見出し画像

ショパンをハ調に転調して弾こう

初心者がショパンの楽譜を見ると、フラットやシャープの数が多くて面食らうだろう。

エチュード10−5

20歳でエチュードを書いたショパンは、作曲家であるとともにピアノ教育の理論家だった。

その彼の持論が、「人間の手はハ調に向かない」だった。

人間の手の形には、「嬰ハ(変ニ)」や「変ト」の方が自然である、と、そう考えていた。

彼の「エチュード」は、その理論を証明するために書かれたと見ることができる。

作品10の1番と2番で、シャープとフラットがつかないハ調(とイ短調)がいかに弾きにくいかを示し、それ以降で、シャープとフラットがたくさんついた嬰ハや変トがいかに弾きやすいかを示す。

今のピアニストは、みんなショパンの「エチュード」で訓練を始めるから、ショパンの理論に自然に納得してしまう。最初はとっつきにくいと思っていた嬰ハなどが、慣れてくると確かに弾きやすい、と。

だが、ショパンの理論には、2つの穴があると思う。

1つ目は、ショパンのいう弾きやすい調は、読譜しにくく、暗譜しにくい、ということ。

2つ目は、ショパンのいう「弾きやすい」効果は、速い曲では有効だが、遅い曲ではそれほどではない、ということ。

(3つ目として挙げるなら、たまたまショパンの手の形がそうだっただけで、全ての手に適用できるかわからないこともある)

ショパンのような天才や、プロを目指して訓練する人にとっては、1も2も、問題ではないかもしれない。

しかし、別にプロになるつもりはない、素人のピアノ愛好家にとっては、「ショパンの理論」は障害になるのだ。ショパンの音楽を楽しむために、彼の「理論」が邪魔になる、というか。

ショパンの音楽が絶対的に偉大であるとしても、彼の「理論」が同じであるかはわからない。

(モーツアルトが、ショパンの持論と同じ事実を知っていたとしても、シャープやフラットがたくさん付いた楽譜を書いたとは思えない。また、モーツアルトのハ長調ソナタを変ニ長調に転調した方が弾きやすいと言う人もいないだろう)

何が言いたいかというと、ショパンの曲のいくつかは、ハ調のような読譜しやすい調に転調(移調)した方が、弾きやすい、と私は思うのだ。

エチュードやワルツのような速い曲は、確かに原調のままが弾きやすい。

だが、例えばノクターンの最高傑作、Lentoの第8番(作品27の2)が、変ニ長調である必要があるのか?と思う。

ノクターン27ー2

この曲などは、半音下げて、ハ長調にした方が、読譜・暗譜がはるかに容易になり、しかもそれほど弾きにくさを感じない。

絶対音感がある人は頭の中で不協和が生じるかもしれないが、私は幸い相対音感しかないので、問題はない。むしろ、この曲調には、半音下がった方が合っていると思うほどだ。(どうしても原調がいいなら、半音高くチューニングすればいい。電子ピアノなら容易だ)

他の曲はどうか、これから試したいが(同じ変ニ長調の「子守唄」をハ長調にする、嬰ヘ長調の「舟歌」をヘ長調かト長調にするのはどうだろう)、とりあえず私の発見とアイデアだけ書いておく。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?