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毒と戦わない男性たち

(画像はいらすとや様より、一部筆者加工)


※事前注意※

①本記事には、【男性に対する批判的表現】が頻出します。本記事によって万が一気分を害されましても一切の責任は取りかねます。
②事前に『ようやく毒から逃げまして①~我が家のイかれた面子と遍歴~』をご覧ください。



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 両親が離婚してから私は父親という存在を長らく知りません。伯父2とは同居していましたが、彼は父親に代わる存在にはなり得ませんでした。女である私は、男性である彼らが羨ましくて仕方がありませんでした。私がいかに毒祖母を責め立てようと意味を成さないのに対して、男性である伯父2の怒声一つで毒祖母は(一時的ではありますが)そそくさと態度を改めるからです。
 それでも伯父2、亡き祖父、私の父、そして伯父1も毒祖母から私たちを助けてくれることはありませんでした。男性である彼らがたったの一言でも「やめろ」と毒祖母を制していれば、今とは異なる展開になっていたかもしれないのに。
 毒と戦わない男性の裏には、傷つき泣いている女性がいます。その女性が日々傷つく様を傍から眺めながら、その男性は一体何を思うのでしょうか。


毒が支配する家庭

 健全な家庭では、親が子供を守るために頑丈な屋根を築きます。その屋根の下に子供たちを据えることで、家族内のヒエラルキーや子供間の平等性を実現します。

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(『毒になる母 自己愛マザーに苦しむ子供』キャリル・マクブライド著を参考に筆者作成)

 このような家庭では、親は子供の《安全基地》としての役割を果たします。親同士は対等で協力関係にあり、すべての家族が持つ権利はそれぞれ平等に尊重されます。個々の間には境界性が明確に介在しており、過剰な比較や共依存といったものは一切ありません。ゆえに家族内の問題が起きた際も話し合いによって建設的に解決できます。(《安全基地》については、過去記事『安全基地のない子供たち』を参照)

 一方で我が家のように毒が家庭を支配すると、以下のように「みんな毒の衛星状態」となります。

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(『毒になる母 自己愛マザーに苦しむ子供』キャリル・マクブライド著を参考に筆者作成)

 健全な家庭と異なり、家庭内のヒエラルキーや平等性、個人間の境界性がまったく存在しません。《安全基地》としての屋根もなく、家族の権利や自由は毒に握られています。毒以外の家族は常に毒の顔色をうかがい、自分だけは毒からの被害を受けまいと行動するようになります(トライアングル・コミュニケーションの横行など)。その結果として、家族内の誰かが犠牲になる、すなわち《スケープゴート》の役割を終始押し付け合うことになります。このような構図は、毒親問題に限ったことではありません。自己愛性、反社会性パーソナリティ障害者が中心となって権力を有している組織でも見受けられ、いじめや各種ハラスメントが起きる原因になります。


女性は《スケープゴート》に、男性は《傍観者》になりやすい

 その《スケーゴート》の多くは“女性”であり、毒問題の直接的な被害者もほとんどが女性です(もちろん“男性”が被害者およびスケープゴートである事例もありますが、今回は除外させていただきます)。冒頭でも述べましたが、我が家には複数の“男性”が存在していた時期もありました。しかし、とうの昔に毒祖母と絶縁した伯父1を除けば、誰一人として毒祖母に抗うことはなく、“女性”である私の母や私たちを《スケープゴート》として差し出しながら傍観していたに過ぎません。

 特に毒母が支配する家庭では、夫や息子と言った“男性”の存在感は薄れ、彼らは毒問題の《傍観者》に成り下がります。第一に父や息子は毒から直接的な被害を受けづらく、それは彼らが生物的優位に立つ“男性”であるからという理由ほかなりません。それでもなお、夫や息子を虐げて彼らの存在感を抹消したり、逆に夫や息子を過保護に扱って《スケープゴート》である女性(娘や息子のパートナー)に対して苛烈なハラスメントを繰り返す毒母も存在します。我が家を例に挙げると、非常に寡黙で控えめだった亡き祖父は毒祖母の激しいハラスメントによって、息子である伯父2は毒祖母が過保護の限りを尽くした結果、二人とも《傍観者》となってしまったと考えられます。
 毒母が支配する家庭の男性は、“最大の”被害者になることもなければ、《スケープゴート》である女性たちを救うこともありません。自分に毒の雨が降らなければ構わない──彼らはそう思いながら今日も何処かで《傍観者》として苦しむ女性を見放しているのでしょう。


