好きだったサンリオの『ポチャッコ』を思い出し、ややイメージしています。今調べたら、ポチャッコの犬種は発表されていないのですね。。同じ白黒の『スヌーピー』はビーグル犬なので、ポチャッコももしかしたらそうなのかもしれません。また犬を作る機会には、別の犬種に挑戦したいな〜と思います。
5.猫は『妖怪ウォッチ』の「ジバニャン」似!?
『福猫の袋』は、イラストレーターのTacoさんとコラボ制作させていただいたお祝い袋で、noteでも詳しくご紹介しています。
イラストの先頭にいるハチワレ模様のネコの顔を水引で作りました。実は当初、耳部の色をもっとおめでたい朱色にしていたのですが、なんとなく既視感があって記憶を辿ったところ、『妖怪ウォッチ』の「ジバニャン」っぽい!と気がついて、著作権で何か言われたら嫌だ!と慌てて色味を変更しました。淡い色味がイラストともよりマッチしたので、カラー変更して良かったなぁと思っています。
6.ひな人形はタカラトミー『こえだちゃん』!?
紙単衣ブランドの水引ひな人形を作ろうと考えた時に、自分が愛でながら毎年飾れるお人形にしたいと思って手を動かしていたら、自ずと手乗りサイズで子どもの頃に大好きだったタカラトミーの『こえだちゃん』のサイズ感とそっくりでした。
7.お人形は『ゴレンジャー』or『セーラームーン』!?
ひな人形がとても気に入ったので、季節を問わないお人形を作りたいと思って髪型やドレスを変えながら、5体も作ってしまいました。明確なキャラクター設定はないものの、色合いが『ゴレンジャー』などの戦隊モノっぽいなーと思っていたら、友達に「『セーラームーン』みたい!」と言われました。世代的に「そうかも〜」と私自身も納得してしまいました。
お人形に何か役割を与えたいと、南信州のスイーツ紹介ナビゲーターとしてnoteでも登場しました。
さらに派生して、お人形をモデルにLINEスタンプまで自分で描きました。
8.サンリオ『リトルツインスターズ キキとララ』
星空で有名な長野県阿智村のおみやげ品を作るにあたり、阿智村の親善大使である「リトルツインスターズ キキとララ」のお人形も個人的に作ってみました。髪型が上手く作れなくて人形のできとしてはあまり気に入っていませんが、ペアで並ぶと色合いがそれっぽくて、唯一無二の二人だな〜とサンリオキャラクターの存在感を感じました。
9.漫画・アニメ『ちびまる子ちゃん』
著作権を侵害するといけないので、もちろんキャラクターをしっかり真似て商用することはないのですが、個人的に楽しんで作ることはたまにあります。大人になっても好きな漫画・アニメ『ちびまる子ちゃん』の主人公まるちゃん。髪の毛を作るのが難しかったですが、似ているでしょうか?
10.漫画・アニメ『サザエさん』
水引を結んだ形がサザエさんのヘアースタイルに似ているように見えたので、真ん中に顔を描いてみました。昭和20年代の日本で流行した「モガヘアー」という髪型だそうです。サザエさんに見えるでしょうか?インスタにアップしたら、水引細工をしている方々が一緒に楽しんでくれて嬉しかったです。
11.漫画・アニメ『ドラえもん』
自粛ばかりしていた2020年のゴールデンウィークに電通が出した新聞広告の「ドラえもん STAY HOME PROJECT」で発信された「だいじょうぶ。未来は元気だよ」のメッセージに感動して、思わず広告を模したマスクのドラえもんを作ってしまいました。写真だからそれなりに見えるものの、実は顔が円形でなく、体もないのですが、インスタに載せたら、海外の方からもメッセージをいただき、ドラえもんの人気ぶりを感じることができました。
12.テレビ番組『志村けんのバカ殿様』
前述のドラえもんに続いて、2020年突然の訃報に悲しみが癒えない志村けんさんの「バカ殿様」のマスク姿も作ってみました。特徴的なメイクやカツラ、オレンジの着物の印象、この画像だけで「バカ殿様」とわかってくれる方が多くて、まるでアニメキャラクターのようにアイコニックに作りこまれていたし、みんなの共通認識があって、志村けんさんそしてフジテレビの制作陣の力を思い知りました。
13.きのこは任天堂『スーパーマリオ』から!?
水引きのこブローチをワークショップや手作りキット用に作成しました。身近な「きのこ」と言えば、食用の茶色なのに、赤い傘で作りたくなってしまうのは、かつて楽しんだゲーム『スーパーマリオ』の「スーパーキノコ」やキャラクターの「キノピオ」が赤い頭をしていたからだろうと我が身を振り返ります。そして他の人にも違和感なく受け入れられるのもやっぱり『スーパーマリオ』のおかげなのでは!?と思っています。
さいごに
キャラクターだけでなく、ハートや星などのマークなんかもいつの時代からか、イラスト的に表現された世界の共通認識が生まれていますよね。そして、私はもちろんそれらも水引で作っています。
水引細工は一説によれば飛鳥時代が起源とも言われる古き良き日本の伝統文化。令和時代も御祈願や贈り物へ込める想いは昔と変わらないけれど、時代ごとに生活習慣や娯楽、流行が異なっているのだから、水引を結ぶ行為に創作表現を介入させたり、別の用途を探るならば、時代らしさ、作者らしさが表れて当然。商用とはいかずとも、多くの人と共に楽しめるものをたまには創りたいし、うっすら◯◯っぽさが入っていたら同じ趣味の方に届くといいな〜と思います。
水引は入っていないけれど、工芸の分野で昨年から、ポケモン×工芸展―美とわざの大発見―という企画展が開催されて海外や日本各地を巡回中。ポケモンファンも工芸ファンも、そして職人も楽しめるとてもいい企画だなぁと感心しています。スーパー歌舞伎なんかも新たなお客さんを呼び込んでいる面白い文化の融合ですよね。
稀代の天才による質の高い作品がまた次の秀作を生み出す、受け継ぐ人が自ずと育ち文化が発展し続けるとは、そういうことなんだと近代の漫画業界の変遷を見て思いました。
触れる機会が少ない古典文化も、小規模ながらも時代ごとにそのような進化は起こるはず。私も細々ですが水引工芸を続けていきます。
そして、漫画やアニメ、ゲームの大国にいること自体が、世界も世代も飛び越えて熱狂できる幸せと今一度噛み締めるならば、新しい作品、人気の作品にも触れ続けていた方が幸福度が上がるんだろうな〜と、水引以外のことにすっかり疎くなっている自分を反省しつつ、それでもまた水引を手に取り結びつつ思い直しています。
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