思い出すこと。

 わたしは「おじいさん」という存在になぜか親しみをもっている。

 恩人や恩師や大事な言葉をくれる人は、「おじいさん」が多かった。

 祖父はわたしが中高生の頃に亡くなった。寡黙な優しい人だった。当時あまり会える機会がなく、今では幼少期の記憶も薄れてしまったが、それでも祖父が好きだ。新聞の文字をルーペで拡大しながら読む祖父。髪は綺麗な白髪だった。

 四、五年前に文学を通してある人に出会った。その人もおじいさんと呼ばれる存在だったが、若々しく鋭い目をしていた。その人の書いた「老人と海」についての文章を読んでから、わたしは度々「老人と海」とその人のことを思い出している。

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