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ベジ議連第7回リポート

2021年12月21日、衆議院第二議員会館にてベジ議連(正式名称は「ベジタリアン/ヴィーガン関連制度推進のための議員連盟」)の第7回総会が行われました。※これまでの議連のリポートはリンクからご覧ください(第1回第2回第3回第4回第5回第6回)。

前回(2021年5月26日)から間が空きましたが、その間、ベジタリアン・ヴィーガンJAS規格制定について民間団体等との意見交換会が複数回行われています。(2021年5月11日から、議連とは別に「ベジタリアン・ヴィーガンJAS規格プロジェクトチーム」による議論が行われており、これについては、第1回第2回第3回第4回のリポートをリンクからご覧ください。)

河村建夫会長の政界引退により、新たに山口俊一衆議院議員(自民党)が会長に就任し、「自分はベジタリアンではないが興味は持っており、議員の皆さんと一緒にこの問題に取り組んでいきたい」との挨拶がありました。なお、山口議員はベジ議連と同じく河村建夫元官房長官が会長を務めていた超党派の「フードテック振興のための議員連盟」でも新たに会長に就任しています。また、2021年10月31日の総選挙を経て議連に参加する議員の顔ぶれにも変化があり、他の役員については山口会長と松原事務局長に一任するということで賛同が得られました。

第7回総会出席者

ベジ議連役員

会長:山口俊一衆議院議員(自民党) 事務局長:松原仁衆議院議員(立憲民主党)、河村建夫前会長

第6回総会出席議員(順不同)

桜田義孝衆議院議員(自民党)、神津健衆議院議員(立憲民主党)、石井苗子参議院議員(日本維新の会)、岸本周平衆議院議員(国民民主党)、川田龍平参議院議員(立憲民主党)、杉本和巳衆議院議員(日本維新の会)

以下、発言のあった議員のコメント(要約)を紹介します。

石井議員「保健師としてヴィーガンの研究もしてきた。2025年大阪万博に向け、たこ焼きやお好み焼きなど、ベジタリアン・ヴィーガンの粉物の環境整備も急ぎたい」

神津議員「海外経験が長く、アメリカ留学やアフリカでベジタリアンについて知る機会があった」

川田議員「『地域在来種苗の保存・利用等の促進に関する法律案』(通称・ローカルフード法案)提出を目指している」

ベジ議連副会長を務めてきた岸本議員は議連総会はこれまですべて出席、また同じく副会長だった杉本議員も「自分はベジタリアンなので貫徹したい」とコメントしていました。

第6回総会出席関連団体・事業者(順不同・敬称略)

垣本充(日本ベジタリアン協会代表)、川野陽子(ベジプロジェクトジャパン代表)、塚平高裕(㈱ニッコクトラスト営業管理部部長)、利根川正則(㈱グローバル・メディア代表)、宮澤亮(グリーンカルチャー株式会社 マーケティング部広報チームリーダー)、室谷真由美(日本ヴィーガン協会代表)、ナディア・マケックニー(東京ヴィーガン 共同代表)※Zoom参加、富永俊一郎(日本ヴィーガン協会理事)※Zoom参加、橋本晃一(日本ベジタリアン協会事務局長)※Zoom参加


行政側出席者

農林水産省(大臣官房新事業・食品産業部食品製造課基準認証室 西川真由室長、安井義徳課長補佐当)、観光庁(外客受入担当 片山敏宏参事官)、東京都庁(東京都産業労働局観光部 阿久沢達也事業調整担当課長、松本明子総務部長)、千代田区(商工観光課 末廣康二課長、山口茉生主事)、台東区(観光課 大垣祥主任)、八王子市立浅川小学校・清水弘美校長

東京・八王子市の浅川小学校は2021年5月から日本の公立小で初めて通常メニューとしてヴィーガン(プラントベース)給食を導入しています。浅川校長からは「給食は単に空腹を満たすためのものではなく教育活動の一環であり、プラントベース食への理解を進めることで、よりよい食習慣を身に着けると共に、SDGsに沿った持続可能な社会を作っていくという学習指導要領の理念に基づき、食習慣や考え方の多様性を学ぶことにもつながると考えている」「プラントベース食は、乳製品、卵、魚のアレルギーがある児童も一緒に食べることができ、広い意味でのいじめの予防にもなっていく」とのコメントがありました。

