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体験・サービスのコンセプトのつくり方

MESONは体験拡張企業として、様々な企業とARを使ったサービスや体験をつくっています。

そして、その体験づくりのプロセスの中でまずやることが、コンセプトづくり。
これが最終のサービスのクオリティや方向性を大きく左右します。

コンセプトづくりは、すごく感覚的な部分もあるので捉えどころがないのですが、自分自身がどういった思考プロセスや感覚でコンセプトを考えているかをシェアします。

MESON社内メンバーのコンセプトメイキング能力が上がったり、こうしたプロセスでサービスをつくることに興味を持ってくれた人がMESONで働きたいと思ってもらえるきっかけになれば幸いです!


コンセプトのつくり方の基本的な考え方

最初に結論を書いてしまうと、コンセプトをつくるということは、「あるべき世界と現実世界のズレを見つけ、そのズレを解消する最短経路を見つけること」だと思っています。

コンセプトのつくりかた.004

順を追って説明していきたいのですが、まずコンセプトとはなにか?

コンセプトとは「サービスや体験に対するブレない一貫した考え」であり、サービスや体験をつくるとき常に判断やアイデアの拠り所となるものです。

コンセプトを因数分解すると以下のようになると思います。

コンセプト
= 解きたいと思える問い + シンプルだけど新しい解決法 + 記憶に残る表現

以下で順番に各要素がどういったものか、それてそれらをどう見つけていけば良いかを解説していきます。

ステップ① 解きたいと思える問いを見つける

コンセプトをつくる第一歩は、自分自身が解きたいと強く思える問いを見つけること

ポイントは、「解くべき問い」ではなく「解きたいと思える問い」を見つけることです

なぜなら、このコンセプトはこれからチームを巻き込み、メンバーの目線を同じ方向に向かせるビジョンの働きを持ち、プロジェクトトップのリーダーシップの源泉となるものだからです。

コンセプトがそういった求心力を強く持つためには、プロジェクトリーダー自身が強く望む景色を反映したものになっていなくてはなりません。

プロジェクトによってはデザイン思考的な課題にフォーカスを当てた問いではなく、未来を妄想し、そこで作りたい世界像=ビジョンから問いを作った方が良い場合も多々あります。

では、この「解きたいと思える問い」をどう見つけていけばいいかというと、「あるべき世界と現実世界のズレを見つけること」だと思っています。

自らが世の中はこうあるべきだ、美しく完全な世界はこうであるはずだという像を描き、それと現実の世界を重ね合わせたときにズレになっている部分を浮き彫りにする。

そして、そのズレをどう解消するかという問いこそが、コンセプトづくりに必要な「解きたいと思える問い」です。

例えば、「ARクラウドがフル実装された時代に、人々の観光はどうなっているか?」であったり、「どうすれば、人々を物理的な移動の制限から解放し、どこでもその場に訪れたかのような感情になれる世界にできるか?」といったような問いです。


では、そうした「世界のズレ」をどうやって見つけていけばいいか?

自分は、社会・ユーザー・現状の手段という3つの視点でのインプットを通して見つけるようにしています。

コンセプトのつくりかた.001

1) 社会インプット
観光やファッションなど、サービスが対象としているテーマ・領域の歴史や哲学、トレンドなどを書籍やデスクトップリサーチでひたすらインプットし、その領域において社会はどこに大きく向かっているのか?、大切なのはどういった要素なのか?、何が本質として残り続ける要素なのか?を見定める。

2) ユーザーインタビュー
その領域においてユーザーはどういった行動を取っているのか?、何を求めているのか?、不満に感じているものは何か?をユーザーとの対話を通して見つけていく。

3) 現状手段の分析
現状あるサービスでうまくいっていることは何か?、どういったニーズはすでに十分に満たされていて、反対にどういったニーズはまだ満たせていないのか?、直接的なサービスでなくてもどういった代替手段をどう使ってニーズを満たしているのか?などを徹底的にリサーチしたり実体験して見つけ出していく。

