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〈my story〉仕事は自分の世界を広げる希望に満ちている①

入社当初、人見知りなことがコンプレックスだった。自分の居場所を模索したり、自分で全部抱え込んでしまったときもあった。それを乗り越えて働くうちに、今までの自分では想像できないような、新しい仕事への扉が開いた。そんな私が今仕事に対して思うこととは。

職業:ゑり善 店頭一般職リーダー

今回インタビューをさせていただいたのは、京都四条河原町にある「ゑり善」にて勤務されている、廣政陽子さん。
インタビューアー・編集は私、古津と野﨑が担当いたします。
私たちは現役大学生、現在実習生として、「京都ではたらくわたしのライフストーリー」メディア作りに参加しています。大学生の今だからこそ、気になったことも聞いてみましたので、ぜひご覧ください。

左から廣政さん、インタビューアーの野﨑、古津

【学生時代~就活】就職はここも応募しておこうみたいな感じでした。

大学の時は芸術学を専攻していました。

私は大学から京都に来たんですけど、人見知りで、とにかく慣れるのに精一杯。
何とか四年間乗り切ったって感じです。

大学生時代に、ちょうどリーマンショックで就活活動がすごく厳しかったこともありますが、
なんとなく過ごしてきた四年間、もっと勉強したいと、大学院に進学することに決めました。
計六年間大学に通ったのち、本格的に就職活動をします。

今の会社は、名前は知っていましたが、呉服屋が何をしているのかもぼんやりだったし、特に着物業界を志望していたわけでもなかったです。

確か就活のサイトで他社エントリーして、その後に「ここをエントリーした人はこんなところもしています」とピックアップされたのがゑり善でした。

ここも応募しておこうみたいな感じだったと思います。

ゑり善を志望される方は「伝統産業」とか「伝統文化」に興味のある方が多いのですが、私は「老舗の会社は長く続いている理由があるのだろう」という考えでした。

ゑり善の企業理念の「正商」に共感したことが、入社の決め手になりました。

社内の人間関係や雰囲気はどこの会社でも入ってみないとわからないので、就活の時にはまず企業理念はしっかり見るようにしていました。

ゑり善 京都本店店内。着物や和装小物が立ち並ぶ。

【入社当初】普通のお買い物と全然違う…

基本的に店頭で一般職として仕事をしています。

業務内容は、お客様への接客、販売、小物の管理、受付業務、営業の方の接客補助、着付け、その他事務作業などがおおまかな仕事です。

呉服屋の接客の仕方は今まで自分が経験してきた店員さんに「これください」という接客とはまるで違う。

ほんとにゼロから。お客様のお話をおうかがいして、ライフスタイルやお好みなどを考慮した上でこちらから提案して、というような様子。

そんな接客に慣れるのに必死でした。

高級呉服店なので、それなりのプライドを持たないといけないと思って、「こうじゃないといけない」、「自分がお客様目線になってみて気になるところがあるようなお店じゃいけない」と頭がガチガチになっていました。

特に入社したての頃は大変でした。一緒に入社した同期は着物が好きで、自分で買ったり着てお出かけしたり、お茶もやっていたりなど経験のある人だったので、まず入ったときから違うんです。

知識も熱量も違うし、同じ土俵では勝負できないなって思いました。

何が私にできるか。勉強して着物の知識を得る、それは当然のこととして、じゃあ私は何をしたら並べるかなって考えたときに、サービスの面で先輩がパパっとお茶を出したり、スッと片付けたりっていうのを見て、先輩がやっていることを次は私が先にできるようにしようっていう。気づかいで頑張ろうって。

