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【軽羹読書録】火花/又吉直樹

ご機嫌よう。kalkanです。

最近、読書ペースが早い。


サクッと読める作品を好んで読んでいるというのもあるけれど、こうやってコンスタントに本を読めている時は、自分の中で時間をうまく使うことが出来ている気がして気持ちがいいです。

と、言いながら今回の作品は夜更かしして一気に読んだので良いのか悪いのか。まぁ、いいのよ。

そんなわけで今回もどうぞよろしくお願いします!

売れない芸人の徳永は、、天才肌の先輩芸人・神谷と出会い、師と仰ぐ。
神谷の伝記を書くことを乞われ、共に過ごす時間が増えるが、やがて二人は別の道を歩むことになる。
笑いとは何か、人間とは何かを描ききったデビュー小説。

なんだか読んでいるうちにデジャヴを感じて、「最近この感じ、どっかで体験したなぁと思ったら、太宰の『人間失格』だった。

そのくらい、個人的にはこちらの作品、又吉氏の自叙伝のように感じた。

その中でも深いところにある、自分の隠したい部分を曝け出したような作品。
こういった作品に触れると、「辛いだろうに、私なんかに曝け出してくれてありがとう」と勝手な気分になるのは私だけだろうか。

閑話休題。

そんな「火花」に、私は又吉氏の『冷静』『情熱』を感じたわけである。

【『冷静』という名の「徳永」と『情熱』という名の「神谷」】

主人公である徳永の先輩であり、師匠と呼ぶ神谷には、自分の中の「面白い」を絶対に曲げずに突き通す信念がある。
更に「自然体の自分でいるということ」という信念も持ち合わせている。


これは、氏のお笑いに対する信念であり、情熱な部分なのではないかと、私は感じた。

正直わたしは漫才師としての氏をほとんど知らないし、お笑いに対しての知識が皆無である。

だけど、人には絶対に曲げたくないというポリシーがある。若輩者の私にだってある。

それを私は「神谷」という男から感じた。

それとは逆に徳永は、守りに入っている部分がある。
会場を沸かせること。相手を笑わせること。漫才師としての必要最低限のことだけれど、そこに自分ルールをまだ見出せていない。

けれど、自分のことはよくわかっている。

漫才に必要なスピード感のあるトークができず、スローペースな喋り方しかできない。
表情が乏しいので、斜に構えているように見られてしまう。

つまり自分のことを「冷静」に見つめている。

初めはこの対称的な二人の、熱い部分と冷たい部分が目立っているけれど、後半になるにつれ混ざり合い、最後には神谷の「冷静」な部分が。そして徳永の「情熱」の部分が見えてくるのが面白い。

【神谷に見る「先人たち」】

これは氏のエッセイを読んだことがある人ならばわかると思うけれど、神谷という人間は氏が出会ってきた先輩たちのエピソードで出来上がっている。

これは、単純に表面的な「先輩像」として描いたわけではなく、氏が今までに出会ってきた尊敬すべき大好きな先輩たちの「想い」も詰め込めて神谷という人間に擬人化させたのではないだろうか。

神谷は完璧ではない。なんなら不完全すぎる人間だ。だけど、どうにも愛してしまう。

それはやはり、ただの「良い人」ではなく、お笑いに対して、そして人として「尊敬」に値するからこそである。

氏はたくさんの尊敬すべき人物に出会い、そして愛されてきたのだろうなと感じた。

【ラストに感じる芸人魂】

終盤で、徳永が組んでいるスパークスは解散を迎える。(この解散に至った決定的理由も、まったんの同期のコンビのエピソードだよね?)

そのラストライブは涙と笑いで包まれる。ちなみに私は嗚咽を漏らしながら咽び泣いた。

ここで終わるのが本来であろう。だが、氏は涙涙では終わらせない。

更にどんでん返しのラストが来るのはよくある展開だが、ここで予想の斜め上のラストに繋げる氏に、芸人魂を感じざるを得ない。

どんなラストかは、是非直接読んでみてほしい。
ちなみに私は「えーーー!?!?嘘やん!?」と口に出した。


【軽羹読書録】

独特の感性と妄想力、そして語彙力を持つ又吉直樹という人間がとにかく好きです。

頭に書いたけれど、やっぱりこれは又吉直樹版の「人間失格」だと思う。
自分の心の中の恥部というか、深いところにある触れてほしくないところを曝け出した作品という今では、あまりにも似ているなと思うし、まったんも少し意識したと思う。

比喩に比喩を重ねた文章は、独特だけどリズミカルで、口に出して読みたくなるフレーズもたくさんありました。

私みたいに「読んだら負け(ミーハー的な意味で)」と思っている方、いやいやそんなことないので!是非、先入観は捨てて読んでみてください。


そんなわけで本日はここまで。
お付き合い頂きありがとうございます。
kalkanでした!

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