「プロダクトマネージャーのしごと 第2版」要約・読書メモ 後編
こんにちは
前回の記事
に引き続き、後編として11章〜15章までを簡単なサマリと私自身の考察も踏まえて共有させていただきます。
第11章 「データ、舵を取れ!」
要約
価値を証明するな価値を創れ
ユーザーに対して価値を作るという動機ではなく、ユーザに対して理論的に価値を提供できることを同僚に証明する目的で実験が行われている場合、実験はうまくいかずインパクトを生み出しにくいものになる。
成功した実験の背景にある動機は、「小さなものをリリースし、ユーザの価値になっているかどうかを判断する根拠を作るために、たくさんの数値を分析する」ではなく、
「自分たちが、ユーザの価値になるとおもう小さなものをリリースし、実際にユーザにとって価値があるかを確かめる」 というものだった。
考察
「データで判断する」ということの重要性は、今や当然のようによく語られていますが、この記述は非常に示唆にとみます。
計画、予算の厳格さや予測可能性に重心をおく組織では不確実性に対して脆くなり、
「同僚または上司を説得するために」 データを利用する誘惑にさらされるシーンは多くなるのではないでしょうか。
「小さなリリースをした後に、 効果分析をする」という行為自体においては差異がなくても、その動機が、自分たちの実績をPRすることにある場合、見えてくるものは変わってきます。
「自らが誤っていることを確認し検証できること」 は、科学哲学でも 反証可能性 といわれます。絶対的な「真」がなく、漸進的改良を継続するプロダクト開発においても、この考えは重要なものではないでしょうか。
第12章 優先順位づけ:すべてのよりどころ
要約
必読のポイントと考察
体験全体に留意する
プロダクト組織が「機能の製造工場」になってしまうと、ワクワクしそうな機能を作る割には、大した価値は届けることはなくなってしまう。
これはプロダクトマネージャーのほぼ全員が、明確で安心できる自分の責任範囲のなかで完成できる仕事を優先する 可能性が高いためである。
しかし、複数のチームの責任領域をまたぐ機能や改善こそがビジネスとユーザに対する影響がもっとも大きいという不都合な真実がある。
できる限り最高のアウトカムをだすためには、片足はユーザーの現実におき、もう片足をチームやサイロの外にだすことを恐れないことだ。
考察
組織のサイロ化については、個人的にもこれまでも幾度も向き合ってきました。一般的に組織の成熟とともに、サイロ化とその中で個別最適化された機能追加が繰り返される課題は正比例して大きくなります。
ある一つのプロダクトやサービスを使っている中で、どこかちぐはぐな印象をうけたとき多くの場合でそこには提供組織の領域の違いが潜んでいるものです。
創業期のメンバーと現在の組織、ビジネスサイドと開発チーム、プロダクトオーナー同士・・あらゆるサイロがあり、それらの境界がプロダクトやサービス、企画されるキャンペーンのありようにも表出していたり、大きな改善を難しくする制約として残っていたりします。
(過去あった組織によってつくられたサイロは誰からも省みられませんが、システムやサービスには非情なまでにその存在感をのこしています。)
本書に記載のあるように、ときに組織を離れユーザーとして一連の体験を経験することや、いたずらに機能を追加しようとはせず、むしろ引き算や、整理するというアクションがプロダクトマネージャーに求められてくると思います。
第13章 おうちでやってみよう:リモートワークの試練と困難
要約
必読のポイントと考察
遠くから信頼を築く
物理的、社会的な構造のなかにいない場合には、お互いにすばやく信頼する必要がある。チームで信頼を築くのには「ベストプラクティス」の適用だけでは不十分で、メンバー同士でどうのように働きたいと思っているのか?その理由は?という会話がなされるように促されなければいけない。
チームはそれぞれ異なり、それぞれにあったコミュニケーションの形がある。
オフィスで働くことと自宅から働くことの境界が曖昧になり複雑化していく状況では、必要なコミュニケーションを増やすことを忘れてはいけない。
考察
リモートワークVSオフィスワークや、リモートワークでもビデオオンにするべきかなどは繰り返し議論になります。
ここでの重要な示唆は、コミュニケーションの選択肢が増えたことによって、コミュニケーションをとる重要性はより増える。ということだと思います。
リモートでも対面であっても、チームで相互に信頼を得なければいけないという本質は変わりません。
相手と物理的に離れた場所にいるということなのであれば、それを前提としてどのようにすれば信頼を得られるかをそれぞれが考え、工夫を繰り返すことが必要なのだと思います。
第14章 プラダクトマネージャーのなかのマネージャー(プロダクトリーダーシップ編)
要約
必読のポイントと考察
権限委譲されたチームは切り離されたチームという意味ではない
「自律」と「権限委譲」は、崇高かつ健全なゴールですが、効果的に達成することは難しい。「自律」とはチームを放っておいて良い仕事をさせる許可をすることではない。
チームが本当の意味で権限委譲されるには、リーダーの考えるビジネスの背景、特にプロダクトビジョン、マネジメントの支援、継続的なコーチングが欠かせない。
考察
自律や権限委譲という用語は誰にとっても肯定的で、マイクロマネジメントはする側もされる側も好ましいとは思わないものです。ただ、現実にはなかなか難しいものです。
つい、自分で引き取って判断してしまったり、細かな指示をだしたり、またその一方で意思決定指針の認識・解釈のズレに気づかないままであったということに、遅れて気づくというような経験は誰にでもあるのではないでしょうか。
第15章 良いとき悪いとき
要約
必読のポイントと考察
良いときは(必ずしも)簡単なときではない
プロダクトマネージャーの仕事が、チームや組織の健全性と成功に貢献していることを示す一般的な指標には次のようなものがある
対立をオープンに議論している
全員が自分たちのしている仕事に注力していると感じている
新しい情報(新しい人)を脅威ではなく、好機だと考えている
プロダクトマネジメントがうまくいっているときというのは、新しい課題を積極的に探し、素直に先入観なく取り組んでいるときである。
考察
プロダクトの優先順位がおのずと決まり、意見の相違や調整、変化やプレッシャーが少なくて安定している。そのような「自動操縦」の状態は、新しい学びや挑戦を避け、閉鎖的、防御的な組織となってしまうことをこの章では警鐘しています。
対立の解消や、次々とおこる変化に対応していくことはストレスのかかることですが、
これまでの章でも繰り返されてきたように、はっきりと白黒のつけられないような曖昧なことに対して、常にみなと対話し改善を続けていくことが重要なのだと思いました。
以上。「プロダクトマネージャーのしごと」要約でした。
いずれの章も、濃密で実践的な内容で、どの部分を中心に引用するかとても迷いました。
ご興味を持たれた方はぜひご一読ください。
本書は最終章16章までありますが、ごく短い全体の総括的な内容であったためここでは省略させていただきました。
キャリアや職種を問わず、心に響く一節にきっと出会えると思います。
おわり
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