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断片

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断片の連なり
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目次――断片

・断片(1)「小説」
・私なんて……(?)
・思い出すこと。
・出会い。
・仕事、出会い。
・出かける。
・どっちがほんとう?
・あなたとわたし
・人を想う。
・思い出す。思い浮かべる。
・かたつむり
・あなたはちゃんといる。
・悪いもの
・かなしみ
・変わらないもの
・せみ
・足元にご注意ください
・彼女たちは
・進化とは? 人は米を食べなければ生きていけない。
・多様性という言葉ができる前から

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生きてこそ

Kiroroの「生きてこそ」を知っている世代はもう少なくなったのか。

ムシキングというアニメの主題歌で、今聴いてもいい歌だなと思う。

子どもが何気なく見ているアニメの主題歌で、あなたたちの命は何よりも尊いと歌うこと。こういうことが大事だと思う。

この曲をここ数日よく思い出して、聴いている。

今年は世界や秩序とはこんなにも脆弱なものなのかということを知った。

子どもたちに今のわたしたちは言

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年の瀬――寒さと寂しさ

10代の頃は年末年始が怖かった。

普段行っている場所が全部閉まってしまう。

学校も、部活も、ファーストフード店も、図書館も、わたしの行っていた場所はどこもやっていない。

たかだか数日ぐらい、何とかなるでしょ。

それがなんとかならないんだ。

凍える寒さの中、家を出て、どこに行けばいいのか、街を彷徨う。

正月に流れる琴の音楽は、わたしにとっては不安と寂しさの音楽だった。

夜9時まで開いて

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時代を生きる不甲斐ない自分

もうずっと何も出来ない。

毎日のニュースや世間の反応に気持ちが追いつかない。

食事をするのも起き上がるのもおっくうで、毎日何をしているのか覚えていない。

自分に直接関係のないことでなぜそこまで落ち込むのか。周りによくそう言われたけど、わたしはこういう人間なんだ。

大学院に行って勉強をして、研究者になるつもりだった。

実際入ってみるとそこは、とても特殊な世界で、力があるだけで職に就けるわけ

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未来へ

命は平等だ

命を大切に

どんな人であれ重んじよう

そんな教え、全部嘘だったじゃない。

こんなことに気付いてしまうのはわたしたちの時代まででいい。

ホームと月

電車から降りる人の波を一番後ろから見ていた。

そういえば、いつだってわたしはこうして後ろからみんなを見てたっけな。

いつも気付けば一番後ろ。

なんで遅れてしまうのかいまだにわからない。



でも悪いことばかりじゃなく、

今日はみんなの後ろ姿の上に月を見つけた。

大人になるって

「何歳までにしないと手遅れ、間に合わない。」

そういう言葉を疑いながら生きている。

多分それに全然間に合っていない自分と、間に合わないながらもやってきたことが全部無駄ではなかった経験がそう思わせるのだと思う。



人の脳は○○歳までには固まる、成熟するから、何かするならそれまでに。

これはよく言われることだが、自分の経験を振り返って見ると実際そんなことはなかった。

わたしは成熟といわれ

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言葉を歩かせる

 今日も仕事終わりに散歩をして帰る。
 なんだか最近、右脚のふくらはぎだけやけに痛いと思ったら、右肩にバックをかけて何時間も夜道を歩いているからだった。毎日取り憑かれたように散歩をしているのは、日中のもどかしさを何とか埋め合わせしようとしているのかしら。

 街を歩いていると本当にいろいろな発見がある。東京はこんなに坂が多かったのかと驚いた。それもちょっとした坂じゃなくて、かなり急勾配が多い。生ま

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作家の声

作家の声

なぜ世の中の人と上手くやれないんだろう。

もっと上手く生きればいいのに。

言葉なんて飲み込んでさ。

そうやって思い続けてもう何年目か。
わたしはこの先もこうなのか?
今日の自分の振る舞いを反省しながら、
これまでの自分の原因を反省しながら、
泣いていることを悟られないように俯いた。

スマホに繋いだイヤホンで小林秀雄の肉声を聴く。
それは寄り添ってなんかくれない優しくない音声だ。
しかし今ま

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文学の当事者性

かつて文学の世界では「プロレタリア文学論争」というものがありました。

労働者階級によるスローガンを含むような文学作品は、文学作品に値するのかという論争です。

現代でこの論争が起きたら、そりゃ値するでしょう、となりそうですが、しかしこの論争は長く続き、文学をめぐる議論のなかでとても大きなものでした。

この論争は現在の当事者性の問題にもつながるところがあります。

当事者性のある作品が増えた。そ

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30代になっても大人にはなれていない。

30代になっても大人にはなれていない。

でも、30代が大人じゃないんだなってことはわかった。



かつて大人に見えていた年齢になっても、

自分が全然そこに届いていないように感じる。

よく言われることだけど、本当にそう。

わたしは何が変わっただろう。

何か成長できているのかな。

安易な助言ができなくなったくらいか。

ものごとはそんなに簡単じゃないってわかったから。

仕事終わりの散歩

 仕事が終わってまっすぐ家には帰れない。今日一日へとへとに疲れた自分が元の自分に戻るために、暗い夜の街に紛れる。といっても、遊ぶ相手なんていないから、駅から少し離れた全国チェーンのカフェに行くだけだ。頼むのはいつもブレンドコーヒーで、一杯300円なら夕食を切り詰めればなんとかなるから。

 赤茶色の椅子とテーブルが並ぶ店内には、いつも数人の客がいる。平日のこんな時間に喫茶店にいるのは、一人になりた

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生きている実感――若者の場合

正しい評価制度って何か?

その人がどんな実力か?
今日一日で何をどれだけできたか?

そういうものすべてが可視化され、数値化されて、能力の倍率がかけられて給与が決まるのだとしたら。

それは、恐ろしいですね。

ただ、そっちの方がいいと思ってしまう自分がちょっとだけいるのも、若干の絶望ですが。

わたしは社会に出てから、自分が何の仕事をしているのかよくわからないし、
できることがあっても立場が違

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2023年の広島平和記念式典

 朝、会社に行く前に風呂場で洗濯をしていた。

 うちには今洗濯機がないため、たらいに水を張って手洗いをしていた。洗面台にスマホを置いてでラジオをつけると、広島の平和記念式典が執り行われていた。

「そうか、今日は8月6日だ。」

 御歳90歳を超える被爆者の方の声が聞こえる。

 8時15分になった。黙祷。

 わたしも手を止めて目を閉じた。風呂場に広島から響く鐘の音が反響する。

 昭和20年

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