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『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』を読んで

正直に言えばこの本を読むのは気が進まなかった。
どういうことかと言えば、最近小説を読むのが少し苦痛というか、小説を読めるほどのエネルギーを自分自身が持っていないと感じていたからだ。本を読むって筋トレに似てる。絶対に苦しいとわかって、それでも手を伸ばそうとする。

では、どうして、そんな私がこの本を読み始めたのか。
ただ単純に10日後に迫った試験勉強をしたくなかったからだ。

ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございます。
具体的な内容にはもう少ししたら入るので、少々お待ちください。

さて、この本は、私が以前、『52ヘルツのクジラたち』を読んで以来、町田そのこ先生の作品に興味を示したことにより、我が家の本棚に鎮座していたわけだが、所謂”積読”状態であった。

そして、読み始めたら、想像通りかつ月並みな表現だが、読む手が止まらなくなってしまった。

舞台は、どこにでもある田舎町の片隅。二つの町が交差している形となっている。そこに住んでいる人たちを通して、作者が町を「水槽」と表現していることが非常に興味深い。

5編の連作短編集となっており、各作品の主人公がしっかり他の話に関わってきているのが読んでいて伝わってくる。

「水槽」の中で懸命に生きることを覚悟した主人公たちが、それぞれの道を覚悟していきていくと決めて、次の一歩へと踏み出していく姿は、必ずしもハッピーエンドとは言えない。読んでいて苦しくなるけど、それ以上に美しいと感じる。

読書感想文を書くとき、海に潜っているような感覚になる。自分が小説という海に潜り、適切な言葉を得ようとしている。

雨が降り、眠気とも縁遠い午前1時にこの小説を読めたことを幸せに思う。

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