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カカオの短編集

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カカオが書いた短編小説を収録しています。コメディからSFまで幅広くカバー。お好みの小説があれば幸いです。
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閃きが欲しくて…。短編小説『白い空に助けを求めた結果』

閃きが欲しくて…。短編小説『白い空に助けを求めた結果』

※有料記事ですが最後まで読めます。

 青空は嫌いだ。

 あの無遠慮な態度がいけ好かない。

 僕を干し肉にでもするつもりか。曇れ。

 白い空スバラシイ。

 あの控え目かつ癒してあげるといわんばかりのカラーは白しかあるまい。

       *

 首より下は灼熱だけれど、頭部さえ涼しければ頭も冴える。
 僕の脳細胞は今まさに活性化され、回転速度の限界を超える。

 閃け、閃け。
 次の展開

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夢中になるのはいいことだけれど。短編小説『真夜中の道具屋』

夢中になるのはいいことだけれど。短編小説『真夜中の道具屋』

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「ううむ……」

 売り上げが芳しくない。
 私はもう三度目になる金勘定に臨むかどうか思案していた。
 いや、何度数えたところでこの道具屋の売り上げが下がっていることに変わりはないのだが……。
 表に出て、道を挟んで向かい側に最近できた道具屋の様子をうかがう。

「安いよ安いよ~! やくそうが5つで30ゴールドでどうだぁ!」

 やたらと響く声で店員の青年がや

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留年確定した俺が敗者だと思ったら…。短編小説『ルーザーは誰なのか』

留年確定した俺が敗者だと思ったら…。短編小説『ルーザーは誰なのか』

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「ハァッ、ハッ、ハ!」

 腕を速く振ると速く走れると、小学校の時に教わった記憶がある。
 先生は十中八九、速く走れるようになるために俺にそう教えてくれたんだろうな。
 けどさ、先生は

「どうして速く走らなければならないのか」

 までは教えてくれなかった。
 それはきっと、もっと成長してから自分で気付くことなんだろう。
 俺は今、そう確信している。

 先

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なぜ彼女は赤色の絵の具を使う僕を否定するのか。短編小説『カラス空』

なぜ彼女は赤色の絵の具を使う僕を否定するのか。短編小説『カラス空』

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 どす黒い、と彼女は言った。
 僕は赤い絵の具を使って絵を描いている。
 筆に浸した赤色が、僕にはとても眩しく見える。
 でも、彼女は僕の色選びがまちがっていると言いたいようだ。

「だって、アナタの体から流れてる血はもう赤くないわ。時間が経ちすぎてる」

「わかってる。ただ、血の色ぐらい活き活きとした赤で表現させてよ」

「それに何か意味があるの?」

「抵

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悪魔たちを倒して世界は平和になったが…。短編小説『小悪魔との夕餉』

悪魔たちを倒して世界は平和になったが…。短編小説『小悪魔との夕餉』

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 朝、ベッドから身を起こし、伸びをした。
 カーテンの隙間から差し込む朝日が、シーツにできた皺の陰影を濃くしている。妻が起きたときにつけた皺だろう。
 シーツに触れてみると、まだ彼女のぬくもりが残っていた。
 僕は何気なくその皺を伸ばした。
 掌にすーっと優しい触り心地を残しながら、シーツはきれいに整えられた。
 今日という日を始める土台が整ったような気分にな

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トーチャンがおれを山に置き去りにした。短編小説『アナタ博物館』

トーチャンがおれを山に置き去りにした。短編小説『アナタ博物館』

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「ったく、トーチャンめぇ、何も置いてくことないじゃんかよ~」

 おれは地面に転がってる石ころを思いきり蹴り飛ばした。
 石は木に当たった後にコロコロ転がって見えなくなった。
 山の中ってどこも同じに見えるなぁ。

「……どこだろ、ここ」

 まわりは背の高い木ばっか。
 葉っぱばっか。
 土ばっか。

 あぁ、ゲームやりてぇ。
 くっそー、トーチャンが

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妻の体は弾丸でも貫けない。短編小説『今年も、来年も、ずっとよろしく』

妻の体は弾丸でも貫けない。短編小説『今年も、来年も、ずっとよろしく』

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 ごー。

 よーん。

 さーん。

 にー。

 いーちっ。

 明けましておめでとうざいますっ!

