見出し画像

シンデレラ城のモデル、城主は狂人だった!? 呪われた城の秘密!

ディズニーランドに高くそびえるシンボル、白亜の城「シンデレラ城」。

中にはアトラクションも用意されており、夢を抱きながら散歩した人も多いはずだ。

この純白のお城は、ドイツにそびえる「ノイシュヴァンシュタイン城」がモデルとなっている。

バイエルンにたたずむ豪華絢爛なこの城は、当時バイエルンを治めたルートヴィヒ2世によって建築された。

建築されたのは1869年~1892年にかけて。意外に最近だと驚かれる方も多いかもしれない。

実は、ノイシュヴァンシュタイン城は「最近」ならではの技術も詰め込まれた夢のようなお城なのである。

お城の父親ルートヴィヒ2世の道楽建築

ルートヴィヒは幼い頃から非常にハンサムな少年で、多くの肖像画が描かれた。

彼は美しいものや中世的なものが好きで、騎士物語やロマンチックな音楽に耽溺していた。

特にワーグナーを愛し、王として戴冠した後にすぐ招へいしたという。
(あまり評判のよくなかったワーグナーは家臣から嫌われていたらしく、ルートヴィヒはすぐに追放したようだ。)

このロマンチックな人物は、執務から逃れるように建築を始める。

ノイシュヴァンシュタイン城をはじめ、ヘレンキームゼー城、リンダーホーフ城等、中世に憧れた城を数多く作った。

特に彼はフランスのルイ14世に憧れていた。

ルイ14世とは「太陽王」と呼ばれ、絶対的な権力を誇ったフランス君主である。あのヴェルサイユ宮殿を建築し、名高いモンテスパン侯爵夫人を愛妾とした王だ。

それが彼を数多の城建築へと走らせた理由の一つだろう。

狂人? それともロマンチスト? ルートヴィヒの真の姿は?

ルートヴィヒ2世は狂っていたと言われている。

1886年、彼は王位を降ろされることとなった。精神科医から偏執病、妄想症に取りつかれていると判断されたためだ。

ルートヴィヒは自分の趣味で建てたノイシュヴァンシュタイン城に籠り、マリー・アントワネットの胸像に話しかけ、名だたるフランスの君主たち(の胸像)と一緒に食事をとっていたと言う。

まだ完成もしていない城、人里離れた山の上。彼はそこに自分の妄想と住んでいたのかもしれない。

家臣たちは、ルートヴィヒ2世の統治能力に疑いをかけるようになり、精神科医に鑑定を依頼した。

彼らはルートヴィヒを偏執病と判断し、「一時的な休息ではなく、もう一生まともに国を治めるのは難しい」という鑑定を下す。

ルートヴィヒの弟が既に狂人と判断されていたことも疑いに拍車をかけた。遺伝的な要因があるのだろうと思われたわけだ。

家臣たちはノイシュヴァンシュタイン城に住まうルートヴィヒを捕らえ、退位を申し渡す。

その中には、偏執病の鑑定をしたグッデン博士もいた。

馬車に乗せられるとき、ルートヴィヒはグッデンに尋ねたそうだ。

「なぜ君は私と会ったこともないのに、偏執病だと鑑定したんだ?」

このとんでもない事実、そもそも診察もしていない鑑定への疑念にグッデンはどう答えたのか。

「いや、診察は必要なかったんです。召使の証言だけで十分実証されていましたから。」

彼はミュンヘンの南、シュタルンベルグ湖のほとりへと運ばれた。

到着したその翌日、ルートヴィヒは湖で溺死体となって発見される。
グッデンも一緒に亡くなっていたそうだ。
ルートヴィヒは40歳だった。

見張りは怪しいものを見聞きしておらず、彼の死は自殺として処理された。

自殺と片付けるには不審な点が多い。

まず検死において、ルートヴィヒの肺に水が侵入していた痕跡は見当たらなかった。
その上、若い頃に彼は泳ぎが上手かったという。
また、自殺願望が仄めかされていなかったこともある。

ある漁師はルートヴィヒが撃たれているところを見た、という手記を遺していたらしい。

真相は明らかになっていない。

彼は死ぬ手筈となっていたのかもしれないし、ただの不慮の事故か、グッデンとのもみ合いかもしれない。

事実は、彼がノイシュヴァンシュタイン城の完成を見る前に亡くなったということだけだ。

ルートヴィヒが見せた、ノイシュヴァンシュタイン城へのこだわり

彼が巨額と命をかけ、夢見たノイシュヴァンシュタイン城はただ外装が美しいというだけではない。

内装や技術も当時の最先端をいくこだわりを放っているのだ。

内装にはルートヴィヒの好みだった、中世的な趣向を凝らした。
ワグナーのオペラから取った題材を描くなど、彼の嗜好が詰まったお城だ。

中世的なものが好きだったルートヴィヒだが、技術は中世から大きくかけ離れた19世紀のものを使用している。

電池で動くベルや、召使のための電話線。

キッチンのオーブンには当時最先端だったランフォード・オーブンを取り入れている。これは料理をする際、火加減を自動で調節できるものだ。

また、暖房機能やトイレの自動洗浄、さらにはお湯が蛇口をひねれば出てくるシステムも導入されていたらしい。

まさに現代人から見ても思い描く夢の城。ルートヴィヒが描いた夢物語は、100年経った今でも我々に通用するものだったのだ。


そして今、かの城の面影は極東の「夢の国」にまで進出している。

「夢の城」と聞いた時、シンデレラ城と一緒にぜひ思い出してほしい。
ルートヴィヒが命を懸けた、ノイシュヴァンシュタイン城のことを。


・参考文献

・”Neuschwanstein: The Reality of Building Fantasy” 

https://en.wikipedia.org/wiki/Ludwig_II_of_Bavaria#Neuschwanstein

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?