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見えない国際交流の成果をどう測るか

というのがずっと私の中の課題でした。校内外で国際交流を実施したところで、正当な評価が教員の間で共有されづらく、プロジェクトの存続や継続に影響があると感じていたからです。

海外に行った生徒が帰国した途端に英語をペラペラ話し始めたり、英語の成績が目をみはるほど伸びたりすれば、納得するかもしれませんが、国際交流の成果というのは大抵が目に見えないものです。それでも国際交流が続いているのは「何か効果」があるはずで、それはどうすれば分かるのでしょう。

そのことについて、今日、アメリカの大学院の教授とZOOMで話す機会がありましたので、話したことや考えを少しまとめてメモをして残しておこうと思います。

国際交流の成果を測るツール(IDI)

国際力を測るツールとしてはIntercultural Development Inventory(IDI)といものが一応存在しています。以前、下の記事で書いた異文化感受性モデルを使用して、今、自分がどの段階であるかということを50項目程度の質問に答えることで解明しようとするもので、実際にアメリカでは、大学の留学制度の評価などに使われているところもあるようです。しかしこれは、人の成長過程の一部分しか反映できていないとして批判が多くあり、教授にはすすめられませんでした。また、自分で調べてみると、文化的背景の違いから日本人にあてはまらない項目もあるようです。国際交流を測るツールなんて、ドラえもんの道具並みに難しい話だと思うので、そもそも批判や制限があっても納得です。

定量(Quantitative)より定性(Qualitative)データで測るしかない

結論としてはIDIのような数で成果がわかるデータ(Quantitative Data)ではなく、数で測れないものを見ていく方法(Qualitative Analysis)でしか国際交流は測れないのでは、というのが教授の見解でした。

人間の成長過程というのは人によってもちろん異なります。それに、そのスピードも段階も様々です。

例えば、高校生の時の留学や交流事業で訪れた海外でとてもネガティブな経験をした生徒がいたとします。帰国すればその生徒は、参加した国際交流プログラムについて、おそらく「よくなかった」として評価するでしょう。しかし、長期的にみれば、その生徒が次回、海外に行った際にその「よくなかった」経験が活用できる「良い」経験になるかもしれません。また、もっと年を経て大人になった時に思い返して見たら、その経験がその人の「人生を変えた経験」として「評価」されているかもしれません。

結局は国際交流を数値化したり、短期的に評価すること自体に無理がある(できない)とい言えるのではないでしょうか。

国際交流の担当者のフォローアップで成果を測る

数値化せずとも評価する際に大事になってくるのが、国際交流プログラムを通じて生徒をサポートする担当者の役割です。生徒が交流事業や留学プログラムに参加する始まりから終わりまでをフォローし、直接話を聞いたり悩みを解決したりする中で生徒の成長を見守りながら、成果を測っていく役割を担います。

おそらく、評価方法(Qualitative Research Method)についてはまた研究内容や成果などすでに実施されているものもあると思いますが、今日はそこまで話はできませんでした。また詳しい方法や内容については考えてみたいと思っています。

担当者の資質

国際交流を通じて生徒の成果を測ったり、その成果を共有したりするには特定のスキルが必要です。自身が海外の方と交流したことのない人などは難しいでしょうし、単に海外経験があるだけでも不十分でしょう。つまり、担当者自身の異文化感受性がどのようにかして発達した段階にないと務まりません

それに、高校生ぐらいでは海外にいる間に起こったことや経験したことを自分の中で消化できない生徒もたくさんいます。海外に出て見て初めて日本文化を改めて考える経験をしながら全く新しい異文化も「理解」しないといけない。それらの一連の生徒の中で起こっているある意味「パニック」を成長の糧とできるように話をしたり、生徒自身が見えていなかった気づきを与えたりする人や場がとても重要になってきます。

イメージとしては専門職としてカウンセラーの様な役割です。実際に公立学校でどのような形で実現するかはわかりませんが(だいぶ難しい)、そのようなフォローがあれば成果を測tたり共有しやすいかもしれません。

まとめ

私も自分が国際交流を長年担当する中で最も気を使っていたのは、生徒や保護者のフォローでした。特に長期研修の場合は生徒が海外で困らないようにフォローしよう、どれぐらい成長するか、どのような発見が生徒の中で起こっているかを見たいという意識はかなり強くありました。

実際に、上で書いたようなことは多くの学校で国際交流を担当されている先生方が日常的にされていることだと思います。しかし問題は、それを担当者の口から「成果」として話したとしても単なる「感想」にしか取られず、「あれだけ行ったのに英語うまくなってない」と全体的に「評価」されてしまうことにあります。

国際交流の成果を前向きに共有できている事例などまた調べて行きたいです。

続く!





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