【ブックレビュー】『空の中』 / ジャケ買いがまさかの大当たり…!!
みなさんこんにちは!旅狼かいとです。
今回のブックレビューは、有川浩さんの『空の中』です!
初版は平成20年ですので、もう10年も前の作品。
そんな本とどう出会ったのかというと、本屋で『空の中』という題名に惹かれ、そして表紙を見ての”ジャケ買い”だったのです!笑
当然、作品についての事前情報はなし。
有川浩さんのお名前は「どっかで見たことあるなぁ」程度。
しかも日本人作家さんの作品は久しぶりに読んだのですが、、
これが想像以上に面白く、一気に”読み干して”しまいました!
そんな『空の中』について、あれこれと書いていこうと思います!
『空の中』のあらすじ
舞台は200X年という時代設定の仮想の日本。
国産の音速運輸機の開発に成功した日本の航空機事業は、ついにテスト飛行の段となる。
しかし、高知沖高度2万メートルに上昇したと同時に機体が爆散。
さらに、同じ空域において高高度飛行訓練のために高度2万メートルに上昇した自衛隊機も同様に爆散してしまう。
その事故調査として、メーカーの担当者「春名高巳」と2件目の事故を目の前で目の当たりにしながら自身は事故を回避した自衛隊パイロット「武田光稀」が、調査のために事故が起きた高知沖の高度2万メートルに飛ぶと、なんとそこには…。
一方、高知の高校に通う「斉木瞬」は、高高度訓練中に謎の事故死に遭ってしまった自衛隊パイロット斉木敏郎三佐の息子だった。
父が高知沖上空を飛んでいるその日、瞬は仁淀川の河口付近で全長1メートルほどの奇妙な物体を拾う。
どうやら生物であったが、、見たこともない摩訶不思議な”ソレ”。
ひとまず持ち帰ることを決めた瞬は、その後成り行きから未確認生物好きの幼なじみ「佳江」とともに「フェイク」と名付けた謎の生命体を飼育することにした。
そんなある日、瞬に父の訃報が伝えられる。
悲しみの中ふと父の携帯電話に電話すると、なんと呼び出しの後に電話が繋がって…。
『空の中』を読んで・感想
ジャケ買いをしてしばらく放置してた本。
やっと読んで、想像以上にいい話でした!
ジャケ買いについては『天気の子』にハマっていた時期だったこともあり、、「空の中」ってなんだか「天気の子」に近いものを感じませんか?。。笑
「有川浩」という作家さんのお名前は、買うときに
「どこかで聞いたことがある、ような気がする。。」
と思っていたのですが、調べて納得。
『図書館戦争』の作者だったのですね!
、、まぁ、読んだことはないのですが。笑
日本の空に浮かぶ超巨大未確認生物を巡り、高知の田舎に住む高校生の男の子と女の子、そして、対策にあたったメーカー担当者と自衛隊という20代前半の男女が中心となって描かれる物語。
体裁としては、”W主人公”という形でしょう。
2人の人物を中心に物語を複数の視点から描き、最後にその2人(各ヒロインを入れると4人)が邂逅する、みたいな。
本編約500ページ+高校生組の後日談約20ページの構成で、本を手に取った時は「結構厚いな〜」と思ったのですが、読み始めると非常にテンポ良く進み、あっという間に”読みきってしまった”という感覚です。
高知側の登場人物の何人かは方言を話すのでその部分の読みにくさは多少ありましたが、ルビで意味は書いてありますし、何より、方言がキャラの個性になってより惹きたてられてていましたね。
読みながら思ったのは、ジャケ買いによって話の事前情報をまったくなしで読んだのが意外とよかったかもしれないということでした。
というのも、予想がつかない展開にしっかり振り回され(笑)、あっと驚くポイントで素直に驚けましたから!
まぁ作品というのは本来はこのように味わうのが当然っちゃ当然ではあると思うのですが、最近はあらすじを頭に入れてから、本を読んだり映画を見たりしていたので、改めて、作品への向き合い方というか、楽しみ方のようなものに気付かせてくれた本でもありますね!
(ですので、作品に興味がある方はここでこのnoteを閉じ、代わりに『空の中』を読み進めてください!笑)
キャラが好きなタイプだったというのも、個人的な評価が高くついた理由かもしれません。
迷いながらも先に進もうとする高校生男主人公「瞬」、一見飄々としてるけれどやるときはやる若き男主人公「高巳」、勝気だけど一途で優しい田舎娘の高校生ヒロイン「佳江」、男顔負けの漢気に溢れる不器用な美女ヒロイン「光稀」。
何より、高知高校生のふたりを支える近所のおじちゃん「宮じい」が非常に良いキャラをしていました。
瞬と佳江の祖父のような立ち位置をとり、良き理解者として絶妙な言葉をかけてくれる。
“とっつぁん”的なじいちゃんキャラは、どうしてこうすごくいい人たちなのかね〜
瞬と高巳を繋ぎながら、両者と協力・対立関係のような立ち位置をとる美少女高校生「真帆」もいいキャラをしてたし、それぞれの人間関係や中心人物たちの取り巻きの感じもよかったですね。
瞬と佳江からは「フェイク」と呼ばれ、高巳や光稀たちからは「ディック」と呼ばれた未確認生物『白鯨』たちと日本人との関係性の部分は、特に官僚たちのやり口とか周辺国の横槍具合が若干『シン・ゴジラ』を思わせたけれど(出版時期からしたら『シン・ゴジラ』が『空の中』を思わせた、のだけれど)、人間の業というか、何事も綺麗事、「こうなれば良いのに、、」というようには“いい感じに”いかない歯がゆさみたいなものが、絶妙に描かれていたと思います。
ジャンル的にはSFなのですが、日本人作家さんの作品だからか想像しやすいリアルさを感じました。
人間の、特に日本人の気質や人間関係、やり取りがうまく描かれていたと思います。
高度な意思・思考能力を持った未確認生物「白鯨」の在り方と言いますか、「彼らなりの存在理由・生存理由」というものも想像しやすかったですし、未知の生物である「白鯨」を通じて、現代の人間たち・日本人たちへの「未知の存在・受け入れられない存在を前にした時、あなたはどうする?」という問いかけの部分も描かれているように感じました。
男女のペアになるともれなく恋愛に繋がるのがいかにも日本人の作品らしいとも感じてしまったのが若干のマイナスポイントですが、それを差し引いても個人的に好きな作品ですし、多くの人に読んでほしい作品と言えます!
恐らくはこの『空の中』は多くの方に知られてはいない作品だろうと思います。
しかし、世の中にはそんな作品だらけだと思いますし、何より、そういった「知られていない面白い作品との出会い」もまた読書の楽しみだと、今回『空の中』が改めて感じさせてくれました。
他にも、「事前情報を入れすぎて読まない、あるいは観ない」というのも、今回改めて考えたことですね!
レビューを書いている人間が言うのも変な話ですが、本屋さんでぶらぶら歩いて手に取って、「面白そうだな!」と何となくでも感じた本を読む。
これも含めての”読書”だと僕は思いますし、”紙の本”の良いところだと思うのです!
ですので皆さんもぜひ、自分の手で新しいお話、面白いお話、好きなお話を見つけてみてください!
そして、自分だけの感想を抱き、自分の糧にしていくことで、より読書が楽しくなると思いますよ!!
『空の中』の作品概要
題名:『空の中』
作者:有川浩
作品ジャンル:SF、になるのかな
出版:角川文庫
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