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断片

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断片の連なり
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2023年6月の記事一覧

地名と思い出。

 業平橋が東京スカイツリー駅になった時もそこにいた。

「東武伊勢崎線が東京スカイツリーラインになるらしい。」

 その知らせを聞いたのはもう10年以上前で、もう今では車内の乗り換え案内が「TOKYO Sky Tree Line」と言っているのも日常のことになった。

 子どもの頃、東武線で浅草に行くだけでも小旅行の気分だった。同じ道を走ってるのに何で途中で乗り換えるの? いやそもそも乗り換えをし

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言葉でのこす。

 わたしはなぜ書くのだろう。なぜ言葉でのこそうとするのだろう。

 子どもの頃、家族で出かけた場所、今日あったことを事細かに日記に書いていた。忘れてしまうのが不安で、本文と別にルビや注までふっていた。

 今思うと、幼少期の不安定な時期だったのかもしれない。しかしとにかく言葉にして書いてのこすことが、「消えることはない」という理由で安心の一助となっていた。

 言葉にしてのこすことにこだわるのは今

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思い出すこと。

 わたしは「おじいさん」という存在になぜか親しみをもっている。

 恩人や恩師や大事な言葉をくれる人は、「おじいさん」が多かった。

 祖父はわたしが中高生の頃に亡くなった。寡黙な優しい人だった。当時あまり会える機会がなく、今では幼少期の記憶も薄れてしまったが、それでも祖父が好きだ。新聞の文字をルーペで拡大しながら読む祖父。髪は綺麗な白髪だった。



 四、五年前に文学を通してある人に出会った

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