今思うと、会社の中に居場所が欲しかったのかなと思いますね。何で認められたらいいんだろう、一つ自信もって誰にも負けないっていうものを見つけないとって。

それが包装ですね。みんなの前で一番ですっては言わないですけど、自信は持ってます。

きれいにしますよ、任せてくださいって思ってます。

【2年目~】大きな山は時間とともに越えていた

店頭のリーダーになったことと、それと同時期に新入社員の研修の担当になったことが
私のキャリアの中では大きな山でした。

「何でも自分でやらなきゃ」ってなってしまって。リーダーは年功序列ではなくて、

十年以上上の先輩もいながら、中堅の自分、その下に入ってきたばかりの若い子たちというちょうど三段階に分かれてるんです。

その中で自分がしっかりしないと、全部自分でやらなきゃって抱え込んで、それで精神的にも身体的にも辛かった時期がありました。

こういった体験談だとどうやって乗り越えたという話になると思うんですけど、私の場合は決定的に解決する何かはなくて。

なんとなくその状況でもがいている中で、何かが少しづつ変わっていって、自分の中でもちょっとずつ気持ちの整理ができるようになって、他の方のサポートも受けつつ「自分で抱え込まない」「他の人に任せる」という選択肢を選べるようになって、心に区切りがついたのかなって感じです。

時間が薬になったのだと思います。

〈野﨑〉Q.仕事で嬉しかったことは?

店頭での配属になって、人見知りで、人と話すのが苦手なのにやっていけるのかなって毎日すごく緊張してました。

毎日先輩に背中を押されながらやってたんですけど、そんな中入社してから二か月後に飲み会があったんです。

そのとき十年上の先輩が「廣政さんって人が好きなんだね、今日のお商売見て思った」って言ってくれて。そんなこと言われると思ってなかったので、それが今でも頭の中に印象的に残ってます。

そうやって見てくれてる人がいるんだって、販売直後ではなく飲み会の時に言ってもらったのが一番最初に嬉しいなって思ったことです。

〈古津〉Q.人に仕事を任せるのは怖くないですか?

今まで全部1人でやっていた仕事を他の方に任せるのはもちろん怖いです。

私の場合、仕事を誰かに振り分けるっていうのは、なんだか無責任に人に仕事を押し付けてしまう感じがして。

最後は相手に対する信頼だと思います。

その仕事を振り分けるにあたって、引き継ぎ先が決まっていることもあるんですけど、

「この仕事は誰々さん」っていう風に、推薦できるのであればやっぱり自分の直感と、相手の能力を信頼しようと思って。

仕事を引き継ぎしたらもう自分は知りませんではなく、相手には「いつでもサポートしますよ」っていう気持ちを伝えて安心して仕事に取り組んでもらうことが大事だと思います。

ギリギリで引き継いで自分が困った経験もあるので、自分がお願いするときはちゃんとしたいなという思いはあります。

〈野﨑〉Q.趣味にされている絵画鑑賞や寺院訪問の魅力は?

仕事以外に大切にしている時間は、絵画を見に行くことと、あとは最近お寺に行くことです。

絵画をいろいろ見てると、「あ、これ!」ってピンとくることがあって、この絵をずっと見ていたいなって思って無心になれるときがあります。「こういう時間は大事だな」って思うようになりました。

それと同じような感覚で、お寺に行って手を合わせたり、お庭を見ていると、頭がすごいクリアになって、何も考えずに無でいられる感覚になることがあって。

自分だけの空間というか、自分も一体化できるようなそういう時間を持てるのは京都ならではだと思います。

〈古津〉Q.アルバイトの経験で今に活きていることはありますか?

大学院生のときにホテルのアルバイトと、学内で図書館司書関連の手伝いをしていました。

接客の質という面では今の仕事とホテルは近かったなと思うんですけど、与えられた仕事をとにかくやらなきゃという感じでしたね。

高級ホテルだったので、周りで働いているホテルマンの方たちを見て、
「高級店でプライドを持つ」ということがどういうものなのかを学ばせていただきました。

あとは、私が最初に担当したのが朝食サービスで、出勤が早かったんです。

その中でも一緒に電車に乗る人がいたり、ぽつぽつ明かりがついてたりするのを見て、
「自分が休日だと思って休んでいる時でも仕事をしている人がいるんだ」っていうのは強く感じました。

なので、土日に働くことに関してのギャップはありませんでした。

インタビュー中の廣政さん

その②へつづく



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