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パレスチナとわたし:記憶は匂いとともに〈エッセイ〉

いろんなものの匂いが好きだという方はいらっしゃるでしょうか。

場所や人から立ち上る匂い。私は五感のなかで嗅覚が一番効くので(多分)、昔から土地の記憶には匂いが結びついて、視覚的な情景より匂いが先に思い出を運んできたりします。

日本国内であれ異国の地であれ、訪れるそれぞれの場所には匂いがありますが、パレスチナの匂いは市場(スーク)から運ばれてくるものです。

中東料理に欠かせないスパイス類とアラブコーヒーが混ざり合うその世界を空想の内に蘇らせれば、たちまち気持ちはパレスチナへ寄り添って、微笑みが浮かびます。

ある土地を再訪する。それは巡礼に似た、自身のルーツや価値観を再確認する旅でもあると思います。そのとき私は匂いから「帰ってきた」と感じるのです。

パレスチナの市場の匂いが特別なのは、あちらに暮らす家族がいつもお腹いっぱい食べさせてくれるごはんと、もう何杯受け取ったか分からないコーヒーと結びつくから。市場を歩きながら、心はもう家路に。単にエスニックな対象としての香りではないのは、パレスチナの人に招き入れられた旅人みんなにとっての、家庭の匂いだからなのです。


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