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文学フリマ東京38の設営ボランティアをやった話【最後の箱 東京流通センター】


1.はじめに

 僕はどちらかというと、あんまり協調性もない人間だ。大人数ではしゃいだりだとか、お酒を飲んで大声を出したりだとかの明るい行為が好きではない。仄暗い人間だ。

 それでいて、物寂しくなるときがあって、完全に無視されたり、ほっとかれてしまうと、それはそれとして孤独で妙に心がそわそわしてしまうこともある。

 孤独が性に合っているのに、完全に孤独になってしまうと、頭がおかしくなってしまう。そういう面倒くさい人間性をもっている。

 さて、僕は高校生くらいから現在に至るまで、ちょくちょく小説を書くことをしている。読書も元々好きで、そういった創作物を受動的に享受するのにあきたらず、ついには下手な横好きで創作活動をするようになった。[1]

 創ったからには、人に見せたいというのが道理だろう。加えて言うなら、できるだけWebメディアではなく、紙という媒体で製本してみたいという思いもあった。[4]

 そういうわけで、僕は上京してから、文学フリマに参加しようと思い、実際にサークル参加しつづけている。[2]

 そして、ついには文学フリマの設営ボランティアまでした。今回の文学フリマ東京38は「東京流通センター」という「箱」で行われるのは最後のイベントになるらしい。次の文学フリマ39東京は、もっと大きな箱、「東京ビックサイト」で行われるからだ。

 実は文学フリマ東京ではイベントの設営に早朝のボランティアを募っている。


 本記事では文学フリマ東京の最後の箱である「東京流通センター」で設営ボランティアをやってみたという記録であり、エッセーであり、ただの備忘録だ。[3] 

 参加した動機やメリットについても触れたので、なにかの参考にする人がいたら重畳である。


注釈コメント1

[1]実に「やれやれ」って感じで、創作活動には複雑な思いがある。やれやれ。
[2]といっても、まだ二回目しか参加していないけどね。毎回、しんどい思いをしている笑

[3]まあ、未来は未定だから、また「東京流通センター」で文学フリマ東京が行われることもあるかもだけどね。

[4]文学フリマ東京38のお品書きを以下にはる。「樹海」についての本だったり、純文学っぽい小説、理論物理学のエッセーレポートと、我ながら良く分からない組み合わせで創作物を頒布した。

東京フリマ38のお品書き(かくサトウ)


2. なぜ、設営ボランティアに参加したか?

 
 それは単に僕が緊張のあまり、睡眠の早期覚醒したからだ。当初は設営のボランティアに参加する予定はなかった。

 実は文学フリマの準備を前日ぎりぎりまでやっており、なんなら創作物の推敲も前々日ぐらいにやっていたくらいのデスマーチ進行だった。なので、イベント当日の朝は体力を温存したいという思いがあった。しかも、仕事も連日連夜に忙しく、ヘトヘトでもあった。

 しかし、そういうときに限って緊張が極度になり、臨戦態勢が抜けず眠りが浅くなってしまうのだ。24時になんとか布団に入って、唸りながら、気づいたら朝の5時だった。

 僕はこのような状態で、この時間に起きてしまうと、再度寝ることができない。

「やれやれ」と村上春樹っぽく呟き、ゆっくりと身支度をすることにした。それでも、なお時間が余ったので、どうしようかと勘案した。

ーーそうだ、文学フリマ東京の設営ボランティアに行こう。

 そういう「京都に行こう」みたいなノリで、設営ボランティアに行くことにした。

ちなみに設営ボランティアの集合は朝の8時30分だ。仕事の定時みたい。早いね笑

3.設営ボランティアってなにやんの?


 初めに、けっこう緊張した。こういうボランティアに今まで参加したことなかったので、「一見様お断りみたいな閉鎖的な雰囲気だったらどうしよう」とか、「怖い人がいたら嫌だな~」とビクビクしながら会場の階段を上った。

 たぶん、心配でぐにゃぐにゃな表情をしていたのか、すぐにスタッフの人に「設営ボランティアに来てくれた人ですか?」と声をかけてくださった。

 軍手を渡されて、設営の説明用紙を貰う。確か、椅子や机の並べ方や配置、注意事項が載っていたと思う。

「ここらへんで待っていてください」スタッフの人に言われて、待っていたところには20~30人くらいの人間が集まっていた。けっこう人が集まるんだなというのが最初の感想だった。

「それでは今から設営を始めます」スタッフから会場に入ることを促される。

 最初に作業として始めたのは、机が積まれた台車を会場に均等に運ぶことだった。重い台車なので二人一組で運ばなければならない。

 僕はボッチ参加である。

 つまり台車を運ぶお手伝いをするには、誰かとペアにならなければならない。「これは、自分、ペアが作れずにあぶれるんちゃうか」と謎に冷や汗をかいた。

 最初に、長身の男性がすっと台車の取っ手を掴んだ。初見で雰囲気を掴もうとしているのか、誰も彼とタッグを組もうとする様子はない。ここは自分がファーストペンギンを狙うところだろう。「良かったら、お手伝いしますー!」と声をかけた。相手も頷く。