また、観光庁からは「新型コロナの影響でインバウンド需要がなくなり、これまでベジタリアン・ヴィーガンに対応してきた飲食店に休止などの状況が生じている可能性がある。現状の点検を進め、来たるべきインバウンドに向けて正確な情報発信ができるよう環境整備を行っている」、東京都からは「2020東京オリンピック・パラリンピック大会選手村で提供した食事は非常に好評だった。オリパラは終わったが、次のインバウンドに対応できるようハラルやベジタリアン対応は重要な要素であり、これからも東京都として情報発信をしていきたい」との報告がありました。

ベジタリアン・ヴィーガンJAS規格制定について

メインの議事であるベジタリアン・ヴィーガンJA規格プロジェクトチームでの進捗状況について、同プロジェクトチーム委員長である、日本ベジタリアン協会・垣本代表から報告がありました。

・平成30(2018)年12月4日に松原仁議員より衆議院に提出された「インバウンドに対応したベジタリアン・ヴィーガン対策に関する質問主意書」で認証の乱立による混乱への懸念が示された。その後、ベジ議連が結成され、第5回総会において農林水産省からJAS規格制定に向けたプロセスの説明があり、日本ベジタリアン協会が松原議員と相談の上、プロジェクトチームの編成を行い、現在、規格案の検討を行っている。

・プロジェクトチームでは、ベジタリアン・ヴィーガン食品の国際規格として2021年3月に決定されたISO−23662をひな型に、加工食品と飲食店に適用されるふたつのJAS規格案作成に向けてこれまで4回議論を行っており、2022年1月18日開催予定の5回目の会合で規格原案をまとめ、農林水産省に申し出をしたい。

・現時点での合意事項は、「最終製品における2次原料までの動物由来の原料や添加物の確認を行う」「製造会社の当該商品製造プロジェクトにおける動物実験の禁止」「使用禁止の動物由来の原料の例として、ゼラチン、かつおだし、砂糖製造工程中に使用される骨炭等を注記として記載する」ことなど。

・国際基準のベジタリアン・ヴィーガン基準を求める外国人旅行客や国内のベジタリアン・ヴィーガンだけでなく、ベジタリアン志向の人も信頼できる確かなベジタリアン・ヴィーガン食へのニーズが高まっている。食のダイバーシティに応えるべく、日本の特徴を活かし、国際的に評価され外貨獲得も期待される国の公的なベジタリアン・ヴィーガン食品等JAS認証の制定を目指す。

今後のJAS制定の流れについては、JAS原案申出の後、農水省がJAS案を作成、通商広報・パブコメ(30日間)を経て、JAS調査会によるオープンな場での審議・議決を行い、JAS制定・公示となります。農水省の西川室長によれば、パブコメの期間やJAS調査会が開かれるタイミングも関係することから、制定・公示までは最短で半年かかるとのことでした。なお、JAS調査会での制定・見直しの基準としては、①社会・経済の基礎・基盤としての機能、業全体の競争力の強化、新市場の創出などの公益性がある、②規定内容が十分であり、規定水準が妥当である、③利害関係者との意見調整が十分行われている、④関係する知的財産所有者がいる場合、その者との調整が行われている、⑤農林水産政策の目的に適合している、などを満たすこととされています。

神津議員から「海外の商品でもJASは取得できるのか」という質問があり、「基準に合っていれば、国内国外に関わらずJASは取得できる(農水省・西川室長)」との回答でした。

ケージフリーの卵について

農林水産委員会に所属する石井議員からは「アニマルウェルフェアについては国際的に規制が進む動きもあり、今後の輸出入において影響が見込まれる」との声があり、またアニマルウェルフェアを推進する市民団体「ヒューメインリーグジャパン」からも「海外だけでなく日本でもケージフリーの卵の使用が進みつつある。海外展開を視野に入れるならば、JAS規格では、鶏卵は最低でもケージフリーであることを盛り込むことを強く推奨する」との意見が出されました。

ただ、この件については、12月13日に行われた第4回ベジタリアン・ヴィーガンJAS制定プロジェクトチーム委員会で「(ひな型としている)ISO規格ではアニマルウェルフェアについて定めていないことから、今回のJAS原案でも言及しない」という結論が出ています。原案提出後、今後のJAS調査会による審議でさらなる議論が行われるのか、見ていきたいと思います。



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