俺の英語の何が間違ってるってんだよ!短編小説『ソレハ、ボウソウ、ダゼ』
※有料記事ですが最後まで読めます。
中学に入学してから二ヶ月が経過した。
小学生のときと何が変わったかって、色々と変わり過ぎて正直言って俺はついていけてねえ気がする。
制服は窮屈だし周りは急に大人びた感じになっちゃうし、何より英語がヤバイ。ヤバ過ぎる。
ぜーんぜん理解できてないよ、俺……。
制服の窮屈さは我慢するし、周りの背伸びにも付き合ってやるさ。
でもな。
英語だけは勘弁してくれ……。
どうもあれは俺と相性が悪いみてえなんだよ。
*
その日の英語の授業中、恐れていたことが起きた。
先生がこともあろうに俺を当てて、教科書の英文を読めと言ってきたのだ。
その先生は外人で、長い金髪をポニーテールにした女の先生だった。
先生にしちゃあ若いと思う。
30ぐらいかな、たぶん。
「デハ、キョウカショ、ヨメヤ」
奇怪な日本語で先生は指示した。
ヨメヤて……。
どこで日本語を覚えたんだよ。
自分の席から立ち上がり、冷や汗を垂らしつつ俺は教科書の英文を読み始める。
「いず……いず……」
なんだよイズってさ。
伊豆と何が違うんだよ。
死ぬほどどうでもいい思考が脳裏をよぎる。
雑念を振り払い、俺は英文を読み進める。
「いず、でぃす……ゆわ、ぺん?」
なんだろ、教室がシーンとしてる。
え、違うの?
俺の英語、間違ってる??
発音がおかしいのか??
噛んだのが変ってか!?
頭が急激に熱くなってきた。
俺は日本人なんだよ。
国語頑張ってりゃあいいんだよ。
何かが、キレた。
し る か!
キレたのは俺だった。
「やってられっかよ!」
俺は教科書をたたきつけた。
これまで溜まりに溜まった鬱憤が弾けた。
教室はさらに静まっていく。
沈黙が降りた。
ああもういいや、保健室行って寝てるか。
ヤケクソになっていた俺を教室に留めたのは、先生の一言だった。
「ノーノー、ソレハ、ボウソウ、ダゼ」
先生は無表情に口にした。
え、「それは暴走だぜ?」って?
途端、教室は爆笑の渦に呑み込まれる。
俺はというと、状況が読めず呑まれる。
「ジャア、オメェ、ヨンデミソ」
それから何事もなかったかのように、先生は別の生徒を当てて読ませていた。
爆笑され、その後完全に無視された形で居心地が悪くなり、静かに着席した。
これ以上暴れたら、なんかもういたたまれない……。
*
授業が終わった後、英語教師はトイレの個室でガクガクと震えていた。
「日本の生徒怖いよ! どうなってんのよ!?」
彼女は日本語がよく分からない振りをして誤魔化していただけだった。
※あとがき
『これはペンですか?違うわ、それは暴走』というお題を元にして書いた即興小説を、加筆修正した作品です。
奇怪すぎるでしょこのお題w
でもどんなに意味不明なお題を出されようとも時間内に小説を書ききるのが即興小説。
僕はいつも制限時間を30分にしてるので必死ですよw
それはまあともかく、中学に入学してついていけなかったというのは、リアルに僕のことです。
英語は問題なかったんですけど、周囲が急に大人びていく中で、自分だけ全く変わっていないことに疑問を持っていました。
今考えてみると、アイツらが背伸びしてただけだったんだなーと鼻で笑えますが。
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