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BOOK REVIEW④:大学はもう死んでいる?トップユニバーシティーからの問題提起

オックスフォード大学で教鞭をとる社会教育学者である苅谷剛彦教授と東京大学の吉見俊哉教授との対談本。アメリカの大学と日本の大学を比較しながら、どうすれば日本の大学が世界で生き残れるか模索しています。

少子化のあおりを受けて、高校で勤務していても大学経営の難しさを肌で感じることがさらに増えてきた昨今、大学改革について海外の大学で勤務している刈谷教授の視点を知りたくて手に取りました。

この本を読んで記憶に残った点をメモとして書いておきます。

一つ目は、高校も大学も「困り感」は同じレベルということ。新しいことを始めたくても国や(公立の高校の場合は管轄の都道府県)がネックとなってできない事もある。また、組織で働く人の当事者意識のなさや、問題意識の低さ、そして日本独特の危機感のなさが効率的で革新的な行動へ移行することを困難にしている。結局、大学も同じようなことしてるんだな、という一種の落胆がありました。やっぱり、そんなもんか、と。

二つ目は、グローバル人材を育成しようという点が誤りであるという議論。日本でいうグローバル人材とは基本的に日本の企業に貢献できる人材のこと。上司の言うことに有無を言わせず従ったり、企業利益のために休日返上で働いたり、日本独特の企業文化や働き方を踏襲できる人材であると言うことが大前提。その上で国際経験があったり語学力があったりする人をグローバル人材と呼んでいて、国内の利益重視でしかないところに行きづまり感があります。本当のグローバル人材と言うのは国を超えて貢献できる人材のこと。そして、そのような人は日本にとどまる必要もないし、自分の能力が必要な場所で活かせばいい、と刈谷教授は言います。日本の教育現場で一般的に話題になる「グローバル人材」とは本来の意味とは違うと。まさに、目から鱗。高校の現場感からしても、本当にその通り。まず「グローバル人材」に対する共通理解がない(または曖昧?)ですよね。

いつかそれを、誰でも目に見える形で作っていきたいなー。


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