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【レジから檄③】接客サービス|新文化◆2006年3月16日号 10面 

新文化◆【レジから檄】2006年3月16日号 10面 

「接客サービス」

 ども、アマゾンとかセブンとか特撮の話で盛りあがっているなか、どこ吹く風のスズキです。
 ある日、お客様から「頑張ってるねぇ」等々、私をよく知っているような口ぶりで問合せを受けました。しかし、わたしゃその方を知らないのでございます。名前を聞くのも失礼と思い、話を合わせつつ自慢の口八丁で接客をしておりました。そして注文を受ける段階でお名前をお聞きして思い出しました。高校時代の担任だったのです。
 さてさて、最近の書店では接客サービスに力を入れているところが多いと聞きます。初めて来店されるお客様には殊更親切に、常連さんは名前で呼ぶなどフレンドリーな接客を。なんて申しまして、特にスズキのように顔を覚えられないのは近頃で(なくても)は致命的であります。そんな接客サービスに力を入れている書店について小噺をひとつ。
 ある書店で働いているFという男は大層物覚えが悪く、特に人の顔を覚えることが出来ないときている。在庫の有無を知らせようとしたらどのお客様か忘れてしまい、店内を探しまわる始末でして。店長はそんなFに「おいおい、そんなに人の顔が覚えられなきゃ彼女の顔も忘れちまうじゃないかい」とめいっぱい皮肉ってやると「それが店長、会う度に一目惚れなんすよ」とぬかしやがる。しかし、このF、顔は覚えられないが接客は抜群。お客様からはすこぶる評判が良いときたもんだ。だから店長、Fが顔を憶えられないのが余計気に障る。「Fは顔が憶えられないのになんで接客が評判いいのかねぇ?」と訝る店長。「え、店長がいつも言っていることをやっているだけですよ」とケロリといいやがる。「おいおい、なんだいそりゃぁ」
「言ってるでしょ。初めてのお客様には特に親切にしましょうって」。
 とまぁ、接客の技術ではなく接客の意味が必要なんでしょうな。ただ、接客が素晴らしいレストランでも味が悪けりゃ二度と行きませんしその逆もまた然り。満足される品揃えと接客という両輪の向上こそが必要だな。と書きながら自らに言い聞かせるスズキでした。

今月の一言 「接客は、一に笑顔 二に笑顔。心は無くても演技力」
ではまた。
(注)小噺はフィクションです。念の為。


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