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2023年1~4月の読書記録まとめ

今回は、2023年の1~4月で読んだ本をまとめていこうと思います。

個人の中ではnotionに読書記録をつけているのですが、せっかくなのでnoteでも簡単な感想とともにご紹介していこうかなと。ブログでも個別のブックレビュー記事を書いていく予定です。

仕事の都合上、毎月だいたい1週間はどうしても本を読めないので、この時期は月2〜3冊、5月に入ってギリ4冊いけるかな〜っていうペースです。まぁ一冊の長さにもよりますが。

これを書くことで自分の今の心の状況も理解できるかなと、個人的には期待しています。

2023年1月

ガリヴァー旅行記

ジョナサン・スウィフト(Jonathan Swift)

(多分)一番古いものを読みました。
まさにノーカット版、というわけで『ガリヴァー旅行記』を存分に読むことができた、、が、古いゆえに言葉遣いが古臭くて結構読みにくかったですね…(大学生時代に一度読んでいて、その時よりはまだ理解したつもりになっている。笑)

とはいえ内容は本当に面白いです。
『ガリヴァー旅行記』というと、巨人や小人、「ラピュタ」が登場するワクワク冒険作品、というイメージを持たれる方が多いと思いますが、それはあくまで表面的な部分。作品の本質としては、警鐘にも近い現代への皮肉が散りばめられており、それがとにかく素晴らしい作品なのですね。スウィフトの視点には驚かされましたし、「こうやって表現するのか…!」とも思わせてくれました。

『ガリヴァー旅行記』の設定やセリフは他の作品で引用も多くされていますから、読書好きを名乗るなら一度は読んでおきたい名作ですね!

風の十二方位

アーシュラ・クローバー・ル=グウィン(Ursula Kroeber Le Guin)

ゲド戦記』の原作者、どこかで聞いた「オメラス」の話に興味を持って読んだアーシュラの中短編集。
初めて読んだ作者で、本当に独特な雰囲気だと感じました。今までにありそうでなかった視点、SFのようなファンタジーのようなここにしかない作風。不思議な感覚になることは間違いないです。

ただ、ハッキリと何かを提示することがなく、物語も革新を語らずに終わったり結末を迎えずにかなり余韻を残す形が多いので、人によっては合わない人もいると思います。
そういう意味では、『ゲド戦記』もこんなだったな、と感じました。なので、『ゲド戦記』がよくわからなかった人、退屈だと感じた人は同じように合わないかもしれません。
逆に、『ゲド戦記』に何か感じた人、みんなが言うほどつまらないとは思わなかった、という人は、合う可能性が高いと思います。

にしても、この本は電子書籍で読んだのですが、やっぱり紙の本が読みやすいな、と痛感しましたね。。

11文字の檻

青崎有吾

長編だけでなく、様々なところにアンソロジー作品の提供もしているという方、のようです、多分。申し訳ないことに、この本を手に取るまで存じ上げませんでしたが、とても有名な方なのですね…!(この作品以降、ほぼジャケ買いした本を読んでいきます。)

日本人の方の作品は久しぶりで、個人的にはなんだか新鮮な心で読めた本でした。

内容はとても読みやすく、それでいて非日常を描いていたりテーマが通っている感じがしたり、キャラがとても魅力的であったりと、すごく好きな一冊になりました。
”ありそうでない”世界を読みやすくわかりやすく描いてくれている、そんな感覚です。
ここも個人的には、最近SFだの何だのと難しい、変に深読みしたくなる本ばかり読んでいたせいか、純粋に“物語”を楽しめた気もしました。

中盤〜後半に掲載された中短編については、近未来・SF・ディストピア的な雰囲気を感じました。それでいて、日常っぽいものと推理物も入っている、まさによりどりみどりというかんじでもありました。
これを一人の作家さんがすべて書いていると思うと、表現する世界の幅の広さがすごいなと思いました。

