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ありふれない私の名前

私は自分の名前が嫌いだ。この名前のせいで今まで随分恥ずかしい思いをしてきた。何故もっとありふれた名前を付けてくれなかったのだろう。

成人してから、私は改名の申し立てができることを知った。正当な理由があれば改名出来るのだ。正当な理由の一つに「奇妙な名前」であることが挙げられている。私は申し立てをすることに決めた。

両親に申し立てをする決意を話すと、案の定反対された。良かれと思って付けた名前を何故変えるのかと。私は、今まで様々なところで受けた精神的苦痛を事細かに説明した。私の話を聞いて母は涙ぐみ、父は下を向いて難しい顔をした。

私は両親が大好きだ。愛情たっぷりに育ててくれたと思っている。しかし、この名前だけは我慢できない。両親の悲しい顔を見て胸が痛んだが、おまえの人生はこれから長い、好きにしろと言われた時は嬉しかった。

翌日、家庭裁判所に改名の申し立てを行なった。一ヶ月もすれば受理か不受理かわかるだろう。私の場合は、多分受理されるはずだ。

私の名前は

「寿限無、寿限無
五劫の擦り切れ
海砂利水魚の
水行末 雲来末 風来末
食う寝る処に住む処
やぶら小路の藪柑子
パイポパイポ パイポのシューリンガン
シューリンガンのグーリンダイ
グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの
長久命の長助」

だ。

テストでは名前を書くだけで時間が過ぎた。第一、氏名欄に名前が書ききれない。普段は略称でなんとかなっても、入学や卒業、運転免許証や保険証の取得、引っ越すときの住民票の記入、就職、結婚などには本来の名前が必要になる。将来子供ができたら、さらに必要な機会は増えるだろう。

名前の由来を聞くと、子の幸せを願って父が名付けた気持ちもわからないでもないが、どうして誰もとめてくれなかったのか。それだけが謎だ。

                                                                      (再掲)




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