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エッセイ『何気ないドライブ、何気ない会話』vol.5

父と二人でドライブに出かけた。

海と島々が遠くに見える、山の頂上付近までやってきた。

観光地には程遠い、穴場のようで、穴場スポットでもない人気のない場所。

これまでの肩の荷をおろした。

木のベンチに座り、風の気持ちよさを骨身に感じる。

遠くの島々の説明が書かれた看板があり、父は地理が得意なので、色々と説明してくれるのだが、僕には興味がないことなので、適当に聞き流す。

空にはとんびが数匹、上昇気流に乗ってたかくたかく、だだっ広い青空を、優雅に飛んでいた。

父は

「あんなふうになれたら、さぞ気持ちいいやろな」

と言い、僕は

「それは人間がたまにそういう空想するにはちょうどよくて、実際そうなったら苦労することも多いかもよ」

と我ながら、身も蓋もないことを言った。

父は単純に、気持ちよく風に吹かれていたかっただけだと思うのだが。

ふと、道端近くに展望台と書かれた看板を見つけたので、行ってみようかということになり、行ってみた。

そこまでの道は舗装されておらず、草もいっぱい生えていたが、割と僕が好んで行く道だった。

だんだんと景色が高くなり、展望台に到着した。

父と二人で並んで、ぼーっと海を眺めていた。

どちらも景色がいいのを感じていたいため、しばし無口になる。

とんびは未だ、数匹空を漂っていて、海の波は静か。

空には、美しい夏の雲が爽やかに流れていた。