 ーーおお、なんだか嬉しい。こういう労働って実は嫌いじゃないんだよな。

 高校の文化祭ではクラスに居場所がなかったため、体育館で椅子の設営をひたすらやっていた思い出がふと蘇る。

 コミュニケーション主体のバイトは苦手だったけど、軽作業とか農業のバイトは意外といけたんだよな。

 やっぱり、もくもくとしながら、けれど誰かに貢献できるみたいな労働環境が自分にはあっているのだろうね。

 机の台車が運び終えると、次はその机を一列に配置していった。

 筋肉が悲鳴をあげる。ここのところ筋トレをさぼっていたのが裏目に出たか。でも素晴らしい筋肉の悲鳴だった。肉体労働をしていると、悩みが一時的に解消されて良いよね。

 この時点でいい塩梅に汗をかいて、気持ちが良かった。
 軽作業キモチェ~~~!!って感じだった。

 ここで机の運搬を一緒にやっていた別の方と空き時間(作業の律速段階)に少し、お話をした。なんとその方は物理を専攻にしている方だった。自分は文学フリマで「理論物理学者が書いた文学作品」のレポートを頒布していたため、物理のアカデミックな話とかで盛り上がった。

「文学フリマで物理学の話をするなんてね」と僕らは笑い合った。確かに文学の祭典で、物理のはなしを熱くしているなんて、シュールだ。

 ややあって、その人たちとは別れ、自分はサークルの識別用紙を机に置くという作業を承った。これは単独作業だ。

 ひとりでもくもくと作業する。

 人間と交流するのも良いけど、やっぱり自分は一人の時間がなきゃ疲れてしまうなと思った。単独作業が心のオアシスだった。そんなに大変な作業ではないので、ここでHPとMPを回復させた。

 あとサークルによっては頒布する本を段ボールで宅急便で送るのだけど、運搬業者の方と一緒に作業して、それが妙に楽しかった。大学生の時のバイトでも、少し関わったことがあるんだけど、運送業者の方には本当に頭が上がらないなと思う。

 そんなこんなで空っぽだった会場が一気に椅子と机で満たされた。

文学フリマ38_設営前

 文学フリマの設営ボランティアの常連である方は「文学フリマのボランティアさんらは、本当にきびきびと働いてくれて、見ていて良いわね」と言っていた。実際、設営は見込みよりも30分くらい早く終わったらしい。

 凄いスピードで設営されていったのは圧巻だったし、とても達成感があった。

 あとブースの位置や地理感が鍛えられるので、割と頭の中にマップが出来上がっていく感じが良かった。

 設営が終わって、ふ~と息を吐いた。飲み物を貰う。ゴクゴクと喉を鳴らす。達成感がすさまじかった。軍手も貰っていいということで有難く頂いた。こういうところで貰うものって、経験則的に意外と長く使うんだよな~。

 サークル参加の場合は、その場でリストバンドを貰って自分のブースの設営をすることが出来る。

 最初にタッグを組んだ長身の男性とブースが近いことがわかる。「なんだか、お腹がへったね」と笑いかけてくれた。「そっすね~!」と僕も笑った。

 設営ボランティアに参加して良かったなと思った。

4.参加するメリット


 以下に箇条書きで設営ボランティアに参加するメリットをまとめてみた。

・人間と交流できる。
・良い汗をかける。
・達成感がある。
・ブースの土地勘が培われる。
・「こんなかんじで同人イベントって設営されるんだ~」と知見が深まる。
・軍手くれる。
・飲み物をくれる。
・空っぽの会場がみれる(これは撤収のボランティアをしても見られるけど、設営のボランティアの方が人も少ないし圧巻の景色だ)
・筋トレになる。
少し早くブースの設営が出来る。自分はブース設営に不慣れで、現地でいろいろと試行錯誤したかったため、ちょっとありがたかった。

5.最後に


  徒然と、長々に、文学フリマ東京38の設営ボランティアの備忘録を書き連ねてみたが、いかがだっただろうか?

 僕としては、休日に文章を書くことが出来て、とても満足である。

 次の文学フリマ東京39は、もっと大きい箱である「東京ビッグサイト」で行うらしい。

 人もイベントも紆余曲折ありつつ、拡大したり成長したりする。

 しかし、その裏には目には見えない人々たちの様々な働きがあると思う。人は一人では生きられない。イベントも人がいなければ、成り立たないように。

 僕は難しいことはあまり分からない。しかし、設営と撤収ボランティアを含めて文学フリマ東京38に参加できたことを嬉しく思う。

 そのことを考えて、今はもう眠りたい。


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