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非認知能力と貧困と教育

非認知能力と環境について知りたいと思って、ポール・タフの著書2冊読んでみました。何度も寝落ちしたけど、がんばって読破したぞ!

子どもの「成功」の定義

まず前提として、タイトルにもある子どもの「成功」の定義を共有しておこう。

・高校や大学への進学率が高い
・年収が高い
・家庭が安定している
・健康である
・生活保護率が低い
・犯罪率が低い etc...

そして、貧困家庭の子どもはこの意味での成功率が非常に低い、との事だった。舞台はアメリカだけれど、日本でも同じ傾向だろうと思う。


非認知能力とそれを阻害する子どもの逆境的体験

このような「成功」を達成するには、これまでの知能至上主義の認知能力の獲得に注力してもダメで、というか、そもそも認知能力の獲得には、粘り強さや自制心、好奇心、やり抜く力などの非認知能力が必要なんだよ、ということだった。

そして、非認知能力の獲得を最も阻害するものが子どもの貧困であり、それに紐づく逆境的体験(ACE)というものがある。家庭環境の重度の崩壊とも言える。

※子どもの逆境的体験(ACE)とは--------------
1.精神的虐待、2.身体的虐待、3.性的虐待、4.感情的ネグレクト、5.身体的ネグレクト、6.アルコールや薬物依存の家族がいる、7.実の父母との別離、8.母への暴力、9.家族の精神疾患、10.家族の服役
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結局、貧困問題

本書では、貧困家庭で逆境的な体験をしてきた子どもたちが起こす問題行動や学力不振に対して、様々な教育プログラムが登場する。多くの場合は公的資金が投入されているが、それはあのジェームズ・ヘックマン(非認知能力と言えばこの方!)が言っているように、それが社会経済的(納税額や犯罪コストなど)にも断然お得だからです。しかも、非認知能力を獲得する為の介入は就学前、早ければ早いほどコスパが良いとのこと。

これを言ったら元も子もないのだけれど。この本で紹介されてるような数々の教育政策を施すよりも、経済の根本改革が必要なのでは?と思ってしまった。(それが即座に叶わないからの教育政策なのだとは思いますが…)

大西つねきさんのお話や、今回のコロナでの大規模な財政出動の話を聞いていても、やっぱり経済の仕組みを変えることでたいていの問題は解決するんじゃないの?(分かったような気になってるだけかもしれませんが)と思ったしまった。

少なくとも日本なら国内でお金を刷ってまわすことで完結できるのならばやったらいいのに。まずお金をたくさんまわしてとりあえず死にかけてる人を救ってから、初めて教育が活かされるのでは?安心安全のなかで初めて人は他者を慈しんだり、学ぶ意欲や社会に貢献したい気持ちが出てくるのだと思う。だって、人は本来より良く在りたいという自然の流れがあるもの。これこそ社会経済的なコスパ良いと思うんだけどなー。

ここは絶対、両車輪で進めるべき!
だって、国民ひとりひとりが自立してたら最強でしょう。


教育のおける賞罰の効果

数年前に大阪市長が全国学力テストの結果を校長や教員の人事評価とボーナスの額に反映させると言った衝撃のニュースがありましたね…
私は感覚的に「ないわー」って思ったのですが、これもしっかり研究で結果が出てるようで。

ハーバード大学の経済学者ローランド・フライヤーさんが行ったアメリカ史上最大にして最も徹底した教育実験を行った研究によると、ほぼ全てのインセンティブ・プログラムが効果がなかったらしい。なかには教師に対するインセンティブが生徒の成績を下げたところもあったとか。

更に言うと、ほんの少し改善が見られたのは、もともと成績の良い生徒であり、一番のターゲットであった成績下位層の子どもたち(ほとんどが貧困家庭)には効果が見られなかったそう。

テストの点を上げる目的って何だっけ?


生まれながらに持っている内発的動機

森のようちえんの指導者研修会で必ず触れられる「内発的動機づけ」のお話。

ロチェスター大学の2人の心理学者、デシとライアンは「内発的動機づけ」についてこのように言ってる。

ー私たちは多くの場合、自分の行動が生む表面的な結果ではなく、その行動によってもたらされる内面的な楽しみや意義を動機として決断を下すー

逆に、外的な報酬(物質的なインセンティブ)は、長期にわたるプロジェクトとしては効果がなく、多くの場合は逆効果だったそう。

その実験のなかで結論づけられたのは、
ーワクワクする「遊び」が、報酬の導入により「仕事」になってしまった-
ということ。

あー。これすごい分かる気がする。
遊びのなかに包括されてる学びが失われる瞬間…

こうも言っています。
ー人間は生まれながらの学習者で、子どもたちは生まれつき創造力と好奇心を持っており、学習と発達を促進する行動を取るよう、内発的動機づけがなされているー

だから、森のようちえんでは子どもたちの内側から巻き起こっているものをすくい取ってプログラムを組み立てます。一般園や学校では逆にプログラムありきで、そこに子どもたちをはめ込む事が多いのではないかな。

人にもともと備わっている力をまず「ある」ということを認識する。
そして、それを活かすのであれば、川の流れや重力のような自然さに逆らわないことが大事、というか、その方がお互い楽だと思う。
(このあたりは乳幼児の排泄自立にも通じるなぁ)


内発的動機づけを維持する為の3つのカギ

とは言え、内なる満足の為にスタートしたとしても、何かを学ぶには継続的な反復練習が伴うこともある。そこを維持する為の3つのカギがこちら。

・自律性
・有能感
・関係性(人とのつながり)

この3つを促進する環境が、子どものモチベーションをグッと押し上げるらしい。
具体的にはどういう時なのかというと、デシとライアンの説明によれば、

自律性を実感するのは、子ども自身が自分で選んで、自分の意思でやっているのだという実感を最大限にもたせ、管理、強制されていると感じさせない時。

有能感を持つのは、子ども自身の現在の能力をほんの少し超える課題を与える時。

関係性を感じるのは、大人に好感を持たれ、価値を認められ、尊重されていると感じる時。

らしい。これらの感覚は、物質的なインセンティブよりもはるかに効果があったと。

この3つのカギを満たす教育環境って、今の日本の学校教育のなかでは難しいんだろうなぁ。ほとんど逆をしてしまってる気がするのは私だけだろうか…

でも、家庭や森のようちえんで出来ることのヒントがたくさん詰まってると思う!
自律性の「管理、強制されていると感じさせない」ってとこ、これ逆やると非常に分かり易く子どもたちは反応してくれるよね(笑)
有能感の「現在の能力をほんの少し超える課題」って見極め難しい。観察!観察!観察!
関係性は、そうだなー。「尊重」我が子だとついうっかり忘れちゃう。から気を付けよう。


貧困じゃなくても生きずらさを感じる人たち

貧困ゆえの様々な逆境が子どもたちに暗い影を落としてるのは間違いないのですが。
貧困じゃなくても生きずらさを感じてる人は多い気がする。

あぁ 答えがある問いばかりを 教わってきたよ そのせいだろうかー by RADWIMPS

みたいな気持ちである。
教育が先か、経済が先か、
分かりませんが。

いや、どっちもだな!

貧困じゃないことが当たり前の世の中にならないと。
本当の「成功」はその奥にある。

NHK【18祭】のRADWIMPS「正解」が心に沁みすぎる

https://www.youtube.com/watch?v=xKjFYKWCDas









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