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映画館で映画を(5)

こうなったら、
最後までお付き合いくださいませ。😅

これまでのお話は

***

「柿葉さん…… これ、まずいよ。
 まじ、緊急手術だわ」
そう言って見せられたCTで
何が起きているか
すぐわかった。

私の頭蓋骨の左脳と右脳は
きれいに仲良く並んでおらず
左の方へぐいっと押しやられて
歪んでいた。

慢性硬膜下血腫
頭を強く打ったときに
傷ついた小さな血管から
じわじわと出血して
1~2ヶ月かけて溜まったもの。

救急現場ではよく聞く病気の一種

でも
問題はその程度で
出血の量によっては
脳幹部を圧迫して
呼吸が止まってしまうことも
ないこともない。

すでにかなりシフトしており
緊急に血腫を取り除く手術が
必要だった。

「これじゃ仕方ないですね」
そう言って、
職場に連絡をとろうとすると

付き添っていた看護師長が
あっという間に采配してくれて
迎えに来てくれた同僚の車で
たちまち救急センターへ連れて行かれた。

今日は、彼女のために
でかけてきたのに
なぜか、彼女によって
救われることになった。

振り返ると
彼女はずっと手を振っていた。


救急センターでは
顔見知りの人たちに
驚きとも呆れ顔ともつなかい
様々な表情で迎えられ
何百回も聞いた
手術や入院の説明を
「はいはい」と聞きながら

諸々の術前検査に加えて
痛いPCRの検査を受け
陰性を確認したあと
手術室へ入った。

直前にオットくんと第二弟に
LINEで事情を簡潔に伝えた。


慢性硬膜下血腫の
血腫除去術は局所麻酔で
行われる。

ウトウトはするが
意識はなくならない。

だから
術者の会話が聞こえてくる。
「しっかりやってよー」と
思いながら
またとない体験を味わう。

髪は剃らなくていいからよかった。
ドリルで頭蓋骨に穴を開けるのは
さすがに気持ちいいもんじゃない。
「脳に刺さったりしないのかな?」
こんな時は途端に素人になる。

じゅるじゅるじゅる
と耳元で血腫が吸われていく。
100ml以上溜まっていたらしい。

じゃばじゃばと生理食塩水で洗う。

最後はホチキスでパチンパチン
と皮膚を止めて終わり。
脳外科医にとっては簡単な手術だ。


病室へ帰って
しばらくしてスマホを開くと
第二弟からのすさまじいLINEの数。
意外と心配性だってことを知った。

オットくんは動揺もせず
一度病院へ来て
手続き等をしたあと
さっさと自宅へ帰っていた。
意外と冷静だってことを知った。
びっくりしすぎて
頭が回らなかったのだろうか。


頭痛は軽くなったような
気がする。
でもホチキスのところが痛い。
それぐらいしか
考えられなかった。


<つづく>

***


タイトル画像は”麦田ひかる”さんにお借りしました。


コメントは……いりません。(笑)
そんなことがあったのかぁと
読んでいただけるだけで、いいんです。

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