すこーしだけ癖がある作品、一冊で色々な物語を楽しみたい人には特にオススメしたい一冊です。

2月

ユートロニカのこちら側

小川哲

ジャケ買いをしたうちの1冊。
「ディストピア作品」と表現されていますが、そんな感じは全然せず、現代から伸びた近未来、まさに「ありそうな2030年頃」、ちょうど完全機械化まであと少しという移行時期にある世界を表現している作品でした。

特徴はなんといっても、「アガスティア・リゾート」という舞台を軸にしつつも、全6章の主人公がすべて異なるという点。後半は前の章の主人公が登場するという繋がりもありますが、この1冊で「数十年間のアガスティア・リゾートの遷移」を、とある人物の視点で断続的に追うことができるのがとても面白い仕組みでした。「短編集的長編」とでも言えばいいのかな。

表現もとてもわかりやすく、近未来ものならではのとっつきにくさはほぼないと言えます。それでいて、近未来ものならではの現代への問題提起、皮肉などが効いているのがとても良かったです。
『PSYCHO-PASS』や『ハーモニー』の雰囲気も感じられるから、普段本を読まない人でも楽しめるのではないかと思います。

ちなみに、この本って2015年に出版された作品なんですよね。平置きされていたのでてっきり最近の本だと思って購入したのですが、、そういう出会いができるのが、本屋と紙の本の魅力なんですよね〜!

3月

たったひとつの冴えたやりかた

ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア(James Tiptree Jr)

ジャケ買いした一作品。有名かどうかは知らないが(我ながらテキトーすぎる笑)、これも良い作品を引き当てたと思います。

体裁は長編のようですが、今を生きるエイリアン(宇宙の民族の一つ)のカップルが図書館で借りた本を読んでいる、という形になっています。同じ世界観を共有した3つの時代の中編作品が、幕間を挟んで並んでいるという形式です。『たったひとつの冴えたやりかた』は、最初に掲載されている中編のタイトル。

この第一編、正直、最初はSFならではのよくわからない展開に加え、主人公のコーティーとシロベーンが出会うまでは結構退屈でした。でも、そこからは心躍る冒険譚でしたし、何より「たった一つの冴えたやり方」の意味がわかるラストには、本当に感動しました。
打って変わって第二編は、スターウォーズを思わせる宇宙もの。文字だとわかりにくいところがありましたが、宇宙ものの映画とかアニメが好きなら楽しめるんじゃないかと思います。
第三編は、ヒューマンとエイリアンのファーストコンタクトもの。特徴は、両陣営の様子を描いている点だと思います。これによって、「エイリアンにも彼らの国があり、事情がある。それはどんな種族でも変わらない」ということがよくわかりました。これは現代の我々への皮肉にも感じます。

とはいえこの作品最大の魅力は、どの作品もキャラクターがとにかく魅力的な点だと感じました。文字で追っているのに、イキイキとした姿、美しい姿、逞しい姿、かっこいい姿、ちょっと“イっちゃっている”が目に映るし、印象に残るのです。なんだかんだで、やっぱりキャラクターの魅力って、作品上ものすごく重要なんだなって思わせてくれました。

全体の命運を左右するような大問題が、その瞬間瞬間には、個人のささやかな行動の上にのっかっているようだった。

カッコーの歌

フランシス・ハーディング(Frances Hardinge)

確実なものなんてこの世界にはない。でも、だからこそ素晴らしい世界なんだ。
楽な道が正しい道とは限らない。
こんなところがこの作品のテーマでしょうか。

相変わらずこの作品や作者フランシス・ハーディングさんのことを何一つ知らない状態で読み始めたので、世界観をちゃんと掴むまでは、陰鬱で不気味な不思議空間を漂っていました(読み終えてみると、これはこれで『エヴァンゲリオン新劇場版』の『Q』以降のようで面白かったですが)。

ただ、物語の途中から展開が広がり、気づいた頃には「日常から伸びた非日常の冒険」という雰囲気になっているのだから、この展開力は本当にすごいと思いました。
ここまで本の前後半で印象が変わり、雰囲気が変わりながら、それでいて「これは同じ作品だ」とはっきりわかるのが本当にすごいんです。終盤には、それまでの様々な行動や描写の意味を“回収”していき、この“収まりの良さ”みたいなのもとても心地よいものでした。

