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ピル服薬支援制度に思うこと。

yahooニュースにこんな記事がありました。

概要はこうで、

生理休暇は使い辛い。
生理休暇があっても、苦痛の解消にはならない。
ピルを飲めばよいのでは?
ではピル服用支援をしよう!

とそんな流れだそう。(私の解釈です)

あのですね、新しい取り組みとしてやらないよりはマシなので、やればいいと思いますよ。
こうやって新しい制度がはじまるのはとても良いことだと私は思います。
オンライン診療でピルを出すのも悪くないです。
ただね、かつて子宮内膜症という診断受けた私から言いますと

ピル服薬を支援するんじゃなくて、婦人科受診を支援するべきでは?

という話です。

そもそもこの記事の中に、男性から
「女性の生理(月経)を全く知らなかった」
というエピソードがありました。
さて、いったい誰が悪いのかといえば

日本の教育者

です。
女性の月経を知らなかった男性も、説明をしなかった女性も、何も悪くありません。
1番悪いのは

女性には一定周期の性器出血があり、それには苦痛が伴います。と説明しなかった日本の教育者たちです。

だからここまで、無理解ですし、関心もないし、なんなら女性自身も無理解で関心がなくて、激痛の人もそうでない人も、ほったらかしです。
せめて保健体育の授業で、

鎮痛剤を飲まねばならぬほどの月経痛は異常です。産婦人科に行きましょう。

それだけでも言ってくれたならば、ピル服薬支援なんぞしなくてもよかったわけです。
だって支援する必要がなくなるじゃないですか。
そうやって教育されたら、大っぴらにオープン教育されたら、月経自体タブー視されなくなり、みな自分の体調管理の一環として、婦人科に行きますよ。
もはや国民病の花粉症と同じ扱いになるはずです。
花粉症に対する抗アレルギー剤服薬支援なんて、聞いたことないわ。
(もし林業等、特殊な環境で花粉症対策支援とかあったら教えてください。でも、服薬支援はないはず。理由は後述します。)

月経対策支援はアリだと思うんですよ。
しかし、服薬支援は疑問です。
だってね、ピル飲んだら全て解決!
女も男と同じように働けます!!って思ってるからこんなことになるんでしょ?

違うよ。

声を大にして言います。

全然違うよ。

ピルを飲んでも、皆が皆解決するわけじゃありません。
またピルを飲めない人もいます。
飲みたくない人もいます。
どんなに苦痛が伴おうとも、その苦痛とともに生きる選択をしたい人だっているのです。

そして、かつての私のように、

ピルを飲んでも月経困難が全く改善されない人もいるのです。

…驚きましたか?
ピルは万能薬じゃないんだよ。
産婦人科の先生に話を聞いてごらん。
私みたいな人間も少なくないから。

実際私も、会社に子宮内膜症の話をし、生理休暇を取得していた時期があります。
その際、同期の女性社員に言われた言葉はこうでした。

「そんなのピル飲めば解決するじゃん!なんで飲まないんですか!?」

若い彼女は金切り声を張り上げ、そう言いました。

まだ若い彼女は怒り狂ってました。
私は生理休暇を取った日は、別の日に出勤するよう調整していたのですが、彼女は納得できません。
その仕事の皺寄せが自分に来るのを、彼女はとても恐れていたのです。

私はたいそう失望しながら返事をしました。
「ピルは飲んでるけど、痛みのコントロールが効かないんだよ」と。
彼女は絶句しました。
彼女から申し訳なさとか反省の色とか、私を労る言葉は全く出ませんでした。
それよりも、そのような人間が存在することに驚きを隠せないようでした。
私はこのようなやりとりを危惧しているのです。

かつての私のように、ピルを服薬しても月経困難をコントロール出来ない人間に、新たな差別が生まれることをです。

人はみな違うように、月経にも違いがあります。
それは、たかだか一つの薬で埋められるものではありません。
また、埋める必要もありません。
月経の辛さを、どのやり方で軽減するかはその人それぞれです。
無論、月経困難症の治療には正しい医療アクセスが必要ですが、それは、その治療プロセスは強要されるものではありません。
花粉症と同じように、

患者本人が治療を決める権利がある

のです。
また、

治療を受ける、受けないの選択も患者自身が持っています。

また、当たり前ではありますが

企業側から、その女性特有の生理現象は非生産的だからピルを飲め。などということは、絶対にあってはなりません。

企業側からピル服薬支援するメリットって、結局コレなんですよね。
月経という非生産的な生理現象のある生き物に対して、それを無くしてしまう、もしくは回数を減らせるならば、それは企業にとって良いことです。
毎月5日ほど効率が低下する人がいるならば、それがなくなることは願ったり叶ったりです。
さらに女性自身にも、苦痛が減るかも、という期待が持てます。
だから、女性にやさしい制度ですよと、さもありなんとしたり顔で進めるわけです。
でも、それは全然優しくない。

企業側が治療法を決める時点で優しさなんてないんですよ。


どんな疾患の治療法も、企業が決めることはありません。
どんな疾患も患者自身が治療法を決めるものです。
だからピル服薬支援はあってはならないんです。

ピルの服薬を、企業に決めさせてはいけないのです。


私はこれらの社会の動きに反対しているわけではありません。
むしろこのような新たなムーブメントが出たことを喜んでいます。
新たな制度が生まれ、それに対し様々な意見が出ることにより、物事は確実に進んでいくからです。

ただ、ピル服薬支援には、ピル服薬をしない者に対し、新たな差別が生まれる可能性があります。
それはほぼ確実で、この制度が認められるほど、それは強くなるでしょう。私はその差別が怖い。

何度も申し上げますが、治療法を決める権利は患者自身が持っています。企業側の支援により、それが否定されてはいけません。

ぶっちゃけ、生理の苦痛と花粉症の苦痛のバリエーションってよく似ています。
春先に、あ、目が痒いな…で済む人もいれば
阿鼻叫喚、鼻血に充血、頭痛に激しい肌荒れで寝込む人もいます。
そして全く症状のない人もいます。(私はこれ)
そんなバリエーション豊かな症状に対し、抗アレルギー剤服薬支援で解決しますかね?
私はそうは思いません。

あと、一応書いておきますが、ピルには避妊効果があります。妊娠を希望する女性は飲めません。
企業側は服薬状況から、その女性の家族計画をうかがい知ることも可能だったりします。
ピル服薬支援を受けないことについて、問われるかもしれません。

私は新たな支援で、新たな差別が生まれないことを強くのぞみます。
そのためには、まず一人一人が月経に対し理解することが重要ではないでしょうか。
女性に輝いてもらいたいならば、女性を理解しましょう。
ひとりの女からの願いです。


月経困難と治療についてはこちら。 
私の病歴についてもかいています。

ピル服薬についてはこちら。
私自身はピルユーザーあり、そのメリットは熟知していますが、強要されるものではありません。
また婦人科受診についても書いています。

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