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4chで聴いた「海洋地形学の物語」

9月に来日するイエスは「海洋地形学の物語」を演奏するという。

イエス、まもなく来日! 再評価めざましい『海洋地形学の物語』から、イエス史の陰に隠れた名曲群まで(rockin'on 編集部日記 2024/8/11)


「海洋地形学」を語るスティーブ・ハウのインタビュー記事を読んでいて、1973年に4chステレオで「海洋地形学」を聴いた記憶がよみがえった。

うちは貧乏だったが、うちの隣は金持ちで、当時最新のオーディオである4chステレオを持っていたのだ。


4chステレオは、通常のステレオに、2台のリアスピーカー用の信号を追加した方式で、1970年代のごく短い期間だけ流行った。

イエスの「海洋地形学の物語」は、まさにそのブームの真っ最中に出た。

4台のスピーカーを置くので、それなりの広さの居間がないといけない。隣は金持ちだから居間も広かった。

なお、わたしが「海洋地形学」の2枚組レコードを買えたはずはなく、別の金持ちの友達から借りた。


わたしは「海洋地形学の物語」に感動したが、その感動の半分は4chによるものかもしれない。少なくとも、記憶に残っているのは4hのせいだ。

4chステレオは、オイルショックによって1970年代のうちに滅びた。


それに付随して、10代のころに経験したオーディオのあれこれを思い出した。


1970年代、わたしが中学・高校のころに流行ったのは、なんといっても「ツートラ・サンパチ」と「カセットデンスケ」だ。

「ツートラ・サンパチ(2トラ・38)」はオープンリールデッキの高音質仕様で、「カセットデンスケ」は、高音質カセットテープに対応したソニーの録音機である。

ソニーのカセットデンスケ


当時、デンスケにあこがれなかった男の子はいないのではないか。

でも、わたしの手には入らなかった。

ただ、TEACの「ツートラ・サンパチ」は、高校時代に新聞配達や郵便局の年賀状仕分けバイトをして手に入れた。

FMからの「エアチェック」で、当時話題だったルービンシュタインのピアノ、バレンボイム指揮の「皇帝」を録音し、それを聴いて気分を上げていた。「共通一次」の受験日の朝も聴いたと思う。


多チャンネルブームは最近もあって、わたしも「ホームシアター」用に5.1chの装置を試したことがあったが、すぐ飽きた。

一時期、映画のDVDも5.1ch仕様で出ていたが、もうやっていないのではないか。

ともかく、4chで聴いた「海洋地形学」のような感動はなかった。

デンスケの録音くらいのクオリティは、いまではスマホで録れるだろう。


最近、デイヴィッド・ハーウィッツが「また、あの馬鹿らしいCDとレコードの比較論議が始まった」という話をしていた。

Chat: I Can't Believe The "CD vs. Vinyl" Controversy Is Back (David Hurwitz 2024/8/11)


オーディオにさまざま苦労してきた世代としては、ハーウィッツ同様、あの面倒な「ビニール」に戻る気などまったくない。

こっちは、もう音質にあれこれ悩みたくない。音楽に集中したいのである。


わたしは最近では、中古で買ったMacbook Airから流れてくる音楽で十分に満足している。(昔のパソコンの音とは別次元のいい音がする)

もはやオーディオセットは必要なく、CDのようなメディアも必要なく、ラップトップ一つあれば十分なのだから、本当に夢のような時代になったものだ。


でも、昔のオーディオ業界が、あの手この手で提供してくれた「夢」と、音の思い出には感謝している。



<参考>


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