訳者あとがきにもあるのですが、キャラの魅力もこの作品の大きな魅力です。この本の厚さにしてはキャラは多くありませんが、多くないからこそ、一人一人が役割を持って輝いているのだと思います。
しかも、表現のわかりやすさ、読みやすさも素晴らしい。父と母の存在の大きさ、子を育てるということの繊細さと大変さ、姉妹愛についても感じられ、この年齢だからか、なんだか身に染みました。。
読む年齢や立場によって感じ方が変わるかもしれません。

僕は現代小説で特定の作者の作品を読み続けるというのがないのですが、この本をきっかけに、「一人の作家にハマるのも面白いな」と思えたほど、強くインパクトを与えられた作品になりました。

4月

medium

相沢沙呼

ずーーーっと表紙が気になっていた作品をやっとこさ購入。

まぁありそうな“霊媒探偵物”なのかなぁ、と思って読み進めつつ、日本の作品によくある男と女の関係も描いているのか〜って思っていたら、最後の章でまさかの展開と衝撃よ。そして、エピローグのちょっとした表現よ。。
読み終えれば、なるほど、そういうことね…! となる、まさにこれは”本”ならではのトリックだと思いました(映像に起こしても描きようはあるとは思うが)。

とは言いつつも、やはりこの作品・シリーズ最大の魅力が、ヒロイン「城塚翡翠」のキャラクター性ですね。霊媒による解決、トリックももちろん面白いが、キャラの魅力が作品の魅力に大きく影響するというのを改めて感じました。このキャラを描けるだけでも作者の力だと思うし、シリーズもの、人気作品というのは、結局キャラあってのものとも言えるよなーって気付かされました。ホームズとか、ポアロとか、もちろんミステリーとしての面白さもありますが、そうは言ってもキャラクターの魅力がかなり強いですからね。

ともあれ、この相沢沙呼さんの作品、城塚翡翠シリーズにも興味が湧きました。一つ前の『カッコーの歌』といい、現代にも素敵な作者がいるのだなと、自分の凝り固まった頭を柔らかくしてくれましたね。笑

密教

正木晃

一応読んだ本なので取り上げます。

この本は仕事で密教について知る必要があったので読んだ本だったのですが、意外と面白かったです。本自体も読みやすいですし、密教世界・仏教世界に興味が湧きました。

日本にも真言宗や天台宗をはじめとする密教寺院が数多くありますから、国内旅行をよくされる方、寺社仏閣が好きな方は読んでみると面白いかもしれませんよ。

魔眼の匣の殺人

今村昌弘

シリーズものの第2作目とは知らず相変わらずのジャケ買いをしたのですが、全然楽しめました。むしろこの後、前日譚的な視点で『屍人荘の殺人』を読むのも面白いかもしれないです。
(→5月に『屍人荘の殺人』を読んだのですが、2作目→1作目の読み方は正解だったと思えるくらいでした!)

この小説の一番面白いところは、“予言”という超能力に影響される(振り回される、と言い換えても良い)人間の感情、損得勘定、そんなところが写し出されるところだと思いました。予言そのものではなく、あくまでそれによって変わっていく“人”に焦点を当て、、犯罪か、あるいは天災か、あるいは本当に呪いなのか、そんなことを描いていくところに引き込まれていきます。

あとは、ミステリーを読みながら自分も推理していく方は、”自分の感じた違和感”を大事にしてほしいですね。これは本ならではの面白いところだと思いますし、解決編を読んで「やっぱりか〜」と思う方もいるかもしれません。
ストーリー的にも、キャラの魅力がやっぱりあるし、シリーズものとしての興味はそそられる。『カッコーの歌』から始まり、『medium』でのめり込んだ「魔術と推理」のミステリ物にハマりつつありました。王道の探偵者とはまた違うトリック、視点が面白んですよね。今村昌弘さんの作品も読み進めていきたいですし、、何より、遠田志帆さんのジャケットイラストがやっぱり良いんですよね〜!


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