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氷河期世代にとっての『N・H・Kにようこそ!』

仕事で必要があってアニメの『N・H・Kにようこそ!』を見ている。全24話の後半部分とかまったくの初見なのだが、21話で主人公のバディの山崎がこんな事を言う。

ドラマには起承転結があって、感情の爆発があって、結末があります。
僕らの日常は、いつまでもいつまでも薄らぼんやりした不安に満たされているだけです。

『N・H・Kにようこそ!』21話

作者の滝本竜彦は1978年生まれで、氷河期世代のど真ん中で、大学を中退して作家になった。僕も一人の氷河期世代として、このセリフにものすごく共感するところがある。

自分の人生を「ドラマ」にするチャンスさえなく、バブルのキラキラには間に合わず、真面目に学生のうちからキャリアを考えるという準備もしなかった若者たち。そういう気分によりそった作品だったんだなと『N・H・Kにようこそ!』を20年後(2023年)に見て身につまされている。

あの時代にどう生きていたらよかったのかは未だにわからない。個人の能力による個別の成功者はいる。ただ経済的に上から下まで、真面目に働いていれば60歳から年金がもらえて、80代で死ぬまで安泰ということを否定された初めての世代だったし、その不安は言語化されてなかった。

作家のプロファイルを知ると、アニメの後半の物語の破綻もわざとなのか、失敗だったのかわからなくなってくる。物語の型を外すことで「時代の気分」に寄り添い、エバーグリーンな物語ではなくなっているけど、それはそれでいいのかもしれない。


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