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ウズベキスタン旅行記 #13:ウルグットバザールの包囲網

2019年に訪問したウズベキスタンの旅行記です。


サマルカンドで丸々過ごせる最後の日。
この日は午前中にあらかた見終えており、早いうちに暇を持て余していた。

行くとしたら、時間的に予定から外していたあの場所だろうか。
思い浮かんでいたのは、サマルカンドから車で片道40分程かかる「ウルグットバザール」という大きな市場だった。ここではスザニがたくさん売られているらしい。

しかしガイドブックなどの情報によると、通常は午前中に行くべきらしい。既に時間はお昼近く。ウルグットバザールに午後に行くと何が起きるのだろうか…?

シェアタクシーにて

宿のオーナーに市場に行きたいことを相談すると、近くのシェアタクシー乗り場まで連れて行ってくれた。しかも運転手とも金額交渉をしてくれたおかげで、帰りのタクシーまで手配が完了した。
オーナーは本当に良い人である。。

シェアタクシーの座席は、後部座席の真ん中だった。右にはおばちゃんと膝上に3・4歳くらいの孫。左には若めの男性、前の席はおばちゃんの連れ合いと思わしきおじさんが座っていた。このメンバーと共にウルグットバザールへ向かう。

発車してしばらくすると、前の座席からおじさんが話しかけて来た。おじさんは少し英語が話せるらしい。
日本から来たこと、そしてスザニを買いたくて市場に行くのだと伝えると、市場に着いたらスザニの場所まで案内するよ! と親切な提案を受けた。
「その代わり、たくさん買ってね!!」とのことだったが。あれ、仲間なの??

おばちゃんたちの包囲網

市場にたどり着くと、大量の人と店で溢れかえっていた。

午前中だけ盛り上がるわけではなかったようだ。ものすごい活気である。

あらゆる種類の店があり、一目ではどこにスザニが売られているかが全く分からない。おじさんの提案を受けて正解だった。
ずんずんと市場を進むおじさんに着いていくと、不意に人混みがなくなり、スザニ売り場が出現した。

スザニ売り場は同じエリアに複数のお店が並ぶ形で営業をしていた。
しかし既に観光客は1人もおらず、いるのは暇そうに店番をしているおばちゃんたちのみ。
そしてそこに突如現れた1人のカモが私であった。

おばちゃんたちの初動は早かった。
私を見るや否や、すぐさま営業モードのスイッチが入ったらしく「さぁ、私の店へどうぞ!!」と勧誘合戦が始まった。

おばちゃんたちの圧に押されつつまず手前のお店に入ると、噂通りスザニで溢れかえっていた。

興味を示すと、一枚ずつ丁寧に広げて見せてくれた。
大判のものでも2枚で50ドル程でかなり安い。迷うことなく購入した。

しかし店の入り口を見ると、「次は私の店へ!」と言わんばかりに他のおばちゃんたちが待ち構えていた。
どうやら他の店に入って営業するのは御法度なのか、店内には入らないルールらしい。しかし入り口から中を覗き、私のことを待っているのだ。

そのままおばちゃんの流れに任せて次の店へ……

さらにまた入り口で待ち構えていたおばちゃんに誘導され次の店へ………すごいなこの柄。

1人だけ英語の話せるおじちゃんのお店もあった。これまでの町ではまず見なかったような柄もたくさんある。

唐突に独特な柄のスザニが出てきて笑ってしまった。
個性が強い!!

店に入る→スザニを広げて見せられる→入り口で待ち構えているおばちゃんに連れられ次の店に入る→を繰り返していると、いつの間にか店の外でたくさんのおばちゃんたちに四方八方を囲まれる事態になっていた。囲み取材のようである。

おばちゃんたちは文字通り四方八方から営業をかけてきた。サラウンド音響かのごとく「マダム!」「ミセス!」「カワイイスザニ!」を連呼しつつ、次から次へとスザニを広げて見せてくるのだ。

その中から、気になった鳥柄のスザニを1人のおばちゃんから購入した。
すると、他のおばちゃんたちは「こいつは鳥柄が好きなのか!」と察知し、すぐさま店から各々鳥柄のスザニを持って来て再度囲まれることになった。
ECサイト並みにレコメンド機能が強すぎる。
終わりのないおばちゃん包囲網である。

おばちゃんたちの圧とエンドレスサラウンド音響に朦朧としてきた私は、気がつくと数枚のスザニを購入していた。
さすがに限度はあるだろうと「5ドルなら買う!」というと「OK!」とおばちゃんと言い値でのコールアンドレスポンスができるあたり、もう訳がわからない。どうやったら終わるのだ。

延々と続く包囲網に気が狂った私は、日本語で「もういらないよ〜! イナーフだよ〜!!」と音を上げた。当然伝わっておらず、マダムカワイイスザニ攻撃は終わらないのだが。

しかしそのうちに、最初に入ったお店のお姉さんがおばちゃんたちを叱り始めた。言葉は分からないが、さすがにやりすぎだということだろうか。

叱られてしょぼしょぼと包囲網を解いたおばちゃんたちだったが、お姉さんが見ていない隙に「スザニ?」とチラッとスザニを見せてきたのには笑ってしまった。商魂たくましい。

結論。スザニおばちゃんたちの愛を一身に受けたいのであれば、ウルグットバザールは午後の訪問がおすすめかもしれない。

ウルグットバザールのスザニたち

行きと同じシェアタクシーに乗ると、今回は小学生くらいの女の子2人とおばちゃんというメンバーに変わっていた。
スザニおばちゃんたちの圧にエネルギーを削がれた私はやや疲れていたが、女の子たちがおやつとして食べていたひまわりの種をおすそわけしてくれた。優しい。

宿に戻ると、オーナーがお茶を淹れてくれた。
先程までのおばちゃん包囲網が夢のようだ…。
ようやく冷静になり、改めて購入したものを確認することにした。

まずは最初のお姉さんのお店で購入した大判のスザニが2枚。

レコメンド機能の発端となった鳥柄のスザニ。かわいい。

見ないタイプだなと思って購入した鶏柄のスザニ。
刺繍も独特だ。

同じく見たことなかったので孔雀柄のスザニも。
基準が「見たことない」になっているあたり、己の判断力の低下を感じる。

後半、朦朧としてきたところで出てきた自称・鳥柄スザニ。「本当に鳥?!」と聞いたが、おばちゃんは笑顔で「鳥だよ、マダム!」と主張してきた。

王道な雰囲気の鳥柄スザニ。縁に飾りがついていてかわいい。

王道な雰囲気の鳥…ってさっきと同じデザイン?!?

荷解きをしながら一瞬パニックになったが、紛れもなく先程のとは別のスザニだった。
つまり、朦朧としていて同じデザインのものを買っていることにすら気づいていない状態だったのだ。
恐るべしおばちゃんたちの包囲網である…。

改めて数えると、8枚ものスザニを購入していた。
スザニ売り場に案内してくれたおじさんの「たくさん買ってね!」という言葉を思い出す。これは十分に買った方だろう。
(ちなみにおじさんとはメールアドレスを交換したのだが、後日おじさんが勤める企業への出資依頼メールが届いていた。そんなお金ないよ!)

スザニは一枚一枚は軽いが、集まるとなかなかに重くなる。ここまでのお土産とスザニをぎゅうぎゅうに詰め込んだバックパックが急激にずしりと重くなる。

帰路の自分の肩を心配する中で、ウズベキスタンの残り時間もいよいよ1日を切った。

つづく


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