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演奏家という仕事

演奏をすることも、聴くことも私は好きで、演奏を生業とする友人が身近に沢山いるので、その友人たちの演奏会に足を運ぶことは多い。ちなみに昨年はコンサートに合計25回赴いた。

クラシックという音楽のジャンルは、基本的には過去の曲を再演することがほとんどだ。
厳密にはクラシックのジャンルの中には現代曲もあるので、新曲がないわけではない。

クラシックの名演、名盤はあまた存在しているわけだが、では最高の演奏がされたら、もうその曲は演奏される必要がないのかといったら、もちろんそんなことはない。

私が思う演奏者の役割の1つは

クラシックの曲をコンサートで演奏し続けることによって、その曲に出会う人の媒体者になることである。

誰でも楽譜が読めるわけではないし、もちろん読めたとしても音楽を聴く楽しみがある。


そして、演奏家はストーリーテラーでもある。

より体験価値を高めるために、ストーリーや背景を語る。最近は開場してから開演までの間、前説が入るコンサートは本当に多くなった。また演奏の前後にも作品の解説をされることもある。

クラシックのコンサートにおいて、一曲だけの演奏会というのはほぼない。
演奏家はその演奏会を豊かな体験にするため、様々な工夫を凝らし選曲を行う。

以前友人のコンサートでこんなことがあった。
ピアノとヴァイオリンのコンサートで、演奏中ヴァイオリニストの弦が切れてしまったのだ。

演奏は一時中断し、会場からはヴァイオリンの弦の張り替えの間「何かピアノの曲を弾いて欲しい」という声が上がった。
その時ピアニストが言ったのは、「コンセプトに基づいて選曲を行なっているため、違う曲を演奏は致しません。」と。
確かに、客からしたらその時間いっぱい楽しませて欲しいというのはわかる。
しかし、その演奏会におけるストーリーを崩さずに音楽を体験してもらいたいという意図を私は感じた。


ところで、今年のオーストリアのリンツで行われたアルスエレクトロニカで、グレングールドのAIによる演奏の再現が行われたらしい。聞くところによると、残念ながらあの鼻歌はないらしいが。

『Dear Glenn』―伝説的ピアニストに捧げる、AIと人間の共創を追求するプロジェクト
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https://youtu.be/wmn0vKs_2dM**
・伝説的ピアニスト グレン・グールドのタッチやテンポでピアノを演奏できる世界初※1のAIシステムを開発
・グールド未演奏曲の披露や、現代の名演奏家との共演にも挑戦したコンサートの様子を動画で公開
・AIと人間の共創の可能性について議論を深め、新しい音楽表現のあり方を追求
YAMAHAのニュースリリースより
https://www.yamaha.com/ja/news_release/2019/19082901/

過去の演奏家も今まで演奏していない曲を弾く時代になったらしい。

もちろんこういう取り組みもとても面白いと思うし、一方で生身の人間の成長を追いながら、大きなストーリーとしての人間による演奏もまた素晴らしいと感じる。

演奏家という職業は、一元的見方をしない限り、AIに脅かされることはないと私は思う。


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