毒と《戦えない息子》

 男性がパートナーを親に対面させて初めて、その親を毒だと認識したケースは少なくないようです。しかしその時点ですでにパートナーである女性が毒からの被害を被ったり、標的にされたりしている可能性があります。伯父1は交際相手との同棲先に毒祖母が毎日押し掛けたことをきっかけに毒祖母との絶縁を決したそうです。このように早急に毒親との対決や離別を図り、パートナーと自身の安全と生活を保障できれば構いませんが、問題を認識しながら一向に腰を上げなかったり、あまつさえその問題を見過ごそうとする男性がいることは事実です。

 俗に言う「嫁姑戦争」や義実家、義両親問題の大半は、このような《戦えない息子》が原因であると私は考えます。
 特に自己愛が強い毒母に毒され続けた男性は、《戦えない息子》になる傾向が強いようです。自己愛毒母は、息子を恋人のように扱って過剰に甘やかします。その根底には異性間の精神的近親相姦が介在しており、それが親から離れようとする息子に強い罪悪感を植え付けたり、息子から自立心や決定権を奪い去ります。そして何よりも《戦えない息子》の多くは、「母親もパートナーも失いたくない」という甘ったれた強欲を心の奥底に抱えており、それこそが最大の障壁と言えます。
 単刀直入に言えば、このような《戦えない息子》にパートナーや配偶者を得る権利などありません。その理由は二つあります。一つは、先にも述べたように女性であるパートナーが被害を受ける可能性が高いからです。二つ目は、その息子自身も愛着障害やパーソナリティ障害の傾向が強い場合、パートナーや未来の子供、周囲の人間に対して“加害”する可能性があるためです。
 自分自身の親も毒親で、結婚後には義理の親、あるいは夫自身からDVやモラハラといった毒行為を受けている女性もいます。それは、《戦えない息子》だった夫が、妻を新たな《スケープゴート》に仕立て上げたり、ついには自分自身が加害者になってしまったということです。結局娘から妻や嫁と立場が変われど、被害者はいつも女性なのです。対決を拒み続けた《戦えない息子》たちのせいで。


もしパートナーが《戦えない息子》だったら

 未婚・既婚問わず、パートナーの親の毒性に気が付いたら、まずはそのパートナーが《戦えない息子》か否か判断する必要があります。

・そのパートナーは、貴方の感情や親の言動を冷静に受け止めているか
・そのパートナーは貴方を巻き込まむことなく、親と戦おうとしているか
・過去の事やパートナーの発言や行動を振り返って、彼の愛着スタイルやパーソナリティは安定しているか
・貴方のパートナーへの信頼や愛情は揺らいでいないか、彼の対決を見届けようと思えるか

 もしもパートナーが貴方が感じたこと、思ったことを蔑ろにしたり、親の肩を持つようならば、彼は万が一にも親と戦うことはなく、毒と共に貴方を苛め続けることでしょう。あるいは、「親との話し合いに同席してほしい」「君からも説明してほしい」などと言って貴方を戦いに巻き込もうとするパートナーも《戦えない息子》です。
 そのパートナーの今までの行動や態度を振り返ることも大切です。貴方が辛い目に遭った、トラブルに見舞われた際に彼はどのような行動を取りましたか。普段のデートや食事において店員やスタッフにどのような態度を取っていますか。 パートナーの愛着スタイルやパーソナリティを再認識した上で、彼への信頼や愛情に変わりがないか、自分自身によく聞いてみてください。
 もし、貴方がそのパートナーを《戦えない息子》と判断したのならば、私は別れも考えることを勧めます。貴方自身の心身が深く傷つけたり、大切な時間を浪費する前に。 そして、パートナー(配偶者)を《スケープゴート》に仕立て上げ、“二人の母親”を独占してほくそ笑む男が一人でも減るように。


毒と戦わない男性たちへ

 現在私の父や伯父2に何か伝えられるとしたら、「てめぇらも毒祖母と一緒だ。せいぜい他の人らに危害だけは加えずに死んでいけ」とでも言いたいですね。今となっては何を言っても無駄でしょうが、彼らが私たちを見捨てて保身していた事実だけは絶対に忘れません。

 立ち向かうべき戦いを避けて誰かを差し出すような人間に、他人を幸せにすることなど到底できないですし、そんな人間と今後の人生を共にする筋合いもまたない、と私は思います。
 戦いから逃げ続けた果てには、誰かを傷つける自分がいるかもしれない──そんな未来が実現してしまう前に、一刻も早く親や自分と正面から向き合ってほしいと強く願います。



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