コンセプトのつくりかた.002

それによって上図のように、その領域で本質として大切であり続け、ユーザーが実際に求めていて、既存サービスが満たせていないもの領域を見つける過程で、あるべき世界と現実世界のズレを見つけていきます。

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ステップ② シンプルだけど新しい解決法の見つけ

解決法は、新しいものであると同時にシンプルであるべきだと思っています。

複雑な解決法の方が足りない部分を足し算で加えていけばいいのでロジカルな解決法としては簡単に見つかるのですが、複雑なサービスや体験は結局使われず、世の中に本当に浸透するのはシンプルなサービスや体験です。

解決法の考え方にはいろんな考え方があるのですが、自分がよく使うのは以下の4つです。

① 他ジャンルのアナロジーで考える
その領域では解決されていない問題でも、別の領域ではすでに鮮やかに解決されている方法というのはよくあります。有名な話が救急治療室の治療効率性を上げるためにF1のピットクルーの行動や準備が参考になったという事例など。

② 成功体験を強化することを考える
あるテーマや課題に対して常にうまくいっていないことはむしろ稀で、たまにはうまくいっているケースがあります。例えばバーチャル観光で体験した空間に実際に行ってみたいとユーザーに思ってもらいたいときに、実際の観光である観光地にまた訪れたいと思うときの条件や心理状態に着目して、それをバーチャル観光でも起こすようにするなど。

③ 時間軸で考える
いままでは、もしくは今はまだ無理だけど近い未来の技術や社会から逆算するといまこういう手を打っておけば近い将来解決できるだろうという方法を考える。

④ 制約をあえて真逆にしてみる
ものごとにはすべて潜在的・顕在的いずれかの制約が存在しています。たとえばお店には服が置いてあるべきだとかそういうのです。新しくシンプルな解決法を考える上で、一旦その制約をあえて逆にしてみると思いの外面白いアイデアが見つかったりする。例えば「服がひとつもないお店」でならどういったブランド体験が提供できそうか考えてみるなど。


ステップ③ 記憶に残る表現にする

コンセプトはある種のビジョンとしてチームを導く存在です。

そして、ビジョンと幻想の違いは、自分しか見えていないものは幻想に過ぎませんが、自分以外の人も見ることができて初めてそれはビジョンになります。

したがって、コンセプトを決めたらそれを通してチームメンバーがそのコンセプトが達成された世界を頭の中でありありと映像化できるようにすることが重要です。

そのための第一歩はまず標語化。だれでもパッとすぐに理解できて、記憶に残る表現に落とし込むことが重要です。

たとえばファッションAR体験をつくる際に、コンセプトを「出会い・学び・つながり」の3つに据えたり、デジタルツイン観光体験をつくる際に「遊べる、泣ける、デジタルツイン観光体験」として、このサービスや体験が目指すべき山の頂を誰の目にも捉えやすくします

そしてさらに表現が決まったらそれをビジュアルイメージに落とし込んで、自分とメンバーが頭の中に思い浮かべるイメージの合致度をさらに上げていきます。

そのためにイメージに合う画像をコラージュしたイメージボードや、映像をつなぎあわせて作成するVコン、手書きのラフのスケッチなどで自分の頭の中にある理想的な世界のイメージを周りの人達も頭の中に思い描けるようにしていきます。

まとめ

やっていること自体は至極当たり前のことしかやっていないのですが、コンセプトづくりのプロセスを感覚でイメージを持てているかどうかで、進めやすさや実際に出来上がるコンセプトのレベルに大きな差が出てきます。

繰り返しになりますが、サービスや体験つくりにおけるコンセプトづくりとは、あるべき世界を描き、その世界と現実世界のズレを見つけ、そのズレを解消する最短経路を見つけて、理想的な世界と経路のたどり方をビビッドにワクワクする形で周りに披露していくことです

自分もMESONも、これからも意義と意味のあるサービスを世に生み出していくために頑張っていくので、こういった活動に興味を持ってくれた人は気軽にTwitterや会社サイトなどで連絡をもらえると嬉しいです!


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