「野良シニア」を生まないために
大学生の娘とこれからの高齢者や介護について語ることが多い。
普通の家庭ではそんな会話しないですよね(笑)
マーケティングを学んでいる娘は何社かのインターンをしていることもあり、母の事業も気になるらしい。
高齢者の懐事情
高齢者は年金を沢山もらっていてお金がある。と世の中の人々は感じている。
総務省「全国消費実態調査」平成29年より内閣府作成
総務省「家計調査(二人以上の世帯)」平成29年
確かに、金融資産は現役世代よりも多く持っている傾向にある。
しかし、高齢者世帯の所得は、その他の世帯平均と比べて低い。高齢者世帯は211.6万円に対して、その他の世帯は307.7万円である。年間96.1万円差が生まれている。(内閣府高齢社会白書平成29年度版より)
さらに、高齢者の中には基礎年金だけを頼りに生活している人もいる。月額満額で6.5万円(2020年時点)、年間でも80万円前後の受け取りにしかならず、貯蓄を切り崩すなどしなければすべての生活費を賄うことは困難。高齢者の中でも経済的格差があるとうかがえる。
8050問題
「80代」の親が「50代」の子どもと同居して経済的支援をする状態。中高年ひきこもりを抱える世帯を象徴した言葉。
子どもは無職で収入もないため、親の年金や貯金が一家の収入源になる。親が介護費用がかからないうちは家計が回るが、入院や介護が始まると家計が破綻する可能性が非常に高い状態になる。
親の年金で生活している現役世代の子どもたちが多数いるという。
「ひきこもり状態」の40-64歳が推計61万人いる。(令和元年3月内閣府調べ)
「ひきこもり状態」=親からの経済的支援がないと生きていけない と、推測しやすい。
「ひきこもり状態」になった原因
退職したこと 36.2%
人間関係がうまくいかなかった 21.3%
病気 21.3%
職場になじめなかった 19.1%
就活がうまくいかなかった 6.4%
その中でも退職理由について紐解くと、
定年のため 22.4%
契約期間が満了したから 15.1%
健康がすぐれなかったから 12.4%
その他 11.7%
家族の介護・看護のため 5.2%
年金を受給し始めたから 4.8%
と、続く。
厚労省「中高年縦断調査」平成29年
では、今から20年後の高齢者はどうなっているか想像してみる。
80歳の親の年金で生活していた子どもたちは70歳。
そろそろ介護が必要になってくる人もいる。
貯金はない、年金の増額は期待できない、
ジリ貧な生活を送らなければならない高齢者が増えるのではないか?
「長生きが誤算だった・・・・」とつぶやく親子
弊社サービスを利用するご家族の話。
山田さん(仮名 90歳 男性)は公務員として勤め上げ、老後は悠々自適な生活をするはずだった。趣味や旅行などを生きがいだと楽しんでいた。ところが、妻が体調を崩し、入退院を繰り返した。
自宅で妻の介護をする自信がないということで、妻だけ施設入所することになる。
また、山田さんご本人も体調を崩し、病院通いが増え、施設に入ることを決めた。
山田さん夫婦の入退院費用、施設や生活に係る費用など、年金で受け取る金額を大幅に上回った。
山田さんには土地や自宅はあったが、預金が少なかったという・・・・。
妻が逝去し、葬式代やお墓にまつわる費用が一度に降りかかってきた。
預金は底を尽き、入居する施設費用の支払いも年金の出る偶数月まで待ってもらうことになった。
施設は山田さんの子どもに施設費用の滞納について相談連絡をする。
しかし、「私たち子どもも年金暮らしが始まった。体調もすぐれないし働けない。親の面倒までみることができない。長生きしてくれるのは嬉しいけど、誤算だった・・・・。」と返事が返ってきた。
山田さんご本人も公務員だったから退職後は苦労することなく生活ができると思っていたのかもしれないが、実際は現役時代からの生活水準を変えなかったため、受給年金だけでは生活費を賄うことができなかった。預金から切り崩す生活になり、「長生きするもんじゃない・・・・。」と呟くことになった。
ところで、野良妊婦 知っていますか?
これからの高齢者の生活について娘と話していたときの話。
「出産直前まで産婦人科に通わず、母子手帳も持たず、救急車で運ばれて初めて診察を受けて出産するというのを『野良妊婦』っていうんだよ。」と。
「野良をあえて使うなら『野良老人』とか『野良シニア』が増えるんだろうね。
発見された時、手も施すことができないくらい介護度が進んでいて、親族にも繋がりのない高齢者が増えてきて、誰かが名づけだすよ。」と。
「野良シニア」にならないために
「野良妊婦」になってしまう原因が、
・相談窓口がわからない→知識不足、教育不足
・相談相手がいない→家族や友人、地域との繋がり不足
・貧困
であるならば、
高齢世代においても同じ原因で「野良シニア」が生まれるかもしれない。
高齢者の低所得世帯は今後上昇し続ける。これは、高齢者世帯の増加と公的年金額 の実質的な削減が大きな要因である。高齢者世帯において貧困化が大きく進行していくと稲垣誠一氏は言っている。
世帯の所得分布の推移と将来見通し
高齢者の同居家族の変容と貧困率の将来見通し 季刊社会保障研究. 48 稲垣誠一氏
高齢者の貧困者数は今後上昇していく。高齢者の年金水準が現役世代に対して相対的に大きく引き下げられること、一人暮らしの高齢者が増加することがその要因として考えられるという。さらに、高齢者の貧困率を男女別にみると高齢女性の貧困率は高い。これは、女性の方が男性よりも年金水準が低いことや長生きであることから、一人暮らしの期間が長いことがその理由の一つと考えられる。高齢女性の配偶関係の変化や一人暮らしリスクの上昇は戦後家族モデルを想定した公的年金制度の下では、高齢者の貧困化は避けられないと稲垣誠一氏は述べている。
性別・高齢者の貧困率の将来見通し
高齢者の同居家族の変容と貧困率の将来見通し 季刊社会保障研究. 48 稲垣誠一氏
私たちがその「野良シニア」を生まないために、
介護の学び、家族や地域との繋がり、介護を理由に離職せず、自分自身の老後に備えた貯蓄をしておくことを伝えていかなければならないと考える。
じぶん事だもん、地域を巻き込んで動いてみる
その取り組みの一つに地域で行う買い物代行サービス「えらんどる」をスタートする。https://my-nurse.jp/blogs/nihonkaisinbun/
自分の親に介護が必要になるとき、自分が少しずつ老いて行き、誰かにお世話になるときのイメージが湧くだろうか。
三世代同居を経験したことがない子どもたちが、親の高齢化や介護に戸惑い、不安でたまらないという相談が寄せられる。
思いっきって地域に飛び込みませんか?
手ぶらでは「アレ」なんで、買い物代行しませんか?
今までと違う買い物代行を。
自分が歩いていくこれからの未来が見えてくるはず。
まずは鳥取県内を重点的にスタートし、その結果を共有したいと思う。
「うちの地区でやってみたい」
「今までと違う買い物代行気になるー」
という方、気軽に声をかけてほしい。
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