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第4回ベジタリアン・ヴィーガンJAS制定プロジェクトチーム委員会リポート

2021年12月13日、衆議院第二議員会館にて、「農林水産省ベジタリアン又はヴィーガンに適した食品等JAS制定プロジェクトチーム」第4回委員会が行われました。当初は11月開催の予定でしが、10月31日に衆議院議員総選挙が行われた関係で日程が変更されました。
第1回委員会のリポート(委員会発足の経緯、JASや今回の規格の元となる国際規格ISO-23662の説明、制定に向けた今後の予定など)、第2回委員会のリポート第3回委員会のリポートについては、リンクからご覧ください。

この委員会の直後、代替肉のJAS規格の制定が見込まれるという報道(食品産業新聞 2021年12月15日付)もあり、ベジタリアン・ヴィーガン食について日本の環境整備が加速している印象です。

プロジェクトチーム委員会出席者一覧

「ベジタリアン・ヴィーガンJAS」のプロジェクトチーム委員会(第4回)出席者は以下になります。(敬称略)

【申し出者】および【事業者】認定NPO法人日本ベジタリアン協会代表・垣本充 ※委員長
【学識経験者】高井明徳(日本ベジタリアン学会会長)※司会、中川雅博(ふみ技術士事務所代表)
【食品会社等】不二製油㈱、エスビー食品㈱、マルコメ㈱、(一般社団法人)ジャパンズビーガンつぶつぶ
【小売業】イオン(株)、㈱ファミリーマート、㈱セブン-イレブン・ジャパン
【レストラン】㈱ニッコクトラスト、TOKYO-T's㈱、㈱真
【自治体】東京都観光部事業調整担当課
【農林水産省関係】農林水産省食料産業局食品製造課基準認証室、(独立行政法人)農林水産消費安全技術センター(FAMIC)
【オブザーバー】ベジ議連事務局、(一般社団法人)日本農林規格協会
【ベジタリアン・ヴィーガンJAS制定事務局】認定NPO法人日本ベジタリアン協会事務局長 橋本晃一

委員会には、「ベジタリアン/ヴィーガン関連制度推進のための議員連盟」(ベジ議連)から松原仁事務局長(衆議院議員)も出席し、挨拶を述べました。ベジ議連は、訪日する外国人のベジタリアン・ヴィーガンのための環境整備を目指し、2019年11月に発足した超党派の議連で、ベジタリアン・ヴィーガンJASについても議論を行っています。※これまでのベジ議連のリポートはリンクからご覧ください(第1回第2回第3回第4回第5回第6回)。

今回の議論の主なポイント

これまでの議論を踏まえ、第4回委員会では詰めの議論が行われました。「ベジタリアン又はヴィーガンに適した加工食品JAS」(案1)と「ベジタリアン又はヴィーガン料理を提供する飲食店等の管理方法JAS」(案2)の2つの規格案について修正規格案が示され、以下の点が話し合われました。

今回の規格はアニマルライツ・アニマルウェルフェアについて定めたものではないため、例えば卵のケージフリーなどは規格案には盛り込まれないことが了承されました。ちなみに、今回の規格の枠組みとなるISO23662(ベジタリアン・ヴィーガンに適した食品に関するISO規格)にもアニマルライツ・アニマルウェルフェアに関する記載はありません。とはいえ、JASの取得とアニマルウェルフェアへの配慮を両立させることはもちろん可能です。国際的にもEUを中心にケージフリーへの動きが加速しており、「JASで定められていないから考慮しなくてよい」とは言えない課題だと思います。

・飲食店等を対象とする(案2)で、「ベジタリアンまたはヴィーガンに適した料理を提供する飲食店等」は「主食(主に炭水化物の供給源となる料理)と主菜(主にたんぱく質の供給源となる料理)が一体として提供されるものを1品目以上提供できなければならない」とされました。ただし、スイーツ専門店のような飲食店は、ベジタリアンまたはヴィーガンに適した料理(たとえば、ベジタリアンやヴィーガンのスイーツ)を1品目以上提供できればOKということになりました。

ベジタリアン・ヴィーガン製品に使用する原料について、以前の規格案では「いかなる段階においても」とされていたのを、2次原料まで、該当する動物由来の食材及び添加物を使用していないことを確認する、とされました。出席した委員からは「製造業者が直接使用する1次原料、1次原料を製造する事業者が直接使用する2次原料までは追えるが、それ以上になるとわからないことも多く、製造上の企業秘密として情報開示されないこともある」「異なる製造方法の工場から出荷されたものが混合しており厳密にはわからないと言われる」「メニューが固定されておらず、頻繁に違うメニューを提供する飲食店ではエビデンス入手の負担が大きすぎる」などの意見があり、原料をすべて遡って確認するのは非常に困難という状況がうかがえました。ただし、加工助剤(たとえば、白砂糖精製の過程で使用される動物の骨炭など)や食品添加物のキャリーオーバーといった、食品表示に記載されないものについての情報開示を促すために、JAS規格の注で骨炭など特に注意してほしいものについては記載する案が概ね了承されました。私たちの身の回りにある食品の多くが、非常に複雑な工程を経て作られていることを改めて実感する議論でした。

コンタミネーション(ベジタリアン、ヴィーガンに適さない原材料の意図せざる混入)防止の「適切な予防処置」については、農水省によると「事業者が根拠を示して説明する責任がある」とのことで、JAS規格には「どのような措置をしなければならないか」という具体的な基準は示されないことになります。なお、既に食品衛生法においてHACCPが取り入れられており、アレルゲン(特定原材料)と同様の管理ができるのでは、という意見がありました。

・前回に続き、動物性由来の食品と揚げ油の共用を認めるかどうかについても議論が行われました。ISO23662に基づき、規格案ではベジタリアン・ヴィーガンに適した加工食品を作る際にはコンタミネーション防止のため使用する器具等の徹底的な洗浄が求められていますが、フライヤーに関しては例外とできないか、という意見が挙がっていました。「メーカーとしては大規模な油を変えるのはハードルが高い。製造ラインでのコンタミネーションの可能性があるという記載をパッケージに表示できれば、JASを取得する範囲が広がるのではないか」等、難色を示す意見もありつつ、「JASが付いている=安心して選べると考えれば、揚げ油の共用は認められないのではないか」「共用するのであればJASは取らないということにすればよいのではないか」などの声も上がり、揚げ油の共用は許容しないという方向になりそうです。

・ベジタリアンまたはヴィーガンJASがアレルギーがある人にも適しているとの誤解を防ぐために注意書き等による記載が必要ではないかという指摘に対しては、アレルゲン表示については食品表示法に基づく義務表示となっているため、今回の規格に明記する必要はないとのことです。

ピクトグラムによる表示の活用については、会合で議論する時間が限られているので今回は盛り込まず、今後の規格見直し等の際に改めて検討することとなりました。

使用可能資材リストについては、規格制定後、運用の中で検討するとなりました。

今後の予定

当初の予定ではプロジェクトチーム委員会は4回の予定でしたが、細かい確認事項等が残っているため、年明け(1月半ば頃)に追加でもう1回委員会が開催され規格案を決定することとなりました。2021年12月時点では、委員会やベジ議連での議論の後の「通商弘報・パブコメ、JAS調査会による審議・議決を経て、2022年3月のJASの制定・公示」のスケジュールがどうなるかは未定ですが、予定通りの進行が目指されるようです。

読んでいただいて、ありがとうございます!