       *

 ネットで渋谷の様子が生放送されているのを、私は炬燵に入って温まりながら眺めていた。
 年越しカウントダウンをするために、若者たちが集まってワイワイとはしゃいでいる。私は苦笑いを浮かべた。

『どうしたの?』

 妻が私の様子を怪訝に思

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路上喫煙するとオートマトンに射殺されます。短編小説『喫煙所が全国で一箇所だけになった結果』

路上喫煙するとオートマトンに射殺されます。短編小説『喫煙所が全国で一箇所だけになった結果』

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 日本国内の喫煙所が一箇所だけになった。
 路上で歩き煙草などしようものなら、煙をかぎつけたオートマトンがやってきて、腕に内臓された機関銃で蜂の巣にされる。

 それは事実上の喫煙者への死の宣告とも受け取れる事態で、嫌煙家にしてみれば「これでようやく平和が訪れる」とホッと胸を撫で下ろしていたことだろう。

 だが甘かった。

 全国唯一の喫煙所がある都内某所の

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鋭さのベクトルが違う…。短編小説『仕事をしたことのない暗殺者』

鋭さのベクトルが違う…。短編小説『仕事をしたことのない暗殺者』

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 勘の鋭さにかけては天下一品と呼ばれている暗殺者がいる。
 彼の勘はもはや予知、未来視、いやタイムトラベラーなのではなかろうか、とまで噂されるほどである。

 だが。

 彼に仕事を依頼する者はほとんどいない。
 なぜなら、彼の勘が鋭すぎるからだ。
 今日は、彼にまつわるひとつのエピソードを紹介しよう。

       *

 噂の『タイムトラベラー』と仕事が

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どうしてそんなことを訊くんだ?短編小説『水が水である理由。ボクが男である理由』

どうしてそんなことを訊くんだ?短編小説『水が水である理由。ボクが男である理由』

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「これ、なんだと思う?」

「何って、水だろ」

 テーブルの上にはガラスのコップに入った一杯の水がある。
 どこからどう見てもただの水だ。
 けど俺の友達はそこになぜか疑問を持たせようとする。

「本当にそう思う? 日本酒かもしれないよ」

「あ、確かに」

「でも水かもしれない」

「どっちだよ」

「飲んで確かめてみればいい」

「いやムリだろ」

「ど

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世界が平和になるとご飯が食べられなく人もいる。短編小説『平和に仕事を奪われましたが何か』

世界が平和になるとご飯が食べられなく人もいる。短編小説『平和に仕事を奪われましたが何か』

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 俺は最後のカップラーメンを食べ終え、ごろりと横になった。

「あぁ……」

 意味の無い呻き声をあげ、床に転がっているリモコンを手に取りテレビを付けようとするも、電源が入らない。ああん?

「あ、そういや電気止められてたんだったな。……くそっ」

 リモコンを放り投げ、不貞寝をすることにした。
 昼間だから窓から入る自然光でいいけど、夜はどうっすかなぁ……。

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八人のお兄ちゃんがわたしの邪魔をするんだけど!短編小説『八人の使えないボディガード』

八人のお兄ちゃんがわたしの邪魔をするんだけど!短編小説『八人の使えないボディガード』

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 わたしにはボディガードが八人いる。
 もとい、八人のお兄ちゃんがいる。
 ボディガードのようなものだけど……。

       *

「趣味は?」

「家族構成を述べよ」

「交際に至った経緯について聞かせてくれ」

「つかさー、コイツのどこがよかったん?」

「料理できると助かるねぇ。うちの妹、てんで料理ダメでさ」

「高校二年とのことだが、進路はどう考

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魔法戦争後、墓参りをする少女は何を思う。短編小説『セカイを壊したからセカイを平和にした』

魔法戦争後、墓参りをする少女は何を思う。短編小説『セカイを壊したからセカイを平和にした』

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 青空の下、ひとりの少女が墓場を歩いている。
 彼女はズラリと並ぶ無個性な墓石の中、ひとつの前で足を止める。
 墓石には少女の母の名が記されている。
 母の名はアガサ。
 少女の母にして、魔法の始祖でもあった。
 革命と混沌と戦争を引き起こした張本人ともされていて、今では世界中から忌み嫌われているけれど。

「ふんっ、レイラも熱心なこったな」

 少女――レイ

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俺の英語の何が間違ってるってんだよ!短編小説『ソレハ、ボウソウ、ダゼ』

俺の英語の何が間違ってるってんだよ!短編小説『ソレハ、ボウソウ、ダゼ』

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 中学に入学してから二ヶ月が経過した。

 小学生のときと何が変わったかって、色々と変わり過ぎて正直言って俺はついていけてねえ気がする。
 制服は窮屈だし周りは急に大人びた感じになっちゃうし、何より英語がヤバイ。ヤバ過ぎる。

 ぜーんぜん理解できてないよ、俺……。

 制服の窮屈さは我慢するし、周りの背伸びにも付き合ってやるさ。
 でもな。
 英語だけは勘弁

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