加賀知巧

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読書記録

蒼月海里『水晶庭園の少年たち 翡翠の海』 2023/1/4 中学生の頃に好きだった「幽楽町おばけ駄菓子屋」の作者の作品。前作として『水晶庭園の少年たち』があるらしいが、それを見落とし、シリーズ二作品目から読んでしまった。(が、そこまで支障はなかった) 鉱物の醸し出す透明な鮮やかさ、「石精」という神秘的な存在が小説をきらきらと彩っている雰囲気を受ける。登場人物たちはどれも穏やかで、ストーリーも大きな波乱はないため、さらりと心地よく読むことができた。相変わらず蒼月さんの作り上げる

    • 小説を書く事

      小説が書けなくなった、かもしれない。 今までも「良いものが書けない」「筆の進みが遅い」ということはあったが、私は今初めて「小説を書くことが怖い」という感情に直面している。 それは、「良いものが書けなかったらどうしよう」「人から評価されなかったらどうしよう」という怖さではない。”言葉を紡ぐこと”、”言葉を扱うこと”、”言葉を使って作品を作り上げること”、”言葉を使って自分を表現すること”への怖さだ。全く、初めてのことだ。 今までの私は一体どうやって、あんなに無邪気に文芸に触れて

      • 日記のようなもの(23.8.3)

        鮮烈な体験になったサークルの定期演奏会の影響で執筆から遠ざかってはや一ヶ月程。 このまま書けなくなってしまいそうで怖くなったので、リハビリがてら少しものを書こうと思う。 今日は一日イベントスタッフのバイトをし、6時頃に電車に乗った。ドヴォルザークのチェロ協奏曲を聴きながら機嫌よく帰っていたら、地下鉄の出口を間違えた。気付いた時には乗り換え先の駅とはそれなりの距離が空いてしまっていたので、まあいいかと、チェロコンを流したまま一駅歩くことにした。 時刻は6時半頃。いわゆるマジ

        • 覚書

          電車 ゆれ 眠気 重い瞼 の、裏で、着実に回る思考 久しぶりに 歯車の音 イヤホン、忘れたから カチカチ 回る 動く ちゃんと生きている 腹まで息を吸い込む 真っ直ぐに吐き出す ちゃんと生きている 電車 眠気 重い瞼 の、裏で、着実に進む日常 背筋 通った 一本 しゃんと 前 前だけ ほら、顎上げて? 電車 眠気 重い瞼 良い夜。

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        読書記録

          思ったこと

          文芸サークルに所属して、3年目になってようやく気づいた。 書くのが上手い人は、読むのも上手い。 全体の構成を分析することだったり、隅々の描写まで目を配ることだったり、そうやって捉えた情報への自分の感想や考えを言葉にすることだったり。 私はそれが出来ていない。 小説分析を学問として習っているはずなのに、出来ていない。 だから多分、書けない。それが悔しい。 感想会への姿勢を変えようと思う。丁寧に、きちんと読んで、言葉にしてから参加しようと思う。 別にnoteにしなくても良い

          思ったこと

          一楽章 三十小節

          ひと月。 三十日。 月が一巡り。 満ちて、欠けて、また満ちて。 ひと月。 振り返ればそこに三十日。 私はそこにいて、 そこにいなかった。 時間はそこにあって、 そこになかった。 アレグロは いつの間にか プレストに ひと月。 次もまたきっとすぐ。 すり抜ける日々を どうすればつかめる?

          一楽章 三十小節

          無題

          迫る 離れる 焦る 食らいつく 動悸と 微かな眩暈と 凪の海が荒れる 波が寄せる すくむ体 それは唐突で 荒天はもう過ぎたと 一時の気のせい 小さな波は ささやかな波は 知らぬうちに大波に いつかまた海は凪いで いつかまた海は荒れる 平穏も動揺も 永久には続かない 目を閉じて 耳を塞いで 砂地を踏んで 息を吐いて その時を待つ 次の晴天を 洗われた空は きっと今より美しい。

          備忘録 一

           文芸サークルの会員たちと通話を繋ぎながら夜を過ごす。今夜は早めに寝ようと思っていたのだが、日付が変わってすでに20分がすぎていた。「寝ろ」と言う身体と理性、拒む欲望。さてどうしたものでしょう。  一人過ごす夜にはとりとめのない思考が転がり出すもので、いらない事ばかり考えてしまう。才能余りある同期の文章を読んで自分の文の拙さを恥じたり、周囲と比べて教養のなさに落ち込んだり。もちろん前者も後者も自分の努力あるのみなのは重々承知。わたくしの甘えた精神をどうぞ笑ってくださいまし。

